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同僚や友人がチカンで逮捕されたら面会に行く?

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告白する。わたしは警察署の留置場に行ったことがある。チカン容疑で現行犯逮捕された知人に面会するためだ。弁護士から連絡を受けたとき、すぐには信じることができなかった。そのとき体験したことをお伝えしたい。

「まさか、あの人が痴漢なんて……」

と言いたいところだが、じつは、逮捕された男性と「知人」の間柄になったのは、かれが逮捕される数週間前のことだった。つまり、知り合ったばかりであり、わたしが飲みに行った居酒屋のカウンターで意気投合したあと、酔っているノリで連絡先を交換したにすぎない。

ほとんど赤の他人だったとはいえ、出会って1ヶ月もたたずにスピード逮捕されたことには、すこし驚いた。弁護士から「留置場へ面会に来てほしい」と連絡があったとき、新手の詐欺かもしれないと疑ったくらいだ。

一緒に酒を飲んでいたときのことを思い出しても、かれは「犯罪行為」とは無縁そうな人物に見えた。わたしに人を見る目がなかったのかもしれないが。

「痴漢罪」という法律はない

人を殺したら「殺人罪」で逮捕される。人のものを盗めば「窃盗罪」で裁かれる。電車やバス車内において「性的な言動や卑猥な行為などで性的ないやがらせ」をおこなえばチカンの罪に問われるが、日本の刑法に「痴漢罪」という項目はない。

なぜなら「漢」は男性のことを示す文字であり、痴漢行為すなわち「性的いやがらせ」をおこなうのは漢(おとこ)だけとは限らないからだ。

「強制わいせつ罪」について定めた刑法第176条には「(略)男女に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は(略)」と書いてある。「わいせつな行為をした者」の性別は定められておらず、女性が男性に対してチカンをおこなっても強制わいせつ罪になる。

わたしの知人がチカンで逮捕されたときの罪状は「迷惑行為防止条例違反」だった。条例違反と強制わいせつ罪を分かつものは明文化されていないものの、わたしが聞いたことがあるのは「下着のなかに手を入れたかどうか」というものだ。そういえば、逮捕されたチカンの知人は「おしりをナデナデした」と言っていた。バカヤロー!

なぜ、人は犯罪をおこなうのか?

かれは、わたしに焼き鳥を3本おごってくれた。豚足もおごってくれた。そんな気前のいい男が、いったい何を考えて、チカン行為におよんでしまったのだろうか。

面白いほどよくわかる! 犯罪心理学』(内山絢子/監修)は、犯罪をおこなう者の心理を、わかりやすく解説している。本書によれば、チカンは卑劣な性犯罪であるにもかかわらず、強姦に比べると加害者側の罪の意識は少ない傾向にあるという。

その理由としては、犯行が乗り物の中が満員状態という特殊な状況で行われることから、「肌が触れ合うほど混雑した状態が悪い」のであり、「そこへ乗り合わせた被害者が不運だったのだ」という心理的な合理化が働くからです。また、相手の女性がその場で抵抗したり、声を上げたりしないことから、それほど嫌がっていないと勝手に考えてしまう節もあります。これも一種の「合理化」です。

(『面白いほどよくわかる! 犯罪心理学』から引用)

そういえば、知人のチカン野郎は「つい魔がさして……」と言っていたが、まさに犯罪心理学でいうところの「合理化」だ。けっして許されない言いわけである。

留置場で見たこと聞いたこと

日ごろから認印を持ち歩いたほうがいい。逮捕されている人間と面会するときに必要になるからだ。ハンコがないと、善良な市民であっても面会申請の書類に拇印を押すはめになる。左手の人差し指。警察庁の指紋データベースに登録されたらイヤだなあ。ちなみに、被害届を出すときにも必要なので、100円ショップに売っている三文判でも良いから常時携帯したほうがいい。

ここからは、警察署の留置場に出向いたときのことを書く。透明な仕切り板をはさんで面会したのだが、テレビや映画とは異なり、相手の声が聴きとりにくい。どなりあうような大声で会話した。飲み屋で同席したとき、かれがネットカフェ難民であることは聞いていたが、両親とは疎遠で身寄りがないので、やむを得ず、知り合ったばかりのわたしを頼ったのだという。

わたしが呼ばれた理由は「コインロッカーにあずけた荷物の回収」だった。勾留されている被疑者から物品を引き取る行為を「宅下げ」という。わたしは、ロッカーのカギと五千円札を受け取った。かれが逮捕されたのは、わたしと酒を飲んだ翌日だったらしい。ホームレス同然のかれは、衣服や下着などが入った大きなバッグをコインロッカーに預けて、わたしが飲んでいた店がある繁華街に遊びに来ていたのだ。

ちなみに、チカン野郎が拘置所に移り、裁判を終えて釈放されるまでの1ヶ月以上ものあいだ、わたしはかれの荷物を自宅アパートで預かっていた。チカン本人がシャバに帰ってきてから、預かっていた荷物を引き渡したあと、かれのほうから音信不通になってしまった。

(文:忌川タツヤ)

面白いほどよくわかる! 犯罪心理学

著者:内山絢子(著)
出版社:西東社
「なぜあの人が犯罪を…?」実は犯罪を起こすきっかけは些細なことなのかもしれません。 「人の心に潜む、犯罪をおこさせる原因とは何なのか・・・?」 ナイーブなテーマに心理学の分野からアプローチ、万引きから家庭内DV,詐欺から殺人まで、いろいろな犯罪心理をわかりやすく紐解きます。 【目次】 プロローグ 犯罪とは何か 第1章 犯罪者はなぜ生まれるのか 第2章 殺意と殺人が起きるわけ 第3章 性犯罪を起こす心理 第4章 騙し、騙される心理 第5章 家族間で起こるDVと虐待 第6章 少年非行に潜む心の闇 第7章 さまざまな犯罪の心理 第8章 罪を裁くことと矯正・更生の行方 第9章 犯罪心理学とは <電子書籍について> ※本電子書籍は同じ書名の出版物を底本とし電子書籍化したものです。 ※本電子書籍は固定型レイアウトタイプの電子書籍です。 ※目次ページでは、該当ページの数字部分をタップしていただくと、すぐのそのページに移動することができます。

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