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0円の暮らしが日本の未来を救う!? 路上生活者の暮らしの知恵

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生きるには、何かとお金がかかる。住居費に光熱費、食費に日用品などの雑費などなど。特に日本の中でも物価の高い東京で暮らすとなったら、多くの人にとって、マイホームなんて夢のまた夢だ。

しかし、東京で0円でマイホームを持っている人たちがいるというーーホームレスとも呼ばれる、路上生活者だ。

家が建てられている土地は彼らのものではないので完全に”マイ”ホームとは言い難いが、彼らのミニマルな住居と無駄のないライフスタイルは、これからの暮らし方の理想のかたちの一つであると、“建てない建築家”の異名を持つ建築家で作家の坂口恭平氏は説く。

大学時代から路上生活者たちの住まいに興味を持ちフィールドワークを行ってきた坂口氏だが、なかでも“隅田川のエジソン”こと路上生活者の鈴木さん(当時59歳)の暮らしぶりに魅せられたという。そのエピソードを中心に綴った著書『TOKYO 0円ハウス 0円生活』の中から、私たちもいざという時に使える知恵をご紹介したい。

家の素材の調達法

路上生活者たちの住まいといえば、ブルーシートである。そんなものは滅多に落ちていないと思うのだが、「東京には何でも落ちている」と鈴木さん。特に、隅田川の花火大会が終わったあとなどに、10×10メートルの超特大のものもゲットできるようだ。路上生活者が花火や桜の名所など、ブルーシートがよく使われる場所に多くいるのも頷ける。

また、長期の路上生活者の多くは、木材でしっかり枠組みした家に住んでいる人も多い。鈴木さんの場合は、工事現場のゴミ置き場からもらってくるという。ただ、勝手にとるのではなく、ちゃんと断ってからもらうのが鈴木流。自分で必要な分だけ切り、使った工具などは元通りに綺麗にして立ち去る。「許可を得てからもらう。後始末を怠らない」が路上生活を生きやすくする極意のようだ。

水と電気とガスの調達法

鈴木さんは、水は公園のトイレから、ガスはカセットコンロ(ボンベは購入)、そして電気は自動車用の12ボルトのバッテリーから得ている。
バッテリーは使用済みのものをガソリンスタンドでもらえるという。使用済みでも、小型テレビやラジオを使う分には十分すぎる電気量が残っているらしい。

ところで、家に流れている電気は100ボルトだが、電気製品の多くは12ボルトのバッテリーで動く、ということをご存知だっただろうか。アダプターを介してるのはそのためなのだという。路上生活をしていると、普段知り得ない生活の知識も自然と身につくのだ。

お金の調達法

路上生活者でも働いている人は多い。よく街中で見かける空き缶拾いは彼らにとってメジャーな職業の一つ。
ただ、空き缶ならどれでもいいのではない。アルミ缶限定なのだ。ホット用の缶など鉄でてきているものは加工にかかる費用が割に合わないということで業者が引き取らないのだという。
鈴木さんは週に100キロほど拾い、月に5万円ほど稼いでいる(そのすべてが食費に消えていくというのだからすごい)。

週に100キロのアルミ缶を集められるのは、鈴木さんくらいだという。それは、鈴木さんがただ落ちているものを拾うのではなく、ホテルや飲食店、そして個人宅と“契約”し、大量にもらっているからだ。それはひとえに、鈴木さんの人柄によるもの。路上生活には人間力が欠かせないようだ。

 路上生活者は現代の狩猟民族

鈴木さんは、ゴミだけでなく、街の中の自然の実りについても詳しい。彼にとっては、「ここのゴミ置き場にはいつも何時に空き缶がでる」と「ここの柿の葉っぱは美味しい」は等しく“自然の恵み”なのだ。

自然の恵みに囲まれた生活。しかし、そんな彼にも脅威がある。それは、暴力的ないたずらをしてくる若者と国土交通省の“刈り込み”。特に後者は、路上生活者にとって大きな負担になっているという。

国は路上生活者の住まいを把握しており、月に一度チェックを兼ねて清掃しにくる。その際、家を解体して一時的に撤去しなければならない。
60歳近い鈴木さんにとって、家を解体してまた立て直す作業はかなりの重労働。そこで、彼の住まいは容易に分解することができ、また簡単に建て直すこともできる“可動式”になっているという。まるで、モンゴルの移動式住居「ゲル」だ。

都市からの恵みを受けながら、土地に縛られない暮らしをする鈴木さんのような路上生活者を、坂口氏は“現代の狩猟民族”、または“東京の遊牧民”であるという。

変化していく街と状況と対話しながら暮らしていく彼らの生活は勉強であり、思考であり、運動であると、坂口氏。そうやって鍛えられた彼らは、どんな災害が起きても対応していくことができるサバイバル力を身につけている。

社会の落伍者とも捉えられがちな路上生活者だが、3.11を経た今、そんな彼らの暮らしが未来の日本の暮らしへのヒントになるのかもしれない。

(文:ツジコ エリコ)

TOKYO 0円ハウス 0円生活

著者:坂口恭平
出版社:河出書房新社
「東京では1円もかけずに暮らすことができる」―住まいは23区内、総工費0円、生活費0円。釘も電気も全てタダ!?隅田川のブルーシートハウスに住む“都市の達人”鈴木さんに学ぶ、理想の家と生活とは?人間のサイズに心地良い未来の暮らしを提案する、新しいサバイバルの知恵がここに。

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