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海外での勤務経験は、国家機密を漏らす恐れが高まる?

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間もなく衆議院選挙を迎えますが、朝日新聞社が行なった世論調査によれば、今回の衆議員選挙に「大いに関心がある」と答えた人はわずか21%、前回の選挙の同調査では39%、前々回は49%だったことを考えれば、今回の選挙は更なる投票率の下落が見込まれます。

政権は、現在の体制を維持するために、とにかく争点を経済に絞る戦略をとっていますが、この選挙戦を「争点が見えない」→「関心を持てない」として投票行動を避けてしまうのはまったく解せません各党のアピールも、「雇用が回復している」という与党のアピールに対して「いや、雇用が増えているのは非正規雇用ばかりだ」と野党が返し、「株価の上昇を見てほしい。今はまだ中小企業の隅々までに景気の改善は波及していないが、そのうちに全体に効果が出る」と与党が言えば、「円安によって利益を得るのは輸出業や一部の大企業のみ」と野党が返すばかり。いわずもがな、景気はとても重要な観点ですが、そればかりに縛られすぎているきらいがあります。

あまりにも閉鎖的な「グローバル」

テレビ番組の視聴率と同じで、政党も、国民が興味を持ってくれるものを優先的に宣伝します。しかしながら、今回の選挙はとりわけ「視聴率の低い」題材に重要な問題が多々潜んでいます。例えばこの10日には特定秘密保護法が施行されました。国の安全保障に関わる重要な情報を特定秘密に指定し、情報を漏らした公務員・民間業者に対して最高で10年以下の懲役が科されます。秘密を扱う人には「適性評価」が行なわれますが、精神疾患や酒癖、借金の有無にまで及び、そのボーダーラインは明確に設けられぬまま、スタートしています。

特定秘密保護法を所管する内閣情報調査室では、法律を精査する段階で、「海外で学んだ経験や働いた経験があると、国家機密を漏らす恐れが高まる」という考えを示していたといいます(東京新聞)。「外国への特別な感情を醸成させる契機となる」「外国から働き掛けを受け、感化されやすい。秘密を自発的に漏えいする恐れが存在する」としていたというのだから、いつの時代だろうかと、目を疑ってしまいます。そこかしこで「グローバル」という言葉を使いながら政治や経済を語ってきたにも関わらず、あまりに閉鎖的です。こういったプロセスを経た法律がどのように適用されていくのかは明らかにされないまま、施行されてしまいました。

なぜ政治に興味を持てないのか?

斎藤貴男『戦争のできる国へ 安倍政権の正体』(朝日新書)は、景気うんぬんではない部分で、現在の政権がいかに危うい外交政策・弱者切り捨てを敢行しようとしているのかをつまびらかにする一冊です。また、今回の選挙の争点から、自民党は意識的に憲法改正論議を外していますが、選挙による信託を憲法改正への賛意として変換していきたい思惑が、この本を読むことで見えてきます。

自民党が提示した「日本国憲法改正草案」では、例えば、
現行憲法の「第18条 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。」が、
自民党草案では、「第18条 何人も、その意に反すると否とにかかわらず、社会的又は経済的関係において身体を拘束されない/2 何人も、犯罪による処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。」と変わっています。
一見、大きな変化はないように思えますが、斎藤氏は「今回の自民党草案が『社会的又は経済的関係』でなければ、また『身体』以外のたとえば『精神的』拘束ならば可能だとも読める構成になっているのは、戦時体制にあって万が一にも戦闘員が不足する事態に陥った場合に備え、徴兵の余地を残しておく目的なのではあるまいか」と書きます。

特定秘密保護法に反対する意見に対して、ことごとく「一般の皆さんには関係がない」「考えすぎ」という反応で済ませている現政権ですが、この憲法改正草案も含め、何かと十分な議論を経ずに進めようとしていることには危機感を持つべきでしょう。選挙に「大いに関心がある」と答えた人はわずか21%、その他8割の人たちは、「なぜ興味を持てないか」を熟考せずに、選挙をやりすごしてしまいます。しかしながら「あまり興味を持たせないようにする」という政治手法もあるわけですから、少なくとも、自分の政治的な無関心の出所くらい探し当てるべきではないでしょうか。

(文:武田砂鉄)

戦争のできる国へ 安倍政権の正体

著者:斎藤貴男(著)
出版社:朝日新聞出版
日本版NSC、特定秘密保護法、集団的自衛権の行使解禁に明け暮れた2013年、行きつくのは「戦争のできる国」。安倍政権の正体を自民党憲法改正草案から読み解く渾身のルポ。平和と平等を、あきらめてはいけない!

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