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素晴らしき「けち」という生き方のすすめ

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欲望には2種類あるという。ひとつは、食欲のような「自然の欲望」。ほとんど害はない。もうひとつは「奴隷の欲望」だ。物欲がそれであり、胃袋のような制限がないために、買っても買っても満足することができない。

あなたが不安なのは、欲の上に欲を積み重ねているせい

「けち」のすすめ 仏教が教える少欲知足』(ひろさちや/著)によれば、「欲望を持てば、必ずそこに不安が生まれる」という。欲望の最たるものは「この先、何が起こるか分からない」から「未来を知りたい」というものだ。

将来を安泰なものにしたいなら、とりあえず高収入を目指せばいい。しかし、誰もが欲望に忠実に生きられるわけではない。

お金儲けはしたいけれど、人から「えげつない」とは言われたくない。出世はしたいけれど、仲間から嫌われたくない。

(『「けち」のすすめ 仏教が教える少欲知足』から引用)

身に覚えのある人は多いだろう。見栄や世間体を気にするあまり、強欲にふるまえない。ふたつの相反する欲望を満たそうとすれば葛藤が生じる。欲の上に欲を積み重ねるから「欲望の葛藤状態」におちいってしまうのだ。煮え切らない生き方をしているかぎり、将来の不安が消えることはない。

堂々と「けち」をつらぬけば、いまよりも自由に生きられる

資本主義経済における肉食獣になりきれない人に対して、宗教評論家・ひろさちやさんは「けち」な生き方をすすめている。

いままで必要と思いこんでいた出費や労力を見直すことによって、見栄を張ったり世間体を気にするのをやめられるからだ。「けち」になれば、葛藤や不安をかかえずに済む。やりたいことを堂々とやれるようになる。

特に、人間関係について「けち」になることで、ずいぶん生きやすくなるという。このとき「けちになりたいけれど、人から後ろ指はさされたくない」と考えてはいけない。つぎに挙げるエピソードは、ひろさちやさんの実体験だ。

役に立たない人脈を見極めてコストカットしよう

 先だって、来客中にある知人が電話をしてきて、いきなりこう切り出したのです。
「どうやら俺はがんになったらしい」と言って涙声になったのです。しばらくの間は、わたしも彼の話に耳を傾けていたのですが、待たせているお客さんがいます。そこで「今、お客さんが来てるんだ。申し訳ないけど、また後で電話をくれよ」と言ったところ、彼は猛烈に怒りましてね、電話をたたきつけるように切ってしまったのです」

(『「けち」のすすめ 仏教が教える少欲知足』から引用)

その後、相手がふたたび電話をかけてこなかったので、ふたりの付きあいは断絶してしまったという。

「がんになった」という知人に対するひろさちやさんの態度を「冷酷だ」とか「気づかいが足りない」と感じる人は、潜在的に恐怖心をかかえているのではないだろうか。困っている知人や友人に対して、うわべだけでも同情しておかないと仲間内で評判が悪くなり、いざ自分が困ったときに助けてもらえないかもしれないという不安。

相手を気づかうというよりも、世間体や今後の見返りを気にしているにすぎない。人脈を広げるのは結構なことだが、役に立たないくせに手間やカネばかりかかる盲腸みたいなヤツもいるので気をつけたほうがいい。

友人や知人への年賀状、同僚との飲み会、きりがない冠婚葬祭など。生きていくうえで、もっとも時間やカネや労力を費やすのが人間関係なのだから、不要なそれらをけちることによって、ふところ(財布と心)にも余裕が生まれるはずだ。

哲学のある「けち」は立派なものだ

「けち」によって人間らしい生活を続けるため、ひろさちやさんは「損をする智慧(ちえ)」の実践をすすめている。

たとえば、電車をつかって移動するときには立ったままでいるよう心がける。たくさん空席があっても、あえて座らないことで「少しだけ損をする」練習をしておく。より良い「けち」をおこなうための哲学だ。

仏教には「少欲足知」という教えがある。欲を少なくして足るを知る、という意味だ。やせ我慢をして欲を抑えるのではなく、自分という人間が「無理せずにどれだけの損ができるか」を把握しておく。

なるほど。電車の席にあえて座らなくても、ほとんど実害はない。気負わずにできる損、身の丈にあった損を日ごろから受け入れることが、欲を少なくするのに役立つようだ。

(文:忌川タツヤ)

「けち」のすすめ 仏教が教える少欲知足

著者:ひろさちや(著)
出版社:朝日新聞出版
人間の不安の原因は「欲望」にある。資本主義経済が生んだ大量消費社会で、地位や名誉、財産など、他人と比べるから不安を抱く。心の平安を手に入れるためには、欲張らずに足るを知って「けち」になることが大事だと説いた癒やしの書。

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