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本を読むのが大嫌いなキミへ

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本を読むのが大嫌いだという男の子の家庭教師を頼まれたことがある。まだ小学生で、遊びたい年頃だし、本よりもゲームが好きというのも仕方がないことだとは思ったが、お母さまは悩んでいるようだった。
塾の先生に、本を読まない子供は受験に失敗すると言われたのだそうだ。
彼は将来、医師になるように周囲から期待されていて、有名私立校へ入るためには、いくつものハードルを越える必要があるのだろう。

簡単なはずのアルバイトが・・

私は、「ま、大丈夫、なんとかなるだろうだろう」と、のんきに引き受けた。
可愛い小学生と一緒に本を読むだけで、お給料をもらえる。悪くないアルバイトだ。
私自身は子供の頃から本を読むのが好きだったので、読書の楽しみを教えるのが嬉しく、楽勝よ!と、思い込んでいた。
そもそも、自分の両親に本を読みなさいと言われたことがない。それどころか、本を読んでいると、いつも叱られた。
「またそんな暗いところで本を読んで。目が悪くなるでしょ」とか「本ばかり読んでいないで、勉強しなさい。算数の宿題は終わったの?」と、いう風に・・。
我が家では、読書は勉強ではなく、娯楽の範疇に入るものだったので、テスト前になると、読書は禁止された。けれども、駄目と言われると無性に本が読みたくなるものだ。仕方がないので、テスト範囲ではない国語の教科書の後ろの方を読んで、勉強するふりをしたりしていた。

本が嫌いな生徒

けれども、私の生徒は重症の本嫌いだった。本を見ただけで、頭が痛くなるらしく、顔をしかめて反抗する。「そんなに嫌なら読まなくてもいいのよ、体に悪いもの」と、言いたくなるほどだ。
それでも、引き受けてしまった以上、できることはやらなくてはならない。
「先生と一緒にゆっくり読んでいこうね」と、優しく誘っても、「なんでさ」と、横を向く。
「私も仕事だもの」と、正直に打ち明けても、「じゃさ、ママには読んだことにしといてあげるよ。そうしようよ。先生も楽でしょ。本が大好きになったとでも言っといてよ」などと、なかなかに小ずるい。
「ダメ。その手にはのらない」と、冷たく言い放ち、一緒に音読しようと言っても、「僕は聞いてるよ。先生の声、僕、好きだよ」などと言って、ニヤニヤしている。完全に馬鹿にされていたのだ。

読書は貯金できるのか

『将来の学力は10歳までの「読書量」で決まる』(松永暢史・著/すばる舎・刊)には、本を読むことがどれほど大切かが書かれている。

親から「読書量の貯金」をたっぷりもらった子は、底力が全然違います
(『将来の学力は10歳までの「読書量」で決まる』より抜粋)

そういえば、私の両親は「本ばかり読んで」と怒るくせに、私にどんどん本を与えてくれたし、自分たちもよく本を読む人たちだった。その意味では、知らず知らずのうちに貯金する環境が整えられていたのだろう。

国語力はすべての科目を学んでいくうえで必要になるものです
(『将来の学力は10歳までの「読書量」で決まる』より抜粋)

確かにその通りだ。
将来、外国語をマスターするにあたっても、結局は国語が基本だ。数学だって、物理だって、国語が根幹にあるのは間違いがない。そうでないと、問題文を理解できない。

私はなぜ本を読んだのか

結局、私の家庭教師はあまりうまくいかなかった。
どんなに一生懸命教えても、男の子はあまり本を好きになってはくれなかったからだ。読書感想文にいたっては、読まないで書くと言い張り、挙げ句の果てに「先生にまかせるよ!」などと威張るのだから、笑ってしまう。
おまけに、「先生はなんで本なんか読むの好きになったの? 他に楽しいことなかったんだろうね」と、不思議そうに尋ねる。
言われてみると、私はスポーツが不得意で、ピアノも下手くそ。彼の言うとおり、確かに、他にすることがなかった、だから、本を読んでいたのかもしれない。

禁じられた遊びの甘い誘惑

困った私は、彼に「この本を読んではいけません」と、命じようと思った。
禁じられると、どうしてもしたくなるのが人の世の常だ。
私も父に言われたことがある。「この本棚にある本をどれでも読んでもいい。ただし、この裏返してある本は、読んではいけない。子供にはまだ早い」と。
私は神妙に「わかった」と、うなづくや、すぐさま裏返しになった本を抜き取って読み始めた。永井荷風の『つゆのあとさき』という本だった。
親の目を盗んでワクワクしながら読んではみたものの、一人の女が男が来るのをただ待っている話で、内容はよくわからなかった。それでも、禁断の味は甘くかぐわしく、面白いなぁ、この本、と、思ったものだ。

読書の楽しみを教えるべきだったのに・・

本を読まないと学力がつかないかどうかは、私にはよくわからない。
読書が嫌いでも、頭のいい子はたくさんいるだろう。
しかし、読書という楽しみを知らないのはもったいないなぁとは思う。

『将来の学力は10歳までの「読書量」で決まる』の著者も言っている。

中学受験のことはさておき、本を読んでいるから培われる常識、教養がある。それは学力を裏支えする大きな柱となります。そして。これからの人生をも豊かにしてくれるものだと思います
(『将来の学力は10歳までの「読書量」で決まる』より抜粋)

と。そう、読書は毎日を豊かにし、禁断の味さえも楽しませてくれる。その上、学力までつくというのだから、いいことだらけではないか。
家庭教師をしていたときに『将来の学力は10歳までの「読書量」で決まる』を知っていたら、もう少しましな先生になれたのにと、残念でならない。本好きな子供にするためのノウハウが示されているからだ。

(文:三浦暁子)

将来の学力は10歳までの「読書量」で決まる!

著者:松永暢史(著)
出版社:すばる舎
東大生の多くが幼少期、絵本の読み聞かせをたくさんしてもらっていた――。読解力は学力の基盤であり、それを培うのが読書。地頭が作られる10歳くらいまでに、どれだけの本を読んだか。読んでもらったか。幼少期の読書体験がその後の学力に大きく影響を及ぼす。効果的な読み聞かせの方法、どういう本が良いのか、どうしたら子どもが本好きになるのか。また、本を読むことがどれだけ国語力ひいては学力全体を伸ばすことになるのか…。「受験のプロ」として、読書の大切さをおりにふれ力説する著者が、具体的に解説します。〈読むだけで頭が良くなる〉厳選本145冊も紹介!

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