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本屋さんほど自由な場所はない!

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書店の数は、20000店以上もあった15年前から急降下し、今年、遂に13000店台に入りました(アルメディア調べ)。紙の本と比較されがちな電子書籍市場の昨年度の市場規模は1013億円、実は紙の市場の約6%に過ぎません。KADOKAWAの角川歴彦会長は「電子は紙の本の市場の25%くらいになるのでは」と予測しています(朝日新聞 / 10月19日)。ひところの「紙の本は電子書籍に食われてしまう」という声を覚えている人からすれば、えっ、そんな程度なの、と感じる人も多いことでしょう。

 書店が酒場に様変わり!?

本の売り上げのうち、書店に入る利益は2割程度。薄利多売とも言われる業界では閉店の報が止まりません。そんな中、ミニマムな規模で開く書店が増えてきています。それらの書店は「本を売る」ということだけにはこだわりません。「人が自由に集う場所=書店」の機能を再設定するかのように、毎日のようにイベントを行なう書店があれば、書店を酒場に様変わりさせる書店もあります。

本屋さんというのはあらゆる情報が集積する場所ですから、どんなアプローチの会合でも企画でも開くことができます。野菜について紹介する選書コーナーを作れる、ゲストを呼んでビジネスノウハウを指南することもできる、映画業界に進みたい学生にセミナーを開くこともできる。文化が結集する場所として、書店ほど可能性を持つスペースはありません。

店内の家具まで買えちゃう本屋さん

「本が売れない」というフレーズは、もう何年も同じ言われ方をされていますが、「本が売れない」=「本屋は稼げない」ではありません。新潟に40坪の店を構える北書店は、「北酒場」と名付けて、本屋さんの中で飲み会を始めました。最初はイベントの打ち合わせなど仲間内の集まりでしたが、徐々に恒例化していき、その酒場を目当てにやってくる人も増えたそう。

下北沢にある「B&B」はBookを選びながらBeerが飲めるというコンセプトの本屋さん。必ず毎日イベントを仕込み、イベントに空きが出そうになれば、店主による人生相談室と題してでもイベントを開く。イベント料とワンドリンクで2000円。2000円の利益を書籍で得るにはその数倍の値段の本を買ってもらうことが必要。何人もお客さんが7000円、8000円の本を持って続けて並んでくれるなんてことは考えません。定期的なイベント収入が見込めれば、決して大きくない本屋さんを安定的に運営していくことができる。B&Bでは店内の家具も購入できるようにしており、時折買い求めるお客さんがいるとのこと。

本の未来は決して暗くなんかない

「本屋さんという商売に未来はない」と物知り顔で断じるのは簡単ですが、本屋さんという現場には今、小さな働きかけが連鎖しています。大規模書店の相次ぐ出店で小規模書店がどんどん潰れている、という分析を聞きますが、簡単に片付けるべきではありません。

北書店の佐藤雄一さんは新潟駅近くにある紀伊國屋書店が増築し、ジュンク堂書店が新たにオープンすることで、むしろ「本に対して能動的なお客さんの顔が見えてきた気がした」と語ります。「確かに本は売れないんだろうけど、新潟市全体で考えたら、東京から送られて来る出版物の量は増えているんじゃないか」とも指摘、本の役割分担を見直すことができれば、書店規模の大きい・小さいの差を前向きに捉えることができるのです。むろん、それには棚作りで個性を出していく、書棚の文脈作りが必須です。細かい企みを蓄積させていくことでチェーン書店には出せないブランド力を作ることができる、というわけ。

このノウハウは、たとえばショッピングモールに人を奪われてシャッター街と化した商店街にはなかなか応用できないものかもしれません。なぜならば、書店という場が持っている吸引力は独特で、その独自性を信じている店主が一人一人をお店の中に引っ張り込んでくる。「書店は斜陽産業」と片付ける前に、企みの数々を味わうべし。斜陽産業と言われ続けるなかで、本屋さんは独自の自由を作り出しています。本の未来は決して暗くなんかないのです。

(文・武田砂鉄)

街の本屋の逆襲

著者:佐藤雄一(著) 内沼晋太郎(著) 嶋浩一郎(著) 石橋毅史(著)
出版社:ボイジャー
出版不況の煽りを受け、苦境に立たされていると言われて久しい“街の本屋”。しかし今だからこそ模索できる、本と人/人と人との出会いを生み出す新たな“街の本屋”の在り方があるのだとしたら…? 新潟市に2010年にオープンした40坪の小さな本屋「北書店」の店長・佐藤雄一と、東京・下北沢で本屋「B&B」を経営するブックコーディネイターの内沼晋太郎/博報堂ケトル代表取締役の嶋浩一郎、『「本屋」は死なない』(新潮社)の著者・石橋毅史らが交わした白熱の“これからの街の本屋”談義を計3本、フルボリュームで収録。ノスタルジーに浸るだけではない、継続可能な“これからの街の本屋”の姿とは。

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