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音楽は消費物? 「定額音楽聴き放題サービス」考

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先日、アップルの開発者向けカンファレンス「WWDC」の基調講演で、アップルの新サービス「Apple Music」が発表された。このサービスを簡単に説明すると、「定額制音楽聴き放題」。月額料金を払うと約3000万曲が聴き放題となるのだ。楽曲はストリーミングで提供される。

この手のサービスが、最近注目を集めている。海外では「Spotify」、国内では「AWA」や「LINE MUSIC」といったサービスが開始され、今年は「音楽聴き放題」元年と言ってもいいだろう。

これらのサービスは、音楽が好きな人たちには待望のもの。Apple Musicの場合は月額9.99ドル(約1200円)という料金で、さまざまな音楽が聴き放題となる。つまり、CDを買ってきたり、iTunesで音楽を購入してダウンロードする必要がなくなるのだ。

非常に手軽に、世界中の音楽が聴けるというのはとても素晴らしいこと。自分のお気に入りのアーティストや曲を探して聴くのはもちろん、今まで聴いたことがない楽曲に巡り合う楽しみが増えるはずだ。

音楽は「消費されるもの」になってしまうのだろうか?

しかし、個人的にこれらの「定額制音楽聴き放題」に一種の不安も感じる。「音楽が消費されるもの」になってしまうのでないのだろうか、と。

一昔前は、お気に入りの曲をいつでも聴けるようにするためには、レコードやCDなどを自分で購入する必要があった。必然的に、手元にレコードやCDが残る。いわば、「音楽を所有する」必要があり、それが喜びでもあった。

レコードやCDは、中学生や高校生にとってはなかなか高価。欲しいものがあっても、全部買えるわけではない。そこで、吟味に吟味を重ね、1枚を選んで買うことになる。そして、そのレコードやCDを何度も何度も聴く。それが当たり前だった。

音楽の手軽さと思い入れの関係

時は経ち、デジタルオーディオが普及し始めると、インターネットから楽曲のファイルをダウンロード購入することができるようになる。レコードやCDというパッケージの呪縛から解き放たれ、手軽に音楽が聴けるようになり、音楽が身近に感じられるようになった。

そして、「定額制音楽聴き放題」の開始。もう、曲を選んだりする必要性すらない。気になるアーティストの名前で検索すれば、そのアーティストの曲が次々と流れる。また、誰かが作ったプレイリストを参照したり、自分のプレイリストを公開して「マイ・ベスト」を誰かに聴いてもらうことだってできる。

しかし、これでいいのだろうか。

音楽が手軽になればなるほど、音楽の持つパワーが薄れていってしまうのではないだろうか。1枚のレコードやCDを選ぶために時間をかけた分だけ、その思い入れは大きくなる。しかしワンクリックで曲を購入したり、音楽が聴き放題になってしまえば、思い入れも小さくなってしまうかもしれない。

むさぼるように音楽を聴いていた、若いころの自分だったらどう感じただろうか。

新しい音楽との「出会いの場」になってほしい

僕はおそらく、「定額制音楽聴き放題」サービスを始めるだろう。そして、次々と流れていく音楽から、僕にとって意味のある音楽を見つけだしたい。

かつてラジオで聴いた知らない曲に感動し、その曲のワンフレーズを忘れないように口ずさみながら、レコード屋に向かったあのときのような、新しい音楽との出会いがあることを祈って。

(文・三浦一紀)

日本でロックが熱かったころ

著者:井上貴子
出版社:青弓社
輸入物のロックからジャパニーズロックへと反体制の旗印として浸透していく過程、海外アーティストへの熱狂、ライブハウスの誕生、ロック・フェスの定番化、バンドブーム、ロックが語る言葉など、黎明期の異様な盛り上がりから生活の一部になるまで、社会現象をも巻き起こしたロックの変遷と熱の源を問い直す。

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