ハウツーが満載のコラム
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夏も終わったというのに、私、ビールに、はまってます。それも、地ビールに・・。

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「暁子さんてさ、おなかがすくと、てんで駄目よね」
仲の良い友達が言った。口調は優しかったが、痛いところを突かれ、私は「うっ」と、なった。
仲間内では、私はけっこうタフだということになっている。睡眠不足でも平気な顔をしているし、高熱が出ていても、耳鳴りがひどくても、周囲は気づかない。母親の葬式の日でさえ、夜、約束していた仕事に行き、食事をしながら打ち合わせをして帰ってきた。
後で、「どうして言ってくださらないの? 何も知らなくて・・」と、言われたが、仕事は仕事だと思うようにしている。
ただし、空腹になると、駄目なのだ。お腹がすくと、口数が少なくなり、元気がなくなる。自分では気づかないが、不機嫌になってもいるらしい。

腹が減っては戦ができぬ

先日、滅多にないことだが、忙しくて、まる1日、まともに食事ができなかった。牛乳やクッキーはつまんでいたから、絶食というわけではなかったが、気づくと、ほとんど何も食べずに、長時間、過ごしてしまった。いわゆる「てんで駄目」の状態に陥ったのだ。
よれよれになりながら、仕事を終え、とにかく昼ご飯を食べなくちゃと、ラーメン屋さんに飛び込もうとして、飛び込めなかった。長蛇の列なのだ。
この際、どこでもいいと、隣の串カツ屋に入ろうとしたが、そこも駄目。いっぱい。次のイタリアンも満席。
昼時のオフィス街はどこも混雑していて、昼ご飯にありつくのは難しい。もう行き倒れるかと思ったほどだ。
腹が減っては戦ができぬ、どころか、帰宅する元気も出ない。

ビールを楽しむ男達

泣きそうになっていたら、あいている店があった。
きゃ、ラッキーと飛び込み、「あの、一人なんですけど、いいですか?」
おどおど言うと、「もちろんですよ。お好きなテーブルをどうぞ」と、カウンターの向こうからイケメンが笑っている。
「やっとお昼ご飯にありつける」と、店内を見渡し、次の瞬間、「あ、まずい」と思った。
そこは、地ビールのカウンター・バーだったのだ。
店内は全部、男性。なぜか半分は外国人。
おまけに、どこにも椅子がない。立ち飲みらしい。
彼らは立ったまま、ビールのグラスを前に置き、ペーパーバックを読みながら、ビールをなめなめ、静かに時を楽しんでいる。

お昼ご飯を食べるはずが

しかし、私に必要なのは昼ご飯だ。
「あ、あの、何か食べさせてもらえますか?」と、またおどおど聞くと、さきほどのイケメンが「もちろんです」と、再び笑い、メニューを持って来てくれた。
お酒のつまみばかりだが、けっこう、おいしそうだ。
彼は注文を取った後、黒板を指さす。今日のおすすめと書かれた地ビールが4種類、書かれている。もう、こうなったら、飲むしかないでしょう。
仕事も終わったことだしと、自分に言い訳をして、一杯、飲むことにした。

地ビールって美味しいものだったのですね

今まで、それほど地ビールを美味しいと思っていなかった。妙なにおいが鼻につくような気がする。
それに、私にとってのビールとは、ビヤホールに集まり、みんなでわいわい騒ぎながら、がーっと喉に流し込み、プハーーっと言うのが、それがビーーール!!と、信じていたからだ。
ところが、丁寧につがれた地ビールが運ばれてくると、妙な気分になった。プハーとはならず、静かに、日本酒のきき酒をするように、少しずつ、飲まなくてはと、思ったのだ。
まして、空きっ腹。
その上、立ったまま。
足に来ると困る。
こわごわ泡の中に唇を差し入れ、グラスをそっと傾け、大事に飲んだ。
何、これ? やたらと、おいしい。

地ビールをスローに楽しむのも悪くない

翌日の夜、もう一度、そのお店に行ってみた。
空腹だったから、ことさらに美味しいと感じたのか、それとも、本当に美味しいのか、確かめたかったのだ。
私は「空腹になるとてんで駄目」な上、ムードで美味しさを判断してしまうところがある。そこで、『地ビールを極める本』(ぴあレジャーMOOKS編集部・著/ぴあ・刊)を読み、少し知識も仕込んでおいた。
日本国内にはおいしいクラフトビールがたくさんあり、飲み方を工夫すると、さらに楽しさが増すという。

日本人の多くはビールをゴクッと飲むものだと思っていますが、それは正しい飲み方とはいえません。まずは色を見て香りを感じ、口に含む。ワインを飲むときのように口の中全体で味わってから飲み込み、残り香や感覚を楽しむ・・・それがビールのすべてを味わう方法なんです。
(『地ビールを極める本』より抜粋)

わざわざ一人で飲みに行った地ビールはやはり美味しかった。ついでに言うと、夜は混んでいた。
そして、今、秋の兆しを感じながら、私、地ビールに、はまっている。
プハーっという飲み方もいいけれど、じっくり、ゆっくり、スローに楽しむ地ビールも、それはそれは美味しいものだと知ったのだ。
これから始まる秋の夜長、地ビールの立ち飲みを楽しみながら、過ごしたいと思う。

(文:三浦暁子)

地ビールを極める本

著者:ぴあレジャーMOOKS編集部(著)
出版社:ぴあ
地域密着型の小規模な醸造所で、職人がこだわりをもって造っているビールを、「地ビール」と呼びます。近年は「クラフトビール」という呼び名も広まりつつありますが、大手メーカーが造るなじみのものとは、ひと味もふた味も違う個性豊かなビールが揃っているのが特徴です。そんな地ビールの魅力を余すことなくお届けする「地ビールを極める本」。ビールの基礎知識から日本の地ビールブランド大図鑑、はたまた世界のビールまで、ビール好きには見逃せない必見のラインナップ。いざ、奥深き地ビールの世界へ!

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