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森博嗣はサブウェイをうまく注文できない

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地下鉄ではない。サンドイッチのサブウェイだ。15億円以上の印税を稼いだといわれている人気作家も、庶民とおなじようにファストフード店を利用することがあるらしい。マックのドライブスルーもよく利用するという。

森博嗣が愛読している作家とは

熱心なファンにはよく知られている話なのだろうか。『本質を見通す100の講義』(森博嗣/著)を読んでいたら、作風は好みであるけれど熱心に追っかけていないわたしのような読者にとって意外に思えることが書いてあった。

たとえば、森先生はエッセイを読むのが好きらしいのだが、とくに曽野綾子のエッセイ集は全巻を読破しているという。愛読者だ。曽野さんは海外紛争地域への支援活動でも知られており、平均的日本人の常識にとらわれない「身もフタもない物言い」に共鳴しているのかもしれない。

『すべてがFになる』で作家デビューする前には、遠藤周作のエッセイを好んで読んでいたという。哲学者・土屋賢二のエッセイを好きなことも、ファンのあいだでよく知られているようだ。

『すべてがFになる』ドラマ化の反響について

僕の作品がドラマ化されたとき、大騒ぎになったのは、主人公がウィンドウズマシンを使っていたことだった。あと、髪型が違うとか、メガネをかけていないとか、スカートを穿いていたとかでも盛り上がった。原作者から見ても、「どうしてそんな細かいところが問題になるのかな」と首を傾げるのだが、しかし、このような現象はとても多い。

(『本質を見通す100の講義』から引用)

ここで語られているのは、2014年10月から12月まで放送されたテレビドラマ『すべてがFになる』についてだ。第1話において、主人公の男性がWindowsノートパソコンを使っていたことから、個人ブログやTwitterなどで「原作のイメージとちがう」という書き込みがなされていた。

原作小説では、くだんの男性主人公はアップルコンピューター社製のパソコンであるMacを愛用している。『すべてがFになる』は、S&Mシリーズと呼ばれている全10巻うちの1冊であり、多くのファン読者が主人公に対して並々ならぬ愛着を感じているわけで、おもわず反発したくなる気持ちはわからなくもない。

だが、原作者である森先生は気にしていないという。むしろ、映像化に対して「イメージが壊れるからやめてほしい」といった類のファンの意見は、「私のイメージのまま映像化は無理だからやめてほしい」という身勝手を表明しているにすぎないと指摘している。

映像化されると原作本の売れ行きが良くなる

設定改変について騒動があったり、最終回の視聴率がヒトケタ台であったりと、フジテレビによるドラマ化の評判はさんざんだったが、森先生にとって「作品の映像化」は良いことづくしのようだ。

たとえば、テレビドラマ『すべてがFになる』は全10話が放映された。表題作を含めた「S&Mシリーズ」と呼ばれる5冊の小説を原作として提供したのだが、集計してみると、ドラマ化のおかげで合計30万部ほど多く売れたという。原作は1990年代に発売された小説であり、映像化の恩恵によって新たな読者が生まれたのはあきらかだ。

ちなみに、森博嗣作品の映像化といえば『スカイ・クロラ』(監督・押井守)が挙げられる。この映像化も、設定改変や難解すぎるなどの賛否両論があったが、上映後には印税に換算して1億円ほどの収入増になったという。「あの映画のおかげで、売れないシリーズがビッグセラになった」と、ほかでもない原作者がそのように書いているのだから本当のことだろう。

人気作家が克服できない弱点とは

森博嗣は「速筆」で有名だ。具体的には、長編小説を2~3週間くらいで書いてしまう。1時間あたり6000文字くらい入力できるらしい。1996年にデビューして以来、ペースは乱れていない。これまで刊行した出版物は250冊以上であり、受け取った印税は15億円以上だ。

誰もが認めるすぐれた文章を書く能力があるにもかかわらず、学生時代における国語の偏差値は40だったらしい。じつは、森先生は「書く」のは得意でも「読む」のが苦手なのだ。読書ならば、人よりも3倍ほど多く時間をかけないと読めないという。

森先生は、外食をするときのメニュー表を読むときにも苦労している。特に、サブウェイ(SUBWAY)が苦手だという。「パンとかドレッシングの名称が難しすぎる」せいだ。よくわかる。パンの種類が何種類もあって、さらに「焼く」か「焼かないか」を選ばなければならず、さらに数種類から好きなドレッシングを選べ、嫌いな野菜を告げろ……など。早く作れよとイライラしはじめるころに有料トッピングの追加をすすめられる。森先生は本書のなかで、注文用タッチパネルの設置を提案している。同感であり、ぜひとも実現してほしい。

(文:忌川タツヤ)

本質を見通す100の講義

著者:森博嗣(著)
出版社:大和書房
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