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赤ちゃんはなぜじっとママの顔を見つめるのだろう

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「もし、生まれ変わることができたら、何になりたいですか?」
と、質問されたことがある。
だいぶ前、新しい本が出たときに受けたインタビューでのことだ。
恥ずかしいのではぐらかそうかと思ったけれど、インタビュアーのひたむきさに打たれ、私も正直に答えた。

 生まれ変わったらなりたいものは?

生まれ変わったら、なりたいもの。
それはたったひとつ。
私は私の息子に、それも赤ちゃんだったときの息子になりたい。
そう答えると、インタビュアーは少しがっかりした顔をした。他の答えを期待していたのだろう。それでも「なぜですか?」と、聞いてくれたので、私は続けた。

「私が息子の赤ちゃん時代に生まれ変わりたいのは、息子がどんなに母親に可愛いと思われているか、よく知っているからです。もし、赤ん坊だった息子になることができれば、私は私に可愛がってもらえます」。

それから、もうひとつ理由があった。息子が母親である私をどんな風に見ていたか、知りたくてたまらなかったのだ。

不思議な視線

33年前、私は息子を抱きながら、毎日を戸惑いながら暮らしていた。
赤ちゃんである息子が、疑い深そうな顔をして私をじっと見つめるからだ。
その視線の強さといったら、もうどうしていいのかわからないほどだ。
青みをおびた白目に、輝きに満ちた茶色い瞳。その二つがまさに一丸となって、視線という力を作り出し、新米で自信のない母親に向けられている。
夫もその奇妙さに気づき、写真を撮ってくれた。
カメラに向かってにっこり笑いながらポーズをとる私。その顔を乳飲み子の息子が、何ともいえぬ不思議な目線で見上げている実に不思議な写真ができあがった。

何を見ていたのだろう?

あのとき、息子は一体何を思っていたのだろうか。
私を母親として認めようか迷っていたのではあるまいか?
それとも、「こいつで大丈夫なのかな?」と、不安でたまらなかったのではないか。
被害妄想だと笑われても、私は本気でそう心配していたし、何事にも率直な夫は「それは言えてるかもしれないな」という意見を述べた。
ところが……。

赤ちゃんは目が悪いらしい

赤ちゃんは世界をどう見ているのか』を読み、私は唖然とした。

”赤ちゃんはとにかく視力が悪い。生まれたばかりの新生児の視力は0.001程度”
(『赤ちゃんは世界をどう見ているのか』より抜粋。)

というではないか。
つまり、息子は私の顔がよく見えなかったのだ。
おまけに

”赤ちゃんが最初に学習する顔は、お母さんだ”
(『赤ちゃんは世界をどう見ているのか』より抜粋)

そうだったのか。
赤ちゃんだった頃の息子は、まだよく見えない目を見開いて、一生懸命、親の顔を学習していただけだったのだ。
謎が解けた今、私はもう生まれ変わって息子になる必要はなさそうだ。
これからは何か他のものになる自分を夢見るようにしたい。

(文:三浦暁子)

赤ちゃんは世界をどう見ているのか

著者:山口真美(著)
出版社:平凡社
赤ちゃんの目に映る世界は、大人と同じじゃないの? それはどうして? 世界でもユニークな「赤ちゃん実験」が解き明かす、視覚と脳と発達の不思議。図版多数、口絵つき。
※この商品は紙の書籍のページを画像にした電子書籍です。文字だけを拡大することはできませんので、予めご了承ください。試し読みファイルにより、ご購入前にお手持ちの端末での表示をご確認ください。

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