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アベレージ・ジョーとプレイン・ジェーン:ごく普通のアメリカ人のリアルな姿

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アメリカ合衆国という言葉から、何を連想しますか? 広大な国土や美しい自然? プロスポーツやエンタテインメント? では、アメリカ人と言われたらどんな人たちを思い浮かべますか? ごく普通の、平均的なアメリカ人の姿を具体的に想像できますか?

 数字で見るアメリカン

『アメリカン・コンシューマーズ』誌のニューズレター(2011年7月19日付)に、ごく平均的なアメリカ人に関する50項目のデータが掲載されている。いくつか紹介しておきたい。
・財布の中に34ドル入れている
・1日の平均支出は69ドル
・貯金は10万ドル以下
・おやつは1日2回
・少なくとも年に2回病院に行く
・敷地面積167平方メートルの家に住んでいる
・住んでいる家は築40年以上
・1日平均2時間49分テレビを見る
・少なくとも1種類の処方薬を常用している
4年前の統計の結果なので、現時点でも完全に同じとは言えないだろうが、基本データとしては十分役立つはずだ。

”ごく平均的なアメリカ人”の定義

ごく平均的なアメリカ人の男女を意味する”アベレージ・ジョー/プレイン・ジェーン”という単語が使われることがある。ウィキペディアの定義によれば、次のような人々だ。 年齢は25歳以上、中流あるいは労働階級に属し、事務職から得る年収は3万2千ドル(約384万円)。結婚あるいは離婚を1回経験していて、郊外の一軒家を買って住んでいる。 2005年に出版されてアメリカでベストセラーとなった『The Average American』という本は、”アベレージ・ジョーを探せ!”といった趣の企画だった。ごく平均的なアメリカ人たちにたどり着こうとする過程で明らかになるリアルなデータの面白さが多くの読者から支持されたようだ。
数字では具体的に表せないアメリカ人ならではの平均的な気質を挙げるなら、とにかくめげない、ヘコまない姿勢だと筆者は思う。相手がエボラ出血熱であれ、テロリストであれ、自国民の1%しかいないスーパーリッチ層の人々であれ、戦い始める瞬間から徹底抗戦の覚悟を固めている。

めげない男を支えるめげない周囲

次のプロフィールを見ていただきたい。
22歳で事業に失敗。翌年行われた州議会議員選挙に立候補したが落選。2年後の州議会選挙で当選したが、その翌年恋人を亡くす。ショックで体調を崩し、1年後の州議会議長選挙に敗北。その4年後に大統領選挙人団入りを目指すが失敗。3年後に行われた下院議員選挙に落選。さらに3年後の選挙で当選して下院議員となるが、その2年後の改選で落選。2年後に行われた上院議員選挙で落選。6年後、副大統領選挙に落選。その2年後の上院議員選挙でも落選。
ところがこの人物、上院議員選落選の2年後に行われた大統領選挙で、元下院議員という肩書ながら勝ってしまった。1860年、アメリカ合衆国第16代大統領となったエイブラハム・リンカーンだ。政治家としては、選挙での戦績が圧倒的に悪い。それでも、最終的に歴史に名を残す人物となった。 決してめげなかったリンカーンも偉いが、そういう姿勢を受け容れた周囲、もっと大きく言ってしまえば、社会や国も偉い。負け続けという致命的な要素を受け容れ、何かはわからないが、その事実をしのぐポジティブな資質を見出し、自分たちの代表にしたのだから。

ランド・オブ・オポチュニティー

アメリカはしばしば”ランド・オブ・オポチュニティー=チャンスの国”と形容される。アメリカン・ドリームという言葉と対にして使われることも多く、リンカーンの経歴を見ても、単なる聞こえのよいキャッチフレーズ以上の概念であることがうかがえる。 そういうアメリカという国家を形成する無数の要素であるアメリカ人について考察する『誰も書かなかったアメリカ人の深層心理』は、数字を切り口にして展開される現代アメリカ人論だ。 世論調査のツールとして高い信頼を得ているギャラップ調査によって得られたデータを実相に落とし込みながら、アメリカ人のリアルな姿を浮き彫りにしていく。ある程度予想できていた側面、想像さえできなかった側面、いかにもアメリカ人らしいリベラルな側面、そして意外にコンサーバティブな側面が次々と明らかにされる。
リンカーンを衝き動かしていたものは何だったのか。負けが込んでもへこまずにいられたのはなぜか。大きく影響していたのは、聖書に根ざすと思われるスピリチュアリズム、楽観主義、そして、時として自己中心的と映りかねないアメリカ人特有の”自分は自分”という姿勢だったのではないか。 アメリカ人をアメリカ人たらしめる要素をつぶさに見ていくことで、日本人を日本人たらしめる要素について考えるのにもいいきっかけになる一冊。

(文:宇佐和通)

 

誰も書かなかったアメリカ人の深層心理

著者:加藤諦三
出版社:朝日新聞出版
なぜリーマンショック後、平気で多額の報酬を受け取ろうとするのか? アメリカ人は、本当は何かを考えているのか。経済格差の国・アメリカと幸福格差の国・日本、世界一楽観主義の国・アメリカと悲観主義の国・日本……長年、アメリカ・ハーバード大学で准研究員として活動を行ってきた心理学の第一人者の著者が、そのベースにある彼らの宗教観や家庭観などから紐解いて、初めて綴った目からうろこのアメリカ人論。

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