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いざという時に役立つ「都市の幸」活用法

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失踪したい。人生に行き詰まっているからだ。失敗ばかり。うんざりしている。この世から消えてしまいたい。でも、死ぬのはイヤだ。根がヘタレにできているものだから、痛いのや苦しいのは困る。失踪ならできそうだ。

タダで「水」と「食べもの」を手に入れるには

シミュレーションしてみる。はじめての失踪。最小限の荷物だけをバッグに詰めて、住まいを飛び出してきた。住民票はそのままにしてある。居場所がバレてしまうからだ。夜行バスに飛び乗って、きのうは車内で夜を明かした。

思いつきで失踪してみたものの、きょうからどこで寝起きしようか。じつは、所持金はゼロにちかい。長距離のバス代を支払ったらほとんど無くなった。どのみち失踪するしかなかったというわけだ。夜逃げともいう。

腹がへった。ヒトが生きていくためには「水」と「食べもの」が必要だ。きれいな飲み水は公園で手に入る。食べものはどうしようか。所持金がゼロで、頼れる人もいない場合、どうやって食料を確保すればいいのだろうか。尊厳を投げうって、生ごみの入ったゴミ袋をあさるしかないのだろうか。

いや、もっと簡単な方法がある。「炊き出し」を探せばいい。

「都市の幸」の恵みで生きる

「炊き出し」とは、困っている人たちにタダで食べものを提供する行為をいう。たとえば東京23区では、教会やNPO法人などのボランティアが、どこかで毎日かならず食べものを配っている(参考リンク)。朝から晩まで「炊き出し」を求めて歩き回れば、とりあえず飢えることはないという。

ゼロから始める都市型狩猟採集生活』(坂口恭平/著)によれば、山の幸や海の幸があるように、都市の幸(としのさち)というものがあるらしい。

森を歩けばキノコやアケビがとれるように、都市においては「衣服」や「靴」をタダで入手する方法がある。タネ明かしをすれば、炊き出しとおなじように教会などが困窮者向けに無償配布しているのだ。東京のような大都市ならば、たとえ路頭に迷うことになっても、とりあえず食べものと水と衣服に困ることはない。都市の幸のおかげだ。

都市の幸は、わたしたちが寝起きするために必要なものや場所も与えてくれる。ダンボールを使った簡易ベッドだ。

ダンボールで野宿するときに気をつけること

もしもきみが一日中ダンボールを敷いて寝転がっていたら、すぐに警察や警備員から撤去を命じられてしまう。しかし、きみはきちんと眠る必要がある。ではどうするか? 答えは簡単だ。夜の間だけダンボールで寝床をつくればよいのだ。

(『ゼロから始める都市型狩猟採集生活』から引用)

コンビニへ行って店員さんに頼めば、折りたたんだダンボールを手に入れるのは難しくない。暖かい季節ならば、ダンボール「ハウス」にする必要すらない。布団のように快適とはいかないが、何枚も重ねたダンボールを敷いて、そこに横たわって目をつぶればいい。

本書の著者であり、ゼロ円ハウス研究家である坂口さんいわく「ダンボールの上部を閉じて自分の寝姿を隠すことも可能だが、それはあまりお勧めしない。なぜなら、人は姿の見えない対象のほうが攻撃しやすいから」という意外な注意点があるようだ。野宿するときには、禁止されていない公園や河川敷などの静かな場所で、しかも堂々と寝てみせるほうが安全なのかもしれない。覚えておきたい。

都市の幸をうまく利用してカネを稼ぐには

失踪するならば都会へ向かうにかぎる。いつも炊き出しがおこなわれている東京のような大都市ならば、すくなくとも毎日の衣食に困ることはない。住まいや寝床に関しては向き不向きがあるけれど、いざとなれば腹をくくってダンボールハウスの住人になればいい。

多くのことをあきらめれば、失踪することによって「第二の人生」をはじめることは可能だと思う。とは言っても、すこしくらいは手元に現金を備えておきたい。歯みがきセットを買ったり、たまに銭湯へ行くためだ。数千円もあれば足りる。

都市の幸(としのさち)において、もっとも換金性が高いのは「ゴミ」だ。定番はアルミ缶拾いの仕事で、相場は1kgあたり70~100円だという。中身が入っていないアルミ缶の重量は15~20gなので、70本の空き缶を拾ってしかるべきところへ持ち込めば100円程度の収入になる。

一方のスチール缶は1kgで10円にしかならないから、アルミなどの非鉄金属を狙いたい。都市型狩猟者のあいだでは、銅や真鍮(しんちゅう)を探すことを「ガラもの拾い」と言っている。調理器具や家電製品などは、こまかく解体することによって非鉄金属を取り出すことができるので、アルミ缶拾いよりも割が良いそうだ。

ひととおりの知識を得たおかげで、この先いつでも失踪できる。そう思ったら気持ちがラクになった。

(文:忌川タツヤ)

ゼロから始める都市型狩猟採集生活

著者:坂口恭平(著)
出版社:太田出版
“都市の幸”で暮らす。そのとききみは、政治、経済、労働、あらゆるものから解放され、きみ自身にしかできない生活を獲得するだろう。

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