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火薬と人のマリアージュ、それが花火

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夏になると、花火が見たくて見たくてたまらず、いてもたってもいられなくなる。
ズドンというお腹に響くあの音、ほんの少しの間をおいて目の前に広がる絢爛たる色彩。
「闇夜は花火のために漆黒でいてあげたのね」と、言いたくなるような場面の変転。
その激しさに心を奪われ、体が痺れる。
花火の日に空を見上げていると、ひどくエロティックな気分になるのは、私だけだろうか。

花火の競技会

幼い頃から、花火を見る度に、「ああ、早く恋をしたい。デートもしたいし、他にもいろいろしたい」と、思ったものだ。

もちろん、そんなことを言うと、両親にこっぴどく叱られるとわかっていたので、「花火って綺麗だね」と、無難な感想を言ってはいたが、心の中は「火遊び」への願望でいっぱいだったのだ。
私が花火が好きだと知った友達が、「だったら、大曲の花火に行かなきゃ」と、教えてくれた。秋田の大曲で行われる花火は、100年以上の歴史を誇る素晴らしいものなのだそうだ。これは見逃してはならない。
明治末期から続く歴史を誇る大曲の花火は、単なる夏の風物詩にとどまらず、競技会として名高い。内閣総理大臣賞、経済産業大臣賞など数々の賞が設けられていて、花火職人達が丹精こめて作った花火を自らの手で打ち上げ、その技を競う。

死ぬまでに一度は見たい大曲の花火

もちろん、何とかして死ぬまでに大曲の花火を見たいと願ってはいる。しかし、なかなか夢は果たせない。
けれども、『大曲の花火 100年の魅力』には、世界一と言われる競技会の様子が、手に取るように描かれている。
東北の一地方で生まれた花火が、どのように発展してきたのか?
これまで歴代の優勝者にはどんな人がいるのか?
運営を支えてきた人たちのエピソード、等々。
地元新聞社である魁新報社の記者達が取材と執筆を行っているだけあって、熱い思いがじかに伝わってきて、本の中の空に、大輪の花火を見るようだ。

火薬、それは善か?悪か?

花火は贅沢と言われれば贅沢なものだ。たった一夜のために、膨大な費用が投じられる。
大曲の花火も最初は遊び心満載の贅沢品で、

”明治期には地主らの「道楽」とも言われた花火。今や大曲の花火は「文化」として根付き、全国の花火大会に影響を与えている”
「大曲の花火」より抜粋

と、言われたという。
けれども、今では平和の象徴として、考えられるようになった。

”火薬は歴史的に兵器や戦争に使われてきた。ところが花火は『火薬の平和的利用』。憎悪を生み出すのではなく、誰もが分かち合える感動、共感を呼び起こす”
「大曲の花火」より抜粋

火薬と人間、その二つが結びついたとき、思いがけないものが生まれるということだろう。

うっとりしながら見たい花火

今年も8月の第4土曜日に、大曲で花火大会が行われるという。
どの花火が賞を取るのだろう。
花火職人達はどんな気持で打ち上げを待っているのだろう。
そして、大曲の人たちは、今年も花火大会ができる幸福を噛みしめることになるだろう。安定した毎日があってこそ、行うことができる、それが花火だからだ。
轟音と共にあがる花火は邪気を払い、日常の時間から私たちを解放し、生きる喜びを感じさせてくれる。
できることならこの私も、浴衣姿で空を見上げ、恋する女としてうっとりしながら花火を見たい。
一瞬の瞬きだからこそ、見逃してはならない、それが花火だと思うからだ。

(文:三浦暁子)

大曲の花火 100年の魅力

著者:秋田魁新報社
出版社:秋田魁新報社
日本一の花火大会「大曲の花火」の1世紀に及ぶ歩み、人間ドラマ、その魅力を一冊に。

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