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冷たいかき氷、それはとてつもなく熱い世界でもあった

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暑い。やたらと暑い。夏は暑いものだとわかってはいるが、それにしても暑い。
そう思って気温を見ると、平気で36度を越えていたりするのだから、びっくりである。
外に出ると、暑いというより、痛いような日差しが注いでいる。

夏には強いはずが・・

私は寒いのはからしき弱いが、暑いのは平気な方だった。
世界でも暑いとされる中国のトルファンや中東のドバイに行っても、「暑いね」で、終わらせてきた。しかし、今年は気温の上昇と共に、目が回ってきて発熱し、気温を上回る熱が出た。夏風邪か、熱中症か、よくわからないが、とにかくへばってしまい、食欲がないまま、ぐったりと横たわり、「ああ、もうダメ。こう暑くては何もできない。死にそう」と、あえぐしかない。

悩ましく食べたくなるかき氷

そんなとき、頭をよぎるのは、かき氷・・。
イチゴにメロンに、抹茶もいいな、もちろん、練乳は絶対必要。いや、そんな贅沢は言わない。この際、かき氷なら何でもいい。できれば氷がふわっとしていた方がいいけれど。できれば、シロップが本物の果物でできていて欲しいけど。
ああ、とにかく、かき氷が食べたい、食べたい、食べたい。
そう、うわごとのように呟くものの、食べに行く元気もなく、ぐったりと寝ているしかない。そういえば、台所のどこかに、息子が小さいとき、毎日、使ったかき氷を作る機械があるはずだ。しかし、探す気にはならず、「暑い~~、気持悪い〜〜、かき氷食べたい〜〜、練乳をちゅうちゅう吸いたい」と、繰り返し、暑さに思い切り負けていた。

かき氷に歴史あり

かき氷はすごい食べ物だ。
水が飲めなくなるほど弱っていても、かき氷は食べられる。
どんなに食欲がなくても、かき氷を思うと、唾が出てくる。
清潔な氷によく考え抜いたシロップ。まさに黄金のコンビだ。
できることなら、一年中、食べたい。暑いときはもちろん、寒くても食べたい。病気のときも、健康なときも、体調に関係なく、とにかく食べたい。
その歴史は古く、平安時代にまで遡るという。清少納言も『枕草子』の中で、かき氷に似た食べ物について綴っているというのだから、びっくりだ。

かき氷専門店、埜庵

今回、残念ながらかき氷が手に入らなかった私は、『かき氷屋 埜庵の12ヵ月』を眺めて過ごし、どうにか夏風邪を撃退した。
見ているだけで、熱が下がっていくような気がするほど、綺麗な写真とかき氷への愛がちりばめられている内容だからだ。
埜庵では、天然の氷を細かく削り、考え抜かれたシロップをかける。氷の温度はやや高めに設定され、冷たすぎる場合は室温に置いて、調整する。頭に響くようなただただ冷たいかき氷にしないためだという。
残念ながら私はまだ食べたことがないので、味はわからないのだが、その美しい形は、まさに美術品のように見える。

埜庵、その苦闘の道のり

埜庵は、神奈川県の江ノ島の隣、鵠沼海岸にあるという。
店主である石附浩太郎は、高校生の頃、出会ったかき氷が忘れられず、脱サラして、埜庵を作った。「サラリーマンが嫌になった」というわけではない。
お嬢さんを連れて立ち寄った店で食べたかき氷に「脳天をカチ割られるほど」の衝撃を受けてしまったのが、きっかけとなり、かき氷屋になりたくてたまらなくなったのだという。
夢を果たしたかき氷屋さん。
こう書くと、メルヘンの世界だが、それはそれは大変な道のりだった。
何せかき氷は季節ものである。たとえ夏にお客さんが押しかけたとしても、冬になると、閑古鳥。
後悔したこともある。なんでこんなことを始めてしまったのだろうと悩んだ日々もある。
それでも、彼はやめなかった。
身を削るように、氷を削り、一年中、かき氷を作り続けたのだ。
かき氷が好きで好きでたまらなかったからだ。
『かき氷屋 埜庵の12ヶ月』の中で出会ったかき氷に対面するために、何としても鵠沼海岸に行かなくてはと思っている私である。

(文:三浦暁子)

かき氷屋 埜庵の12ヵ月

著者:石附浩太郎(著)
出版社:主婦の友社
「かき氷って、こんなにおいしかったんだ!!」神奈川・鵠沼海岸にあるかき氷屋「埜庵(のあん)」のかき氷を食べた人は、今までのイメージを一変させる、感動するほどのおいしさにきっと驚くはず。いちご、マンゴー、メロン、すいか、桃、ぶどうなどのフルーツをはじめ、抹茶、白酒、しょうが、アングレーズといった独創的なシロップを使ったかき氷を求めて、日本中からファンが訪れ、真冬でも行列ができるほどの人気店になっています。この本は、夏から秋、冬、春へと、季節のかき氷を紹介しながら、1日にお客ゼロという時代からどのようにして人気店となったのか、一年中かき氷屋として商いすることの困難や工夫、喜びや奮闘ぶりを綴ります。

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