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ラグビーとはこんなに面白いものだったのか!!

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2015年9月19日。
この日は日本のラグビー界にとって、大きな一日となった。
ワールドカップ1次リーグの初戦で、日本は強豪・南アフリカを破り、歴史的な勝利をおさめた。
今までどう頑張っても越せなかった壁を自らの力で押し切ったのだ。
9月23日に行われた第2戦は、スコットランドに10対45で敗れたものの、10月3日のサモア戦では26対5と圧勝し、その力を示した。

五郎丸歩の言葉に痺れる

南アフリカ戦のあと、「この勝利は奇跡だ!」と、盛り上がるマスコミに、日本が誇るフルバック、五郎丸歩は、静かに、しかし、きっぱりとこう答えたという。
「ラグビーに偶然や奇跡はありません。長い間、いろんなものを犠牲にしてきた。間違いなく、世界一ハードな練習をしてきたのです。だから、走り勝つ自信はありました」
謙虚でありながら、自信にあふれる言葉だ。
痺れる。
185センチの長身から繰り出されるキックはその正確さで知られる。チームを勝利へ導く得点王として存分に働き、サモア戦では16点をたたきだした。

ラグビーは面白い

私はラグビーが好きだ。しかし、熱狂的なファンか?と、問われると、自信はない。
友達には、女子大生の頃からラグビーに夢中という人がたくさんいて、寒いさなかにスキーに行くような重装備で観戦へ出掛けていった。私にはそんな気力も体力も欠けていた。ラグビーはやる方にも観る方にも、根性が要求される。
けれども、30年前、神戸に引っ越してきてから、ラグビーの結果をいつもいつも気にしている。地元、神戸製鋼のラグビーチーム、コベルコスティーラーズに勝って欲しいと願うようになったからだ。
スティーラーズを励ます会にも毎年、参加している。
身近に接するラグビー選手は、恥ずかしがり屋が多いが、実に頭がよく、そして、優しい。自分を犠牲にする精神にみちあふれてもいる。

兄の言葉が背中を押した

今回のワールドカップで、五郎丸歩選手のファンになった人も多いだろう。彼もまた、ラグビー選手らしい繊細さと大胆さを併せ持つ魅力溢れる選手だ。
五郎丸歩は男ばかり3人兄弟の3男として生まれた。故郷は福岡である。
ラグビー好きだった両親の影響で、3兄弟はラグビースクールに通った。
二人の兄の存在は、歩にとって、仰ぎ見る気高い存在だった。
追いつこうとしても追いつけない。いつまでたっても、かなわないような気がして、ラグビーは兄にまかせ、自分はサッカー選手になろうと思ったこともあったらしい。
けれども、兄は「男だったらラグビーだろ」と、繰り返した。
そして、結局、弟はその言葉に導かれるように、ラグビーを選んだ。
男の中の男になりたかったのだろう。

人生最大の挫折

兄の後姿を追いかけるかのように、五郎丸歩はラグビーに打ち込むようになる。
高校も兄と同じ佐賀工業高校に入学した。2003年1月、花園ラグビー場で行われた全国高校大会準々決勝では、兄のためにも、優勝に貢献しようと張り切っていた。
ところが、張り切りすぎたのか、大事な場面で、歩は大きなミスを犯してしまう。ボールをセービングすべきところで、なぜか蹴り出そうとしてしまった。そこでバウンドが変わり、キックを空振り、その結果、相手にトライを取られてしまったのだ。
今も「人生最大の挫折」として残り、いまだ試合のビデオを観ることさえできないというほどの心の傷となった。
チームスポーツの怖さがここにある。
取り返しのつかないミスは、試合が終わっても、生涯を通じて、選手の心を苦しめ、じわじわとしめあげる。

スポーツの厳しさ

佐賀工業高校から早稲田大学に進学し、1年生よりフルバックで活躍、大学選手権でも優勝を経験した五郎丸歩。
卒業後は、トップリーグに属するジュビロヤマハ発動機に進み、ベストキッカー賞を連続して受賞するなど、順風満帆の五郎丸歩。
そして、今、ラグビーワールドカップのメンバーに選ばれ、感動の試合を世界中に示した五郎丸歩。
そんな彼が、高校のときのひとつのミスを今も悔いているというのだから、やはりスポーツは厳しいものだ。胸が痛くなる。

お祈りするようにボールを蹴る

五郎丸歩といえば思い出されるのは、その独特なキッキングフォームだ。
ボールを回し、丁寧に地面に立て、祈るように腕を動かした後、いったん身体を停止させるや、左足を踏み込み右脚で蹴り抜きながら、ボールに体重を移動していく。
五郎丸オリジナルと呼びたくなるようなこの動作は、イングランドのラグビー選手ウィルキンソンのキックを参考に、自分なりに何度も何度も繰り返し修正し、さらにはメンタルコーチの助言も受けた末に、ようやく今の形におちついたという。
お茶のお作法のようにいつも決まったこのフォームは、五郎丸が頭で考え、身体にたたき込んだものなのだ。

横綱と五郎丸

五郎丸の姿を見ながら、私は誰かに似ている。誰かとてつもなく強く、大きな存在が、同じ事を静かに繰り返していたはずだ。それが誰か、思い出せないまま、夕飯の支度にとりかかった私だったが、お米をといでいるとき「あ」となった。
そうだ、横綱白鵬だ。彼も土俵に上がる前、決まった所作をする。調子が良いときも怪我をしたときも、勝っていても負けていても変わらぬその動き。
聖なる場所である土俵やグランウンドへ向かう男達は、磨きに磨き、考えに考えた末に到達した「型」を持っているのだろうか。

なぜラグビーが好きなのか?と、問われて、五郎丸はこう答えたという。

僕がラグビーを好きなところのひとつに、ラグビーはごまかしがきかないということがある
そこでは人間性そのものがすべて出る
(『不動の魂』(五郎丸歩、大友信彦・著/実業之日本社・刊)より抜粋)

再び、痺れる。
そして、ラグビーがますます好きになる。

(文:三浦暁子)

不動の魂 桜の15番 ラグビーと歩む

著者:五郎丸歩(著) 大友信彦(著)
出版社:実業之日本社
「日本のフルバック」五郎丸歩が、ラグビーと出会った幼少時代から花園での挫折、早稲田→ヤマハ、そして日本代表として過ごしてきた日々を振り返りつつ、自分とラグビーの全てを語り尽くす! 揺るがない、急がない、動じない、山のような男。道を切り開き、味方を助け、守る、城のような男。そんな五郎丸歩という魅力あふれる人間と、彼が精魂傾けてきたラグビーというスポーツの魅力がぎっしりと詰まった一冊です。

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