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最近忘れっぽい? それじゃあ記憶力のお話でも

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最近、なんとなく忘れっぽいと感じていませんか? 僕は文章を書く仕事を長年やっておりますが、雑誌がメインだったためか、やった仕事を次から次へと忘れてしまっております。終わった仕事をすっぱり忘れてしまうため、時間が経ってから「あの原稿のことなんですが……」と言われても、まったく思い出せません。

まあ、パソコンに過去の原稿が残っておりますので、探せば原稿があるため思い出すことは可能ですが、頭のなかにはまったく残っていないのです。

しかし、その割にはどうでもいいことはすぐに思い出せます。1985年の阪神タイガース日本一のときのスターティングメンバーとか、子どものころに読んだマンガのワンシーンだったりとか、アライグマは食べたものをほとんど消化せずに排泄するとか……。いったい、僕の脳はどうなっているのでしょうか……。

そんなことを心配してるときに、目についた本が『記憶力が強くなる本』。著者は浜松医科大学名誉教授の高田明和氏です。この本を読んでいたら、「記憶の達人」の話がありました。たいへん興味深いのでご紹介しましょう。

イメージを作って覚える

この本によると、抽象的な言葉の記憶量に比べ、映像(視覚)の記憶量は無限とも言えるほど大きいのだそう。つまり、何かを覚えようというときに文字で覚えるより、絵や写真などで覚えたほうが効率がいいということ。教科書などで写真や図が掲載されているのも、これが理由なのです。

異常に記憶力がよいという男性の話があります。

七十個の言葉を並べて聞かせたところ、彼は一度聞いただけなのに、前からも後ろからも途中からも、完全に繰り返すことができたのです。また、十五、六年後に同じ質問をしたところ、彼は完全に七十の言葉を言えました。

(『記憶力が強くなる本』より引用)

この男性はどうやって70もの言葉を覚えられたのでしょうか。

そのもののイメージを作り、それで覚えると言っています。彼は音を聞いてイメージをできる「共感覚」という能力をもっていました。(中略)言葉のリストが読み上げられるときに、彼は故郷の町の道を歩いていることを想像していたと言います。そして、彼は歩いている間に、おのおのの物を道に沿っておいていきました。今度は思い出すときに、道を歩きながらその物を順番に取り上げていったのです。

(『記憶力が強くなる本』より引用)

ここに出てくる「共感覚」とは、大辞林第三版によると

〘心〙 ある一つの刺激が,それ本来の感覚だけでなく,別の感覚をも同時に生じさせる現象。音を聴いて色を感じる類。 → 色聴(しきちょう)

というもの。これを記憶術にあてはめているのですね。

視覚化は記憶術の基本

一般に、「記憶術」と呼ばれているもののほとんどは、視覚によるイメージを用いています。文字を絵などに置き換えて覚えていけば、文字をそのまま覚えるよりも効率がよくなるというわけです。

さらに効率よく覚えるには、「何かに結びつける」といいそうです。

 たとえば、犬とボールペンという二つの言葉をイメージするとします。そのときに、犬が指先を使って、または口にボールペンをくわえて、字を書いているというイメージのほうが、犬がボールペンの横に座っているというイメージより有効です。

(『記憶力が強くなる本』より引用)

なるほど。これを実生活にあてはめてみましょう。たとえば、封筒と卵を買いに行くとき、「封筒のなかに卵を入れたら潰れてしまってびちゃびちゃになっている」というシーンを頭に思い浮かべればいいのです。

あれ? これでいいのかな……。でもビジュアルとしてはかなりインパクトがあるので、すぐには忘れないのではないでしょうか……。

実は、これもれっきとした記憶術。

奇抜さがよいのは、奇抜なイメージは相互作用を必ずともなうという点です。たとえば、ゾウとピアノという言葉を関連づけるイメージを作ろうとするときに、奇抜さなしには無理です。ゾウのそばにピアノがあり、それをだれかが弾いているというイメージでは、相互作用があるとはいえません。さらに、奇抜なイメージは注意をひきますし、明確なイメージを作りやすいのです。

(『記憶力が強くなる本』より引用)

この方法を極めていけば、何かを記憶するのが楽しくなっていくかもしれませんね。

忘れることも大切

なんでも覚えていればいいのかというと、そうではありません。人間は忘れることにより幸せになれるという側面ももっています。すべて覚えていたら、心がパンクしてしまうかもしれません。

 忘れることは別に悪いことではありません。もし忘れなければ、あなたの心はいろいろなことでいっぱいになり、必要なことと不必要なことを区別したり、判断することもできなくなるでしょう。大事なことは、不必要なことは忘れ、必要なことを覚えているということです。

(『記憶力が強くなる本』より引用)

僕の場合、原稿の締め切りや取材の日時などはあまり忘れることはありません。手帳にも書き込んでいますし、なんとなく締め切りが近づいてきたら気になります。

つまり、必要なことは覚えていると言えるでしょう。逆に、終わってしまったことは忘れてしまうことが多いようです。次の原稿を書くために、頭を空っぽにする必要があるからかもしれません。

忘れるといえばもうひとつありました。お酒を飲んでいると、途中からすっぽり記憶がないということがよくあります。気がついたら、家に帰っているんですが、何を話したのか、どうやって帰ってきたのか覚えてないのです……。これは、記憶術とは別なお話ですかね。

(文:三浦一紀)

記憶力が強くなる本

著者:高田明和
出版社:第三文明社
受験勉強にビジネスに、そして物忘れ防止に「高田式記憶法」を一挙公開。脳の仕組みから記憶法を解き明かし、記憶術の達人の方法も紹介する。

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