ハウツーが満載のコラム
文字サイズを変更する

格闘ゲームで稼ぐ「プロゲーマー」という生き方

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

将棋や囲碁で生計を立てている「プロ棋士」がいるのはよく知られているが、コンピュータゲームの世界にも「プロゲーマー」が存在する。格闘ゲームと呼ばれるジャンルでは、日本人のプロゲーマーも活躍しているらしい。

伝説級プロゲーマー・ウメハラ

もともとゲームは「遊び」で始まったものだが、競技人口が増えれば「興行」になりうる。将棋や囲碁は、おもに新聞社がスポンサーであり、プロ棋士は対局料やタイトル賞金を得ることで生計を立てている。

対戦型格闘ゲームのプロ選手は、ゲーム周辺機器メーカーなどとスポンサー契約を結ぶことで収入を得ている。生活費をはじめ、トレーニングに必要な費用や、世界中で開催される競技大会への遠征費用などが支給されるという。大会の優勝賞金は高額ではないが、テニスやゴルフなどのプロスポーツ選手の状況とよく似ている。

日本人で初めてプロ格闘ゲーマーになったのは、梅原大吾(うめはら・だいご)というプレーヤーだ。1981年生まれの男性で、プロになった当時は28歳だった。ウメハラ(梅原大吾の愛称)は、プロゲーマーになる1年前までは老人介護施設で働いていたという異色の経歴をもつ。

ストII・餓狼・サムスピ……なつかしい

ウメハラ To live is to game』(梅原大吾・著/西出ケンゴロー・絵/折笠格・著/PHP研究所・刊)は、日本人初プロ格闘ゲーマー・梅原大吾の中学生時代を描いた自伝マンガだ。14歳のウメハラの初々しい日々を読むことができる。

ウメハラにとって中学生時代はゲームに本格的に熱中しはじめた時期であり、日本中のゲームセンターで『ストリートファイターII』などの対戦型格闘ゲームが大いに盛り上がっていた時代でもある。

このコラムを書いているわたしは1980年生まれなので、ウメハラより1才年上であり、ほぼ同時代に青春をすごした。記憶をたどれば、小学校高学年の頃から対戦型格闘ゲームの筐体(業務用ゲーム機)を、ゲームセンターだけでなくあらゆる場所(コンビニの軒先や本屋やホビーショップの店内)で見かけたし、わたしも人並みに熱中していた。14歳のウメハラは東京都足立区に住んでいて、わたしは地方在住だったが、1990年代には全国的な格闘ゲームのブームがあったのは間違いない。

「俺のゲームは遊びじゃない」

プロゲーマーになる前のウメハラが老人介護施設で働いていた話は、すでに出版されている『勝ち続ける意志力』や『勝負論 ウメハラの流儀』といった新書で紹介されている。本書『ウメハラ To live is to game』は、それらのコミカライズ版といえるものだ。

新書2冊を読んでいて印象に残ったのは、ウメハラにとって「俺のゲームは遊びじゃない」というフレーズだ。プロゲーマーになってからではなく、すでに14歳のころから「遊び」でゲームをやっていなかったことが、コミカライズ版でも再確認できる。

なぜ「俺のゲームは遊びじゃない」という考えに至ったのかといえば、ウメハラの実姉の影響が大きい。ウメハラ姉は、天才タイプであり驚異的な記憶力の持ち主だった。「教科書を読んで、ふだんの授業を聞いているだけで、復習しなくてもテストで100点をとってしまう」怪物が間近にいたので、少年ウメハラは「勉強では頂点に立てない」と見切りをつけて、ますますゲームに没頭したというわけだ。

『ハイスコアガール』とウメハラの同時代性

1990年代のゲームセンターを題材にした『ハイスコアガール』という大ヒット漫画があるが、作者である押切蓮介は1979年生まれだ。じつは、ウメハラは『ハイスコアガール』に登場してもおかしくないほどの伝説級プレーヤーなのだ。

ウメハラがプロゲーマーになったのは2010年のことだが、中学生だった1994年にはすでに都内では有名なゲームプレーヤーだったという。90年代後半に開催された全国大会では連覇を果たしており、1998年に開催された世界大会ではアメリカ大会優勝者を破って17歳で世界一を経験している。

ウメハラが14歳のころからおこなっていた研鑽は、2004年に開催された格闘ゲームの世界大会「EVO」でも大いに発揮された。のちに「背水の逆転劇(動画リンク)」と呼ばれることになる全米チャンピオンとの一戦で、ウメハラのプレイは世界中の格闘ゲームファンを歓喜させたのだ。格闘ゲームファンが放っている熱量は、いまやボクシングなどのリアル格闘技ファンにも匹敵する。ウメハラが道を切りひらいたことにより、第2第3の日本人プロゲーマーも誕生しているようだ。

ご存じのかたもいるだろうが、今年8月に『ハイスコアガール』をめぐる諸問題が穏便のうえに解決した。いちファンとして、連載再開やアニメ化企画の再始動を楽しみにしている。格闘ゲームにまつわる話題は当分のあいだ尽きそうにない。

(文:忌川タツヤ)

ウメハラ To live is to game

著者:梅原大吾(著) 西出ケンゴロー(絵) 折笠格(著)
出版社:PHP研究所
日本人初のプロ格闘ゲーマー、“梅原大吾”の中学生時代が漫画化! 梅原大吾完全監修により実現した、ゲームファン必見のエンターテインメントコミックここに誕生! <あらすじ>90年代、格闘ゲームは記録的なムーブメントを巻き起こす。熱狂的なブームを背景に、日夜活況に沸くゲームセンター。熱を帯びた時代と場所で、少年が出会った運命とは―

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

関連記事