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日本人はヤクザがお好き!? 山口組の知られざるブランド戦略

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「ありのままで」生きたいと思っているのは、世の女性たちばかりではない。じつは、社会の鼻つまみ者である暴力団員(ヤクザ)だって「ありのままで」生きたいと願っている。

彼らは、何のために暴力をふるい、何のために勢力拡大を目指すのだろうか?

ヤクザたちは自分らしくあり続けるために、これまで血で血を洗う抗争を繰り返してきた。ありのままに生きられるならば15年の実刑だって怖くない。風よ吹け。真冬の独房なんて少しも寒くない、というわけだ。レリゴーレリゴー。

ヤクザの歴史

江戸時代には、おおきく分けて2種類のヤクザがいた。ギャンブルを稼業とする博徒と、縁日などの興行を取り仕切るテキ屋(香具師)だ。
そのあと明治~昭和初期にかけて、炭鉱や港湾などではたらく肉体労働者たちが形成した『』も、一種のアウトロー集団として認識されていた。

日本最大の反社会的勢力である『山口組』。はじめは、神戸市にあつまった気の荒い港湾労働者たちの組合にすぎなかった。それがなぜ、年商8兆円の経済規模と全国3万人の構成員を擁する一大勢力になりえたのか?

暴力や恫喝だけで、到底成しとげられることではない。巧みな組織運営術が存在するのだ。

山口組が日本一の組織になれた理由

ひとつは、暴力と経営の分離に成功したこと。もうひとつは、巧みなブランドイメージ戦略だ。

『ヤクザに学ぶ組織論』(山平重樹・著)によれば、山口組が大躍進をとげることができたのは、3代目組長の田岡一雄によるところが大きいという。

組長就任後の田岡が行動方針として挙げたのは、意外にも「合法事業の経営促進」だった。

当時の山口組は、事業を持つ(事業家集団)と持たぬもの(武闘軍団)とをはっきり区別する、二派路線を敷いていた。事業化集団には直轄の若い衆を持つことを禁じて、事業に専念させるという徹し方だった。この両者の見事なまでの連帯が、山口組躍進の原動力となったのである。

(『ヤクザに学ぶ組織論』から抜粋)

このように、経営を担当する企業舎弟を通じて得た莫大な資金力を背景にして、旧来のヤクザ(博徒・テキ屋)を圧倒することで勢力を拡大していったという経緯がある。

巷にあふれるヤクザコンテンツ

なぜ、ヤクザは日本社会に存在し続けるのか? この問いの答えは、ひとつしかない。
ヤクザが、市民から少なくない支持を得ているからだ。つまり人気がある。

ヤクザは人気者。おかしな主張に思えるかもしれない。だが、日本社会をよく観察してみればおのずとわかることだ。

たとえば、レンタルビデオ店には必ずといってよいほど『極道・任侠』コーナーが用意されている。国民的俳優である高倉健や菅原文太の代表作を思い浮かべてみれば、ヤクザ作品の国民的支持率は明らかだ。さらにいえば、身をもって大衆が好むものを知り尽くしている「お笑いスター 兼 映画監督」がもっとも得意とするジャンルを思い出していただきたい。

反社会的勢力であるはずのヤクザを題材にした漫画の大ヒット作品も存在する。
『静かなるドン』(4400万部)、『代紋TAKE2』(2400万部)、『本気シリーズ』(3000万部)など。新聞やテレビにおいても、暴力団の抗争事件はかならず報道される。ゴシップ週刊誌ならば、暴力団員たちの関係図や内情取材記事は欠かせない。

先に紹介した『ヤクザに学ぶ組織論』によれば、山口組をはじめとした実際の暴力団が勢力拡大のためにマスコミを利用してきた節があるという。ヤクザフィクションの普及状況を踏まえれば、はからずもマスコミやその受け手であるわたしたちが暴力団のブランドイメージ戦略に寄与してきたことになる。

暴力団にまつわる報道やフィクション作品にあこがれて若い女性やヤクザ志望の若者が組事務所を訪ねてきた、なんていう実話もあるらしく、あながちデタラメではないのだろう。

くやしいけれど、悪い男がモテるのは昔からよく耳にする話だ。

(文:忌川タツヤ)

ヤクザに学ぶ組織論

著者:山平重樹
出版社名:筑摩書房
ヤクザは強い団結力と戦闘性を保持し、一枚岩の結束と強靭な組織力を築き上げてきた。山口組の新たな一極支配が進行しつつあるが、どのような組織原理が働いているのだろうか。また、極東会が強大な広域系博徒組織に匹敵する力を有するまでに至った背景には何があったのか。究極の日本型組織の秘密に迫る。

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