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毒親に育てられた子どもは、自らも毒親になるのか?

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毒親(どくおや)。
最近やたらとよく耳にする。なんだか、見るもおどろおどろしい言葉だが、この「毒親」というキーワード、昨今の子育て事情に大きく関係しているようである。

そもそも「毒親」とは何か。
読んで字のごとく、「子どもにとって毒になるような親」のこと。一般的には、子どもに対して「暴力行為をする」、「育児放棄をする」、「性的な虐待行為を行う」親、と言われているが、近年最も問題視されているのが、そこに加えて「精神的な虐待を行う」というケース。
日本では、特に母親がそのような行為をしてしまうことが多いとされていて、「毒母」などとも呼ばれているので、自身も子どもを持つ母である私にとって、穏やかではない話だ。

毒親の言動例

まずは、どのような言動をする親が「毒親」なのか。

主に「精神的な虐待」という面でみてみると、たとえば、子どもに恐怖や罪悪感を与えて、支配しようとする。たとえば、子どもが犯したミスを責め続ける。たとえば、親は絶対的な存在であり、逆らうべきではない、子どもは親の支配下にある、そんな風に感じられる言動をとる

この特徴を見て、正直ドキリとした。
程度の差はあれ、思わず我が子に言っているような内容ではないかと感じたからだ。
「お兄ちゃんなんだから、このくらいのことは我慢しなさい!」
「ママの言うことが聞けないなら、出て行きなさい。ご飯も無しだからね!」

私も、もしかしたら毒親予備軍なのだろうか。

毒親の特徴

では、どんなタイプが毒親になりやすいのだろう?

精神科医の熊代亨氏によると、

①生活や子育てに対して不安の強い母親
②心身の病気を患って余裕のない母親
③母親自身が心理的充足感に飢えている
④家庭にしっかりした父親の存在感がない

という特徴が挙げられるという。

そして恐ろしいのは、「(こころの)病理は世襲する」と精神医療の初心者向け教科書の中に記されてあった、と熊代氏が述べていることだ。つまり、こころの病気は親から子へ引き継がれる。毒親に育てられた子どもは、自身も毒親になる可能性が高いぞ、そう注意喚起されているということである。

毒親育ちが、毒親にならない術はある

本当に、毒親に育てられた子どもは、自身も毒親になってしまうのだろうか?

漫画家として活躍している松本耳子さんは、毒親に育てられた過去を、著書『毒親育ち』の中で赤裸々に語っている。
幼い頃から、ヒステリックで完璧主義で神経質な母親、そして家族に無関心で借金トラブルを日常的にかかえていた父親から与えられ続けた言動によって、「不機嫌な人を見ると不安になる」、「『できない』が許されない」、「過剰な義務感を背負ってしまう」……そんな強迫観念に苛まれ、こころの病を引きずりながら、もがき苦しんでいた。『毒親育ち』は、そんな彼女が「脱・毒親」に至るまでの半生記である。

毒親育ちの私
結婚して数年後 ふと目に留まった本を読んでいくうちに
背負いすぎていた積み荷がひとつひとつ消えていくような そんな読後感でした
毒親育ちで ずっと生きづらかった長いトンネルを抜けるまでの葛藤
そんな私のお話です
(『毒親育ち』プロローグより引用)

そうなのだ。「病理は世襲する」と言われることが多い中、松本さんは、毒親のスパイラルを断ち切ったのだ。

前述の精神科医・熊代氏は、この『毒親育ち』の解説をされているのだが、実は「病理は世襲する」と述べた後、続けてこのように述べている。

けれども、子どもは親のコピーでも人形ではありません。何かしら親と違った個性を持ち、親よりもあとの時代を生きていく存在です。実際、松本さんは今、父親とは違った性質の男性と結婚し、母親とは違った子育てをやっているわけで、すべてが必ず引き継がれるわけではないのです。
この作品は、「遺伝だから」「毒親だから」と諦めては勿体ないということのひとつの可能性を見せてくれます。たくさんの人間の平均を見れば、たしかに統計学的に「病理は世襲」しやすいのかもしれないけれども、個人の運命はDNAでガチガチに定められているわけではないのです。
(『毒親育ち』解説より引用)

自らの子育てを見つめ直すきっかけに

おそらく本書は、親からの呪縛にずっと苦しんできた人にとって、そして自らもそんな毒親になってしまうのでは……と恐れおののいている人にとって、救いの手となる内容ではないだろうか。
また、「毒親」という言葉をよく知らなかった人にとっては、入門書のような存在であるだろう。そして、自分はそのような環境にはなかった、決して毒親ではない!と思っている人も、もしかしたら、ほんの少し歯車が狂っただけで、十分に毒親になってしまう危険性がある……そんな警告書にも感じられた。私自身がそうであるように。

子育てというものは、本当に難しい。
自分の育て方、接し方が、人ひとりの人格を形成してしまう。そんな重大な任務であることを、改めて見つめ直す戒めの書でもあった。

(文・水谷 花楓)

 

毒親育ち

著者:松本耳子
出版社:扶桑社
「お姉さんなんだから……」から始まった、母の呪縛。反社会的で家庭を顧みない、ロクデナシな父への失望。「毒になる親」との半生を綴った衝撃のコミックエッセイ。

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