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ナマハゲは秋田県のごく一部の地域にしか出ない!

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全国各地に伝統行事は数多くあるが、強烈すぎるインパクトで圧倒的な知名度を誇るのが秋田県の「ナマハゲ」だ。大晦日の夜。鬼のような面をつけたナマハゲは、藁でつくった衣装をまとい、包丁と桶を持ち、「悪い子はいねがー! 泣く子はいねがー!」(いねがー!=いないかー!)と叫びながら家々を訪れ、暴れまわる。

「泣く子はいないかと言うけれど、あんたらが泣かせているんじゃないのか!?」とツッコミを入れたくなってしまうが、とにかく、秋田県といえば「あきたこまち」「秋田美人」「ナマハゲ」というくらいにイメージが定着している。 

秋田県のどこでも見られるわけではない!

筆者は秋田県の出身である。初対面の人に秋田の生まれだと話すと「ナマハゲって元城さんの家にも出るんですか?」と聞かれることがしょっちゅうある(つい先週も聞かれた)。芸能人、編集者、キャバクラのオネーチャンまで、ゆうに50回は聞かれているだろう。

ところが、実はナマハゲが出るのは秋田県の中でもごく一部で、男鹿半島周辺の地域だけなのだ。筆者の故郷には出ない。竿灯で知られる秋田市、大曲の花火で知られる大仙市、焼きそばで有名な横手市、忠犬ハチ公の出身地の大館市にも出ないのである。つまり、広大な秋田県のほとんどのエリアで見ることができないのだ。

姿・形が地域ごとに異なる

筆者は学研の某有名オカルト雑誌の仕事で、大晦日の男鹿半島を訪れ、ナマハゲを取材したことがある。住民の方々の計らいでナマハゲ役を務めさせてもらうという、貴重な体験をすることもできた

驚くことに、男鹿の中でも面の造形、暴れ方の作法などにも微妙な違いがある。ナマハゲ発祥の地とされる真山地区の面には、なんとツノがない。統一された形式がないのだ。よって、これから紹介するイメージが、必ずしもすべての地域に当てはまるわけではないことをまずご理解いただきたい。

筆者が取材した地域では、大晦日の夕暮れ時になると、公民館に若者たちが集まり酒を呑み始める。程よく酔いがまわったところで、彼らは仮面をつけ、藁を身にまとい、ナマハゲに変身する。そして、集団で神棚に参拝し、「ウォー!!」と雄叫びをあげて出陣するのだ。

ナマハゲが作り出す家族の絆

外に出て耳を澄ましてみると、他の地域からもナマハゲの雄叫びが聞こえてくる。子供たちは紅白歌合戦を落ち着いてみることができない。家の中でおびえながら過ごすのだ。

家に着くとナマハゲはまず子供を探して家中を歩き回る。ここで家の主人がナマハゲをなだめ、ご馳走を出し、酒を飲ませ、丁重にもてなす。「ナマハゲさん、うちの子は悪いことはしていませんから、そのくらいにしてください。少しお酒でも飲んでゆっくりしてください」といった具合に(ちなみにこのセリフは本来なら秋田弁によって発言されるのだが、そのまま表記すると県外出身者はまったく理解できない可能性があるので、今回は標準語で表記した)。

その様子を見た子供は「お父さんは僕を守ってくれているんだ!」(ちなみにこのセリフは本来なら秋田弁で・・・以下略)と感激し、家族を信頼するようになるのだ。つまり、ナマハゲは家族の絆作りに一役買っているのである。

ナマハゲは鬼ではない。神なのだ!

ナマハゲのくる村』は子供向けに書かれた創作物語だが、どんな行事なのかを知るには最適だ。結構これを読むだけでも怖いのだが、リアルなナマハゲはとにかく怖いということを付け加えておこう。

なお、観光客向けのイベントのナマハゲはパフォーマンスになっている感じがあり、ちっとも怖くない。大晦日に行われる行事としてのナマハゲは、そんなレベルのものではない。筆者が取材した人の中には、大人になってからもトラウマになっているという人がいたくらいだ。

そんな恐ろしいイメージのナマハゲだが、男鹿半島の人たちの思い入れの深さは特別なものである。

昔はナマハゲが襖や障子を破ったりすることも普通にあったらしい。しかし、それでトラブルになることは少なかった。派手に暴れてくれた方がその家は1年間平穏になるとされたためだ。また、家の中に散らばった藁は神聖なものとされ、翌日まで片付けることがない。翌日に拾い集め、神棚にお供えするという。

男鹿半島の人たちにとってナマハゲは鬼ではなく、“神”そのものなのである。

(文:元城健)

ナマハゲのくる村

著者:はせべえみこ
出版社:銀の鈴社
秋田県のナマハゲのくる村。 わんぱくざかりの主人公と村人やクラスメートとの交流が、秋田の伝統行事ナマハゲを中心に方言も駆使しつつ鋭敏にえがかれました。手におえないガキ大将が、祖父の命をとおして真の強さを知り、困難に立ち向かっていく物語。

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