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ヘヴィ・メタル/ハードロックが熱かった時代……、あの熱狂の正体を追う

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1980年代~90年代にかけて青春を過ごした人たちにとっては、ヘヴィ・メタル/ハードロック(以下、HM/HR)は、当時熱狂した音楽というだけではなく、いまだに聴き続けているという人も少なくないはずだ。
少年期にその時代を過ごしていたのなら、当時は自由になるお金がまだ少なく、厳選してレコードやCDを買ったり借りたりしていたのが、成長して可処分所得が増え、当時好きだったアーティストのCDを買い揃えることができるようになったり、YouTubeなどで当時のMVや貴重なライブ映像などが今なら好きなだけ視聴できるようになっているという環境の変化も大きいが、それ以上にHM/HRというジャンルには人を熱狂させる何かがあるのだろう。

そんなHM/HR中年(?)たちにとっての“教祖”ともいえる存在が、“マサ伊藤”こと伊藤政則氏だ。そして、人生の大半をロックに捧げてきた“ロックの生き字引”とも呼べる彼が、HM/HRシーンで出会ってきた数々の奇跡を綴った本が、「目撃証言 ヘヴィ・メタルの肖像」だ。

伊藤政則氏が見た素顔のロック・スターたち

本書では、1970年代の終わり頃、NWOBHM(New Wave of British Heavy Metal)としてイギリスから発生し、やがてLAメタルから全世界へと拡大していったHM/HRのムーブメントを、それぞれの中心となったバンドとの邂逅を軸に物語っている。

NWOBHM勢からはジューダス・プリースト、オジー・オズボーン、マイケル・シェンカー、スコーピオンズ、アイアン・メイデン、LAメタル勢からはラット、W.A.S.P.、そしてHM/HRの人気を全世界的に決定づけたと言っていいガンズ・アンド・ローゼス、ボン・ジョヴィ、エアロスミス、メタリカなど、時代ごとのシーンを代表する重要なプレイヤーたちが登場した。
彼らの当時の様子を述べるとともにそれらのバンドと氏とのやり取りを書き連ねることで、そのバンドたちのキャラクターをも浮かび上がらせている。

70年代後半に始まり80年末まで続いたこのムーブメントでは、HM/HRが「ビルボード」や「キャッシュボックス」といったアメリカのチャート誌のランキングを席巻し、アメリカのみならず全世界がその熱狂の渦に巻き込まれていた。

このドキュメンタリーからは、NWOBHMが誕生する前後の、何が始まろうとしているのかよくわからない時代のうごめく感じや、LAメタル勢の当時の狂騒振り、ベルリンの壁崩壊へとつながっていく1989年のモスクワのロックフェスの興奮などが、氏と登場バンドたち、ファンやライブのオーディエンスの様子、当時の音楽誌のレポートの表現などから伝わってくる。
また、ジョン・ボン・ジョヴィの楽屋を訪ねたら、奥でダイアン・レインがベンチに寝そべっていたという話や、今や伝説なった「スーパー・ロック’84」で、出演者たちがレッドアロー号に乗って西武球場へ移動した話など、まさに“マサ伊藤”じゃなければ知ることのできなかった、いわゆる“楽屋オチ”的なネタもふんだんに含まれているのだが、それもまた当時の空気を知る上での貴重な“証言”となっている。

映画と合わせてより深くHR/HMを感じる

本書では、同氏が“目撃”したロック史における数々の歴史的な出来事が綴られているのだが、それと同時に、同氏とバンドメンバーとの記念撮影や、当時発行された新聞やファンジン(同人誌)、バックステージパスの数々などが写真で多数掲載されていて、その時その時の“空気”をより思い起こさせる手助けになっている。

HM/HRのバンドを取り囲む環境がどのようなものだったのかを知るのにいい教材がある。「ロック・スター」という2001年のアメリカ映画だ。
もともと、ロブ・ハルフォードの後任ヴォーカリストとしてジューダス・プリーストに参加し、一躍スターダムへと駆け上ったティム・オーウェンズのサクセスストーリーを「メタル・ゴッド」というタイトルでドキュメンタリー化しようとした企画だったのだが、「メタル・ゴッド」の商標をハルフォード側が保持していたために、フィクションとして制作し直された映画だ。
この映画でのバンドメンバーの羽目の外しっぷり(ライブ後のアルコール、ドラッグ漬けのパーティなど)やグルーピーの女の子との乱痴気騒ぎなどの様子が、ラットやモトリー・クルーらがインタビューで語るLAメタル全盛時の彼らの行状のイメージに近い。
この映画を観ると、日本に住んでいては感じることのできなかった、当時のシーン全体が熱病にかかっていたような状態を想像しやすいかもしれない。
本書と合わせて鑑賞することで、カルチャーとしてのHM/HRムーブメントをより感じることができるだろう。

(文・芥川順哉)

目撃証言 ヘヴィ・メタルの肖像

著者:伊藤政則
出版社:学研パブリッシング
80年代に勃発したヘヴィ・メタル・ムーブメントを英・米の現場で目撃した著者が、伝説的なライヴの舞台裏や名盤の誕生秘話、今だから明かせる裏話など、貴重なエピソードを紹介する。また、ウィリアム・ヘイムス氏撮影による資料価値の高い写真を多数掲載。
■■電子版特典付き■■ 写真をレイアウトした画像としてだけでなく、1枚ずつ、カラーで(モノクロ撮影のものは除く)掲載しています。さらに、電子版特典として、バックステージ・パス・ギャラリーを追加!

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