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中山優馬さん、エイミー・ワインハウスさん、メーガン・トレイナーさんがもたらしてくれるもの

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筆者は、自宅で仕事をしている時間が圧倒的に長い。しかも作業中は座りっぱなし。動きに欠けるこのような働き方では、作業環境を充実させることがとても大切になる。普通に手を伸ばして届く距離にエアコンのリモコンとブラックのアイスコーヒーをなみなみと注いだジョッキ、それにキットカットを数個置いて、目の前の窓は天候に関係なく20センチくらい開けておく。
そして、外から聞こえてくる生活雑音がやたら気になる時も、それほど気にならない時も、音楽はかけっぱなしにしておく。これが一番大切だ。

作業効率を守ってくれるパートナー

キーボードを叩いている間はずっと、1日10時間くらいは音楽を聞き続けていると思う。朝起きる時の曲から始まって、夜遅くの時間に仕事終わりを告げる曲まで、かなり長いプレイリストが固まっている。
最近では中山優馬さんの『YOLO MOMENT』がお気に入りで、朝・午後・夕食後という異なる時間帯の仕事始めにかけている。そして、これと同じくらいよく聞く曲が2曲ある。
まず、エイミー・ワインハウスさんの2006年のヒット『REHAB』。途中に入る手拍子のテンポに合わせてエンターキーを押してしまう。手拍子と言えば、イントロに盛り込まれている”アーバン・ハンドクラップス”(手拍子のカッコいい言い方らしい)が印象的なメーガン・トレイナーさんの『Lips Are Movin』。こちらも日に3回は聞いているだろう。
この3曲に共通するのは、『アメリカン・アイドル』で2002年から2010年までジャッジを務めていたイギリス人プロデューサー、サイモン・コーウェルさんがたびたび口にしていた”キャバレー”という表現かもしれない。Urban Dictionary.comというサイトで、形容詞として使う場合の”ものすごくカッコよくてドラマティックな”という意味が紹介されている。筆者としては、キャバレーであることに加え、心地よくてやる気を出させてくれる効果がある曲として挙げておきたい。

”カノン進行”が生むヒット曲

耳に心地よいという要素に関して、触れておきたいことがある。少し前、テレビ朝日の『言いにくいことをハッキリ言うTV』という番組で、ゲストのマキタスポーツさんがカノン進行というものについて語っているのを見た。ドイツの作曲家ヨハン・パッヘルベルのカノン(『3つのバイオリンと通奏低音のためのカノンとジーグ ニ長調』の第1曲)のコード進行を盛り込んだ曲は必ずヒットするらしい。具体的に示すと、C→G→Am→Em→F→C→F→Gという流れになる。音楽にものすごく詳しいわけでもなく、ギターがものすごくうまいわけでもない筆者でも一応は抑えられるコードばかりなので、わりと簡単と言ってしまっていいと思う。代表曲として『ひこうき雲』、『浪漫飛行』、『負けないで』などが紹介されていた。

音楽が呼び覚ますビジュアルな記憶

音楽の心地よさは、医学分野にも転用が効くようだ。2014年12月に公開された『パーソナル・ソング』というドキュメンタリー映画がある。とあるアメリカ人ソーシャルワーカーが、アルツハイマー病や認知症の患者たちに好きな曲を聞かせることで、それにつながる記憶を引き出せないかと考えた。娘の名前さえ思い出せなかった94歳の認知症患者の男性に往年のヒット曲を聞かせるとすぐに歌い始め、家族の自慢話が止まらなくなる。日々の生活で歩行器を手放せない女性に、若い頃大好きだった曲を聞かせたら、楽しそうな表情で踊り始める。
これとはレベルが違う話だが、大好きだった曲が聞こえてくる時、特定の場所の匂いとか一緒にいた人の服装とか、食べていたものの味までよみがえる瞬間は誰もが一度は体験しているはずだ。

衣食住・音

中山康樹さんの『音楽中心生活』は、人それぞれであろう音楽とのかかわり方を考える方法として興味深い。文章のトーンは、自らについて語る時こそシニカルな響きだが、ミュージシャンや音楽について語る時には別のスイッチが入るようだ。
衣食住はとても大切で、どれもおろそかにはできない。そして、あと一つだけ足すべき要素があるとするなら、それは音だと筆者は思う。
人が健やかであることに役立つハピネス・ホルモンは、エンドルフィンやセロトニン、エンケファリンをはじめとして20種類が見つかっていて、音楽との関係も専門分野として確立され、研究が進められているようだ。
シャワーを浴びながら、食器を洗いながらの鼻歌もいい。最高級スピーカーから放たれるクラシック音楽を楽しむのもいい。そしてもちろん、大好きな曲だけを連ねたプレイリストを流し続けるのもいい。今よりも少しだけ積極的に音楽と関わっていこうとする姿勢が、楽しいことをより多く引き寄せてくれるような気がする。

(文:宇佐和通)

 

音楽中心生活

著者:中山康樹
出版社:径書房
他にいったい何がいるんだ。音楽しか楽しみのない、ひとりの男の物語。愚かなまでに音楽的なその生活が、笑いとペーソスを誘う。

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