ハウツーが満載のコラム
文字サイズを変更する

「おっさんゴレライ」「えっ、えっ、なんて?」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

おっさんゴレライ! おっさんゴレライ! チョットマッテ、チョットマッテ、オニイサーン。「おっさんレンタル」って何ですの? 1時間につき1000円で「気のいい“おっさん”」をレンタルできるサービスだ。実在する。

「おっさんレンタル」業とは何か?

“おっさん”こと西本貴信さんがOKすれば、日本全国どこにでも駆けつけてくれる(交通費は別途)。あらかじめ約束した場所で待っているレンタル客のもとに、やる気マンマンの“おっさん”がやってくる。

西本のおっさんは「お断りする」ことを知らない。よほど無茶でないかぎりは、レンタル客の要望にこたえようとしてくれる。「依頼は断らない」。この仕事をはじめるときにおっさんが決めたことだ。くわしくは後述する。

あるとき「一緒に釣りに行ってほしい」という依頼があった。おっさんが指定された釣り堀に行ってみると、社会人2年目だという青年が待っていた。ふたりで釣り竿を並べる。気まずい沈黙。しばらくすると青年が口をひらいた。

「今だけ“親父”って呼んでもいいですか?」

西本のおっさんは内心で驚いたものの、ここが“おっさん”の腕の見せどころだと思い、時間いっぱい、青年とふたりで釣り勝負を楽しんだ。

別れ際に、“おっさん”をレンタルした理由を話してくれた。すでに、お父さんを亡くしていること。今年結婚すること。だから、生前にお父さんとよく釣りをしたこの場所で、結婚報告をしたかったということ。

晴れ晴れとした表情でそう語る青年を見て、“おっさん”こと西本貴信さんは我が子のことを思い出したという。おっさんは一児の父であり、既婚者なのだ。ついでに言うと、西本さんは由緒正しきおっさんだが、おっさんレンタルを専業にしているわけではない。

おっさんレンタル誕生秘話

「おっさんレンタル」日記』は、いままで900件以上の依頼をこなした“おっさん”こと西本貴信さんの2年間の記録だ。

きっかけは、電車内で聞こえてきた女子高生たちの会話「おっさんってキモいよねー」だった。ギトギトの40代であり、正真正銘のおっさんである西本さんは、いったん落胆したあと、なぜか「おっさんのいいところ、見せたろ!」と奮い立った。

西本さんは、さっそく公式ホームページを作った。数量(時間)を指定して、ショッピングカートのボタンを押せばレンタル手続きが完了するという仕組みだ。あとは「待ち合わせ日時」や「おっさんにしてほしいこと」をメールでやりとりする。

交通費は別だが、1時間につき1000円を支払えば、やる気のある“おっさん”が駆けつけてレンタル客の要望にこたえてくれる。格安価格だ。移動時間を考えると、割に合わないように思える。当然、おっさんレンタルの収入だけでは生活できない。儲からない。そもそも、儲けるつもりで始めたのではなかった。

本業はスタイリスト

“おっさん”こと西本貴信さんは、ファッション業界で働いている。若いときは、外車や高級腕時計を何度も買い換えられるほどの収入があったという。おっさんレンタル業を始めたときも、専門学校講師を務めたりフリーのスタイリストとして活動していた。不自由のない、順風満帆の人生を送っていた。

あるとき、西本さんは「働くことの重み」がどんどん軽くなっていることに気付いてしまった。「この仕事はこれくらいの力で十分」「この人とは、こう話しておけばスムーズ」というような、要領の良さだけで仕事をこなせるようになっていたからだ。

おっさんレンタルの利用者は「なぜか依頼内容をハッキリと書いてこない人が多い」という。つまり、下調べや心の準備ができないまま現場に行かざるをえない。西本さんは、ファッション業界では発揮できた「要領の良さ」が通用しない環境に身を置くことになったわけだ。

さまざまな“珍”依頼

おっさんレンタルの依頼人と会うときは、人が多い場所で待ち合わせるようにしている。だから命にかかわるようなトラブルはない。そうはいっても、思いもかけない依頼のオンパレードだ。一部を紹介すると、

  • ナンパのお手本を見せてほしい(結果はいかに?)
  • 出席者が2人だけの誕生日会のサプライズゲストに呼ばれる。
  • FBIに狙われているのでボディーガードになってほしい。
  • 姉(31才・末期がんの患者)に会ってほしい。楽しませてほしい。

このような依頼者に対しても、おっさんは全力で向きあった。1000円というのはテキトーに決めた金額だったが、お金を受け取ることによって途中で投げ出せなくなるので、ベテランおっさんといえども本気にならざるをえなかったという。

おっさんレンタルの「依頼は断らない」という誓いのおかげで、西本さんは仕事にともなう責任の重みを取り戻すことができた。けっして「儲からない」おっさんレンタルのおかげで、本業や家庭生活がますます充実したものになった。2013年には、フジテレビ系列の『アウト×デラックス』に出演している。

(文:忌川タツヤ)

「おっさんレンタル」日記

著者:西本貴信(著)
出版社:大和書房
依頼は年間400件超!日本や世界のメディアで話題沸騰! 1時間1000円で“おっさん”がみんなの悩みをバシッと解決!「お金」と「成功」に縛られていた男が、個性豊かな依頼人たちとの交流で、新しい生き方を手にする物語。人は、いつだって変われる!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

関連記事