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よーく考えよー。おしりは大事だよー。

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肛門の疾患である「痔(ぢ)」は、「やまいだれ」に「寺」と書く。語源は、かつて寺院内では僧侶と稚児による男色文化があって……というのは下世話な俗説で、むしろ女性のほうに多く見られる症状であるのが実情だ。

生理(月経期)前に分泌される「黄体ホルモン」が便秘をまねく

痔疾(ぢしつ)には3種類ある。症状が軽い順に並べると「切れ痔」「イボ痔」「痔ろう」だ。便秘や下痢によって発症することが多い。

「切れ痔」は、硬い便によって肛門内が切れたり裂けることで、痛みを感じたり出血する状態だ。

「イボ痔」は、肛門周辺の血管が「うっ血」して、飛び出たふくらみ(イボ)が元に戻らなくなる状態だ。便秘のとき、長時間「いきむ」ことによって発症する。下腹部への圧迫が生じる妊娠中や出産時にも発症するので、生涯において男性よりも痔になりやすい。ほかにも、女性ホルモンの一種である「黄体ホルモン」は腸の動きを鈍らせるはたらきがあるため、月経期の直前は便秘になりやすい。

「痔ろう」は、肛門周辺に膿(うみ)がたまった状態だ。薬で治すことは困難であり、肛門がんにもなりやすいので手術をするしかない。

痔のなかでひどいのは「痔ろう」だが、かゆみや悪臭があるので自覚しやすい。「切れ痔」は激しい痛みをともなうので、すぐに治療しようという気持ちが起きやすい。だが「イボ痔」は、はじめのうちは痛みがないので軽視されやすく、気がついたときには日常生活に差し支えるほど悪化してしまうことが少なくない。

発症から切除手術までイボ痔のことが全部わかるマンガ

となりのお尻が気になります』(加藤のりこ・著/実業之日本社・刊)は、恥ずかしくて誰にも相談できないままイボ痔を悪化させてしまった女性の体験を描いたコミックエッセイだ。

肛門科というのは、たとえ男性であっても受診するのには勇気がいる。女性ならばなおさらだろう。肛門科の待合室には男性患者がいるかもしれない。恥ずかしい。好奇の視線に耐えられない。しかし、ためらっているうちに症状は悪化していく。

できることなら女性医師に診察してもらいたいが、女性専用の肛門科なんてあるのだろうか? 市販薬と処方薬の違いは? 具体的な治療や診察方法は? 平均的な手術費用は? 手術したら入院しなければいけないの?

イボ痔にまつわる不安と疑問は、本書を読むことで、ほとんど解消される。

当コラムを書いている不肖わたくしも、学生時代から便秘に悩まされており、20年の長きにわたって切れ痔やイボ痔と一進一退の攻防戦を繰り返してきた。過去にはイボ痔の切除手術も経験している。いわば歴戦の勇士であるわたしが読むかぎりにおいて『となりのお尻が気になります』の解説や体験談にはうなずける部分が多かった。

イボ痔とは何か? 女性のための傾向と対策

イボ痔は進行具合によって4つのステージがある。

【Ⅰ期】
排便時に出血しイボが脱出しない

【Ⅱ期】
排便時にイボが出て自然に戻る

【Ⅲ期】
指で戻さないと戻らない

【Ⅳ期】
排便に関係なく常に出る

(『となりのお尻が気になります』から引用)

あるとき、お尻に「にぶい痛み」を感じたという著者の加藤さん。トイレに行って、おそるおそるペーパー越しにさわってみると、触ってわかるほどの「イボ」があった。はじめのうちは「Ⅰ期(痛い)」と「Ⅱ期(イボが出るけど自然に戻る)」のあいだを行ったり来たりしていたが、ついに「Ⅲ期(なにかの拍子にイボがピョコンと出る)」に悩むようになった。

肛門からイボが飛び出ていると、イボが下着にこすれてヒリヒリする。イスに座っているときに尻肉の下敷きになるので圧迫されて痛い。「Ⅲ期」ともなれば自然にイボが戻らないため、飛び出るたびにトイレへ行って「どっこいしょー」と押し戻す必要がある。イボが刺激されたせいなのか異常な量の腸液が分泌されて、下着だけでなくスカートまで濡らしたこともあったという。

仕事や日常生活にも支障をきたすほどの症状であるにもかかわらず、恥ずかしがり屋の加藤さんは、市販薬や民間療法でイボ痔を治療できないか試みる。しかし症状は改善しなかった。観念した加藤さんは、せめて友人や知人に会うことがないように、自宅や職場からなるべく遠く離れている肛門科医院へと駆けこんだ。インターネットで調べたところ、女医が診察してくれる女性患者専門の病院があった。

肛門科は一時の恥。痔の放置は一生の苦しみ

結論を言ってしまうと、著者の加藤さんは「イボ痔」を手術で治療することを選んだ。「ALTA療法(ジオン注)」という「注射でイボを小さくする」手術もあるが、できるだけ再発を避けるために「結紮(けっさつ)切除術」というメスを使ってイボ切除をおこなう治療方法を選んだ。日帰り手術が可能であり、麻酔や眠剤を使うのであっというまに終わったそうだ。婦人科のような「大股びらき」ではなく、お尻を上にして、うつ伏せで手術がおこなわれるので「恥ずかしさ」も少ない。

このときの費用は「約4万円」だったという。くわしい内容やその後の経過は、ぜひとも本書を手にとって確認していただきたい。イボ痔(痔核)の手術方法には、今回ご紹介した2種類以外にもあるらしく、健康保険や医療保険の適用など、費用についても病院や症状によって異なる。

不肖わたくしが高校生のときに受けたのは、イボ痔の切除手術だった。症状は「Ⅳ期(常に飛び出ている)」で、薬代と合わせても費用は2万円以内であったように記憶している。20年後のいま、あいかわらず便秘ぎみであるものの、ひどくても「Ⅱ期(排便時にかぎりピョコンすることもあるが自然に戻る)」くらいだ。「Ⅲ期」以降の再発はない。

ちなみに、切れ痔やイボ痔に対処するための市販薬には「便をやわらかくする薬(水酸化マグネシウム等の飲み薬)」と「肛門内の炎症をおさえる薬(ボラギノール等の注入軟膏)」がある。歴戦のイボ痔ファイターからアドバイスさせてもらうならば、肛門科(もしくは内科)で出してもらえる処方薬のほうが効き目が強くて、しかも安い(初診料を含めたとしても)。

わたしの経験では、肛門科の診察で指を突っこまれるのは、長くても10秒間くらいだ。肛門科は一時の恥、痔の放置は一生の苦しみ。つらくて悩んでいるならば、勇気を出して肛門科へ行くことをオススメしたい。

(文:忌川タツヤ)

となりのお尻が気になります

著者:加藤のりこ(著)
出版社:実業之日本社
お尻のトラブルどう治す!? 痔と闘う爆笑コミックエッセイ!! 3人に1人が痔の悩みを抱えているといわれるほど、痔は日本人にとって非常に身近な病気です。また痔は男性に多い病気と思われがちですが、女性は痔を招く特有の原因を抱えているため、実際には痔の種類にもよりますが女性に多いそうです。その結果…「お尻の穴が熱いけど、これってなに?」「市販薬で治せないの?」「男性医師に診られたくない」恥ずかしくて病院にも行けず、相談することもできず放置した結果、病状が悪化。このような状況の方が少なくないのが現状です。今作は長い痔主生活の苦しみを経て手術を決行! それでも完治はせず、未だにイボ痔と闘う著者が経験した闘病エピソード、痔との付き合い方、病院選びなどのお役立ち情報を描いた、痔でお悩みの方を勇気づける爆笑コミックエッセイです。

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