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あなたの人生を変える「納得解」という考えかた

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あなたは「校長先生のありがたい話」を覚えているだろうか。話の内容どころか顔や名前すらあやしいのでは? それは、あなたの記憶力が悪いせいではない。思い出せないのは、校長先生のプレゼン能力が低かったせいだ。

学校では教えてくれないこと

プレゼンテーション(プレゼン)能力は、相手に「なるほど。そのとおりだ」と納得してもらうためのものだ。校長先生のありがたいお話のたとえは、けっして他人事ではない。プレゼン能力は、わたしたちの人生を大きく左右するかもしれないからだ。

「同意を取りつけ、自分の味方にする」ための技術は、就職活動や競合他社との提案コンペ、原発や憲法改正にまつわる議論など、私たちの日常生活のあらゆる場面に関わりがある。大事なことなのに、具体的なプレゼンテーションの授業を義務教育中に習ったおぼえがない。

たった一度の人生を変える勉強をしよう』(藤原和博/著)によれば、プレゼンテーション能力を含めて、これからの社会で生き抜くためには5つの能力が欠かせないという。

生き抜くために必要な5つの能力

著者の藤原さんは、株式会社リクルートに勤めたあと、公立中学校の民間校長に転じたという経歴の持ち主だ。その経験から、新しい世の中に対応できる新しい力を育むための「よのなか科」を提唱している。それは、次に挙げる5つの能力を学んでもらおうというものだ。

・シミュレーション能力
・コミュニケーション能力
・ロジカルシンキング能力
・ロールプレイング能力
・プレゼンテーション能力

(『たった一度の人生を変える勉強をしよう』から引用)

なんのために学ぶかといえば「納得解」を得るためだ。納得解とは「自分が納得でき、なおかつ周りの他人を納得させられる解」のことだ。

「納得解」とは何か?

かつて成長社会であった高度経済成長期の日本にとっての「正解」は、勉強をすることだった。勉強して、就職して、朝早くから夜遅くまで働けば、だれでも豊かな暮らしを手に入れることができた。

だが、現代は「成熟社会」だ。昔とはルールが変わってしまった。勉強しても、就職しても、朝から深夜まで休まずに働いたとしても、いまの社会では豊かになれるとはかぎらない。金銭面については言うまでもなく、心の豊かさにも正解がないからだ。

正解を、「満足」と言い換えるとわかりやすい。どうすれば自分が満足できるかを見極めなければ、何をやればいいのかわからないし、どこへ向かって進めばいいかもわからないままだ。それでは困る。

正解のない時代を生き抜くために

やりがいのある仕事や後悔しない結婚相手など、いわゆる「理想の何か」を求めてジタバタするのは、著者の藤原さんによれば「ジグソーパズルのピースを探す"正解主義"の発想」であるという。「納得解」を導きだす訓練をしておかないと、ジグソーパズルのありもしない最後の1ピース(正解)を探しつづけるだけの人生で終わってしまう。

そうならないために、どのように行動すべきかをシミュレーション能力で予測して、どうすれば得なのかをロジカルシンキング能力で判断する。

正解がわからないのは他人も同じだ。自分ひとりだけでやれることなんて、たかが知れている。他者の協力が必要だ。つまり「周りの他人を納得させられる解」を示すためには、コミュニケーション能力とプレゼンテーション能力に加えて、相手の立場でものを考えるロールプレイング能力が必要というわけだ。

晴耕雨読を貫くにも「納得解」は必要

「ロジカルなんとか、シミュなんとか、横文字ばっかりでワケがわからん! そんなものを習得しなければいけないのなら、貧乏な負け組のままでいい! 」と思っているかもしれない、そこのあなた。お気持ちはよくわかります。すべてを投げ出して、いっそのこと山奥に籠もって畑を耕しながら読書三昧の日々を過ごしたい。たまには、そんなことを考えるかもしれない。

しかしながら、山暮らしや田舎暮らしであっても、結局はシミュレーション能力やコミュニケーション能力やプレゼンテーション能力などを要求される。

小さな畑といえども、種をまく時期や肥料を与えるタイミングはその年によって異なるので、つねに天候のシミュレーションを心がけないとうまくいかない。自然の恵みだけで暮らしていくのは不可能なので、たまには村や町に降りて行っては物々交換をする必要もある。そのときにコミュニケーションできなければ欲しいものは得られないし、プレゼンに失敗して不審がられてしまえば110番通報まっしぐらだ。

成熟社会に生まれてしまったのだから、あきらめるしかない。たとえアウトローな生き方を選ぶつもりであっても「納得解」の訓練をしておいて損はない。

 

(文:忌川タツヤ)

たった一度の人生を変える勉強をしよう

著者:藤原和博(著)
出版社:朝日新聞出版
暗記中心の「勉強」は、もはや役に立たない。かわりに何をどう学べばいいのか。「よのなか科」の生みの親である著者が、中高生とその親のために書き下ろした。正解のない時代に導くべきものを「納得解」と定義し、そこへの道筋も具体的に示す。

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