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声に出して言いたいバカの基準

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二、三日前の夜。何十年かぶりに、見ず知らずの人から面と向かってバカと言われた。状況を説明しておく。ジム帰りに線路沿いの暗い細い道を歩いていて、バックパックを肩にかけ直そうとして振り回した感じになり、それが後ろから来た自転車の人に当たってしまった。

俺はヴァカなのか?

いや、言われたのは「バカ」じゃない。「ヴァカ」だ。最近はごくつまらないことで刺されたりするので反射的に謝ったが、ヴァカ呼ばわりされるほどのことだったんだろうか。あっちだって無灯火で、いい自転車なんだか知らないけど、ものすごく静かに走ってきて、ベルも鳴らさなかったのに。Hatena Keywordというサイトでは〝ヴァカ〟という言葉が次のように定義されている。

馬鹿あるいはバカと同義語に近いが微妙にニュアンスが違う。普通バカは馬鹿でしかないが、ここでいうヴァカとは己の愚かさが見えずに他者をバカ扱いにする愚民世界におけるさほど値打ちのない者達のことを指す。 Hetena Keyword より引用

いや、あいつの言い方はもっとヒドかった。「ヴァーカ」って伸ばしてたからね。夜目にもおじいさんに近い年齢で、おそらくは彼自身の経験則と行動規範に照らし合わせた上で、筆者が愚民世界においてさほどの値打ちのない者として映ったのだろう。

バカッター列伝

釈然としない思いを引きずったまま家に帰ってきて、「バカってなんだろう」と考えた。まず浮かんだのが、ごく最近起きたハンガリーでの出来事だ。命を賭けた旅でやっとハンガリーにたどり着き、警察官から逃れようとして子どもを抱きながら必死に走るシリア難民の男性に足をひっかけ、意図的としか見えない形で転ばせた女性カメラマンがいた。さらに、彼女が子どもに蹴りを入れる場面がはっきり写っている動画も公開されている。どんな意図があってこういう行動に出たのかはわからない。すでに解雇され、刑事罰の対象となっているとも伝えられている。彼女は後に公の場で謝罪し、次のようなコメントを発表した。「反射的に体が動いてしまいました。あの時は、襲われるような気がして、恐ろしくなってしまったのです」
一時期、バカッターと呼ばれる人たちが頻出した。バイト先のピザ生地を伸ばして仮面のようにかぶったり、コンビニの冷凍ケースに入ったり、大量のハンバーガーバンズを床に並べてその上に寝そべったりしている画像がネット上にアップされ、さまざまな意味で話題になった。ハンガリーの女性カメラマンの場合は、自分が面白いと信じる行為でウケを狙って目立とうとしたわけではないはずだ。でも結果として、とっさに出てしまったバカッター的要素が原因で社会的地位を失うことになった。ネットをさまざま検索していくうちに、きわめつけのやつを思い出した。

福祉川柳事件

ここで、紹介しておきたい川柳が何句かある。

救急車自分で呼べよばかやろう
金がないそれがどうしたここくんな
親身面本気じゃあたしゃ身が持たねえ
ケースの死笑い飛ばして後始末

出典はあえて伏せる。1993年6月、とある機関誌の企画に対し、各地方自治体の福祉事務所の職員であるケースワーカーのみなさんが〝職場あるある川柳〟みたいなノリで寄せたものだ。企画の目的は、「職場以外の場所では話題にできない思いを川柳に託して表ざたにし、成仏させる」ことだった。すごいな。一句詠んで応募するほうも、それをそのまま載せてしまうほうも。機関誌という公的媒体なのに、問題化する可能性を感知できないメンタリティーがどうしても理解できない。いや、「マスコミ関係者の目に触れぬようご注意ください」という一文も添えられていたというから、最低限の危機感はあったのかもしれない。
介護や福祉の現場で働いている人たちが、筆者の想像も及ばないタイプのストレスを抱えていることは間違いない。だから、こういうことは思ってもいけないと言うつもりはない。それに、職場での内輪話というレベルなら許されるだろう。でもこの一件は基本が公募なので、うっかり本音が漏れてしまったというパターンではないと思う。バカッターのような確信犯とも言い切れない気がする。確実なのは、企画の立案から発表方法まで、すべてのプロセスがバカ丸出しなことだ。

実用的なバカ図鑑

バカな人、バカなことの本質の一端を知るための方法論という意味で『バカの人 その傾向と対策』(和田秀樹・著/ごまブックス・刊)を紹介したい。〝「バカの」種類を徹底解明!〟、〝もう「バカの人」に悩まされない〟というサブタイトルもそそる。この本の徹底的な姿勢は、まえがきだけでバカという単語が11回も出てくることからもうかがえる。ただし〝嫌バカ視点〟だけに頼って押し切るのではなく、冷静な態度で定義を行い、ていねいな考察と分類を行った上でリーズナブルな結論を導き出し、対処法を示すロジックの流れが心地よい。
あの夜、言い逃げした人に告ぐ。バカって言うほうがバカなんだからな!

(文:宇佐和通)

 

バカの人 その傾向と対策

著者:和田秀樹
出版社:ゴマブックス
まえがき 第1章 性格バカ よりどりみどりの困った人たち 第2章 実直バカ 勤勉なのにリストラ候補NO.1 第3章 うのみバカ 信じるものはバカをみる 第4章 決めつけバカ 人の話が聞けない残念な人 第5章 はだかのバカ うぬぼれ・開き直り・裸の王様タイプ 第6章 ふぬけバカ 無気力・無意欲・無関心の3バカ 第7章 井戸のなかのバカ 化石知識で生きる学者タイプ 第8章 大風呂敷バカ 口だけは大統領

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