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いまでも新宿駅東口に落ちているゴミは少ないですか?

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人生を好転させたい。どのような方法が考えられるか。人生を変えたければ行動するしかない。いまから9年前に、早朝から新宿駅東口のゴミ拾いをはじめることで「人生が変わった」という大学生をご存じだろうか。

モラトリアム学生が「自分を変えたい」と決意した

半ケツとゴミ拾い』(荒川祐二・著/地湧社・刊)の著者である荒川さんは、毎月30万円の仕送りを受けながら大学生活を満喫していた。楽しい毎日だったが、心の片隅ではモラトリアムな日々に漠然と不安を感じていた。就職活動をはじめなければならない大学3年生の夏になっても遊び癖が抜けきらず、親しい友人から「ダメ男」呼ばわりされたことにより、荒川さんは「自分を変えたい」とあせりはじめる。

そんなとき「動けば変わる」をテーマにした映画のウワサを聞きつける。『107+1 ~天国はつくるもの~』というタイトルの作品だった。

映画を観たあと、とても感動した荒川さんは「動けば変わる」を実践するために、毎朝6時から新宿駅東口でゴミ拾いをすることにした。ゴミ袋と軍手があればすぐに始めることができて、世のため人のためにもなる。2006年11月のことだ。

負け犬はイヤだから30日間チャレンジしてみる

ひとりでやり続けるのは心細いので、ダンボールに「一緒にそうじしてくれる人募集!!」と書いて、背中に吊り下げながらゴミを拾うことにした。それを見た若い女の子が手伝ってくれるかもしれない……つまり「モテたい」という不純な動機もあった。

だが、早朝の新宿駅東口のゴミ拾いは、たとえモテたとしても割にあわないくらいツラい作業であることを、荒川さんはイヤというほど思い知ることになる。はじめのうちは、通りかかるヤクザやホストから「偽善者」呼ばわりされたり、面前にツバをかけられたりした。そうじ中の荒川さんを「ゴミ箱」と見なしたのか、会社員や学生らしき通行人たちも平然と空き缶やをポイ捨てしていったという。

活動をはじめてから2週間が過ぎた頃にはガマンの限界に達していたが、荒川さんは、実のお兄さんと「かならず1ヶ月は続ける」と約束していた。いま投げ出したら、友人たちからも笑われるにちがいない。「負け犬」呼ばわりされるのがイヤだった荒川さんは、歯をくいしばって、早朝6時の新宿駅東口に通いつづけた。

善意はかならず善意を呼びよせる

あるとき、はじめての同志を得ることになる。ズボンのはきかたがいつも半ケツのホームレス(石浜さん)が、一緒にゴミ拾いを手伝ってくれるようになった。もうひとりのホームレスである市倉さんも加わって、荒川さんたち3人は、毎朝2時間・1か月間におよぶゴミ拾い活動をやりとげた。

早起きにも慣れたので、気持ちに余裕ができた荒川さんはゴミ拾いを続けることにした。すると、以前にいやがらせをしてきたヤクザやホストたちが、温かい缶コーヒーを差し入れてくれるようになった。面前でのポイ捨ては少なくなり、さらに「ありがとう」や「ご苦労さま」などのねぎらいの言葉もかけてくれるようになった。かつて偽善者呼ばわりしていた人たちが、荒川さんの行動を認めはじめたわけだ。

ゴミ拾いをはじめて2か月も経っていない2006年12月28日には、朝日新聞の社会面で大きく取り上げられた。すぐに反響があり、多いときには10名以上がゴミ拾いを手伝うために、早朝6時の新宿駅東口にかけつけた。

いつでも人生は変えられる。鶴瓶にも会える

荒川さんがゴミ拾いをはじめてから半年が経つころには、NHKが取材に来るようになっていた。テレビ放映の反響は大きかった。「北海道から来ました!!」「沖縄から来ました!!」「ロシアカラキマシタ!!」というように、全国からゴミ拾い志望者たちが殺到した。多いときには40名が新宿駅東口でゴミ拾いをおこなっていたというのだから驚きだ。ゴミ拾いをはじめてから、たった4か月しか経っていなかった。

ほかにも、笑福亭鶴瓶さんが『ザ!世界仰天ニュース』で話題にしたことがきっかけで、荒川さんはニッポン放送のラジオ番組『笑福亭鶴瓶 日曜日のそれ』にゲスト出演をはたすことになる。その後、鶴瓶師匠も早朝ゴミ拾いに参加したという。

「動けば変わる」を実践したら、荒川さんの人生は変わった。毎朝「ゴミ拾い」をしただけで、ぬるま湯につかっていた大学生はモラトリアムを脱するきっかけを得た。本書のエピソードは、たまたま偶然で特別な出来事にすぎないのだろうか? 荒川さんは若いし、もともと愛されるような人柄だったから? マスコミが大々的にとりあげられたおかげ? 運が良かっただけ?

さまざまな理由をひねりだして荒川さんをラッキーボーイにすぎないと見なすのは、もったいないと思う。人生のどんな時点であっても「ゴミをひとつ拾うだけでも十分な転機になりうる」という真実があるのだと信じたい。

(文:忌川タツヤ)

半ケツとゴミ拾い

著者:荒川祐二(著)
出版社:地湧社
20歳のダメ男が1本の映画をきっかけに「自分を変えたい!」という思いから起こした行動。それは、毎朝6時、新宿駅東口をそうじすることだった。 「偽善者!」とヤクザに罵倒されたり顔に唾を吐きかけられたりする毎日のなか、あるホームレスと出会って・・・

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