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ゴキブリ、カメムシ、セミ・・・ 食用になる昆虫、食べてみる?

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「あなたが一番嫌いな昆虫は?」
そんな質問があったとしたら、多くの人がゴキブリの名を挙げるに違いない。ちなみに筆者はカメムシだ。あの強烈な臭いはトラウマになるほどヤバイ。
ところが、人々に忌み嫌われるこれらの昆虫には、意外すぎる通点がある。聞いて驚くなかれ、なんとゴキブリもカメムシも食用になるのだ!

ゴキブリを食べている国は多い!

ゴキブリを食べる …想像するだけでぞっとしてしまうのだが、世界に目を向けると、中国、東南アジア、イギリス、ブラジルなどゴキブリを食用としている(していた)国は多いのである。そんな衝撃的な事実が満載なのが『昆虫食入門』という本だ。では、肝心の味はどうなのだろうか? 本著から、試食した人の感想を引用すると、例えばゴキブリは「サクサクとしてエビのようでおいしかった」とある。さらに詳細な記述を引用してみよう。

ロンドンでは酢で煮て内臓を除き、バターや穀物の粉と混ぜてペーストを作り、パンに塗って食べた。イギリスの船員は船の中でゴキブリを捕らえ、スープにしたり生で食べたりした。そのむき身は小エビのようだという。

ほかにも、ちょっと変わった“ゴキブリ酒”なるものまである。そもそも、数ある昆虫の中でも淡白で食べやすいとされるゴキブリは養殖が行われている地域もあるくらいだ。決して“ゲテモノ”の類ではない。ごく普通の“食材”として見られることが珍しくないのである。

おいしい昆虫、まずい昆虫

本著を読み進めてみると、身近にいる昆虫の多くが食用になることがわかる。
イナゴは“オカエビ”と言われ、エビのような食感で知られている。バッタの仲間が持つ硬い皮は、揚げるとサクサクとした触感になるので食べやすいという。ビールや日本酒のお伴にもぴったりかもしれない。
シロアリは“ふりかけ”に最適で、煎りたてのものはサクッとした歯ごたえとともに、アツアツの甘い汁が口の中に広がるという。カメムシは臭いを完全に抜き、天日干しにすれば美味だといい、味はバターピーナッツのようなのだとか。また、夏になると大量発生するセミは著者が「食べないともったいない」とおすすめするほど絶品だという。都会でもよく見かけるアブラゼミはサクサクとした触感が楽しめ、ナッツのような香りと旨みがある上に、さらに幼虫は鶏肉に似たさっぱりとした風味が特徴なのだとか!
もちろん、なんでもかんでもおいしいというわけではない。カブトムシの幼虫は腐葉土の臭みが浸透しており、外皮が硬くてまずいのだという。昆虫だからといって一緒くたに扱うなかれ。肉の味に動物ごとの違いがあるように、昆虫にも歴然とした差が存在するのだ。

日本の昆虫食のメッカは長野県

戦前までの日本では昆虫食が珍しいものではなかった。特に戦時中は貴重なタンパク源として、昆虫が広く食用にされた。
現代の日本において昆虫を食べる機会は滅多にないが、例外とも言えるのが長野県だという。もちろん、かつてと比べたら昆虫を食べる機会は減っただろうし、若い世代は口にしたことがないという人も多いだろう。けれども、道の駅では頻繁に昆虫の佃煮を売っているのを見かけるし、その種類もポピュラーなイナゴから蜂の子、ザザムシまで実に幅広い。
もともと長野県は日本屈指の養蚕のメッカで、糸を取ったあとに不要となった蚕の蛹を食べる風習があった(ちなみに蚕は幼虫も食べられるそうだ)。また、山間部では川魚を取ることも難しかったことや、作物の栽培が難しい雪深い風土ということもあって、昆虫を貴重な食料として考える文化が根付いたといわれている。

昆虫食に親しんで日本の伝統文化に触れよう

現代のように密閉された家のなかでは、蚊やハエはおろか、ゴキブリにだって出会う機会は相当少なくなっている。そのためだろうか、部屋に蝿が一匹飛んでいるだけでも抵抗を示す人がいる。
昆虫をキモイ、キタナイ、コワイと思う人は少なくないが、本来、日本人は昆虫と共存しながら生活してきた民族なのだ。俳句の季語として昆虫の名前が多く登場するように、昆虫を愛でる文化が存在していたのである。あのゴキブリだって、嫌われるようになるのは戦後になってからのことだ。戦前は害虫でないばかりか、むしろゴキブリはリッチな家の象徴とされ、歓迎されていたのである。人間の価値観の変化というのはおそろしいものだ。
昆虫を愛し、そして食べることは失われつつある日本の伝統文化と、日本人の豊かな感性を取り戻すことにもつながるのかもしれない。筆者もゴキブリはさすがに嫌だが、イナゴくらいなら今度、佃煮を買い求めて食べてみようと思っている。

(文:元城健)

昆虫食入門

著者:内山昭一
出版社:平凡社
「本当においしいんですか?」「はい。カミキリムシはクリーミーで、ふんわり甘く、ハチの子はウナギの味そっくりで、アブラゼミはナッツの…」昆虫をおいしく食べる? 著者の追究はとどまることを知らない。だが、昆虫食の研究はまだ始まったばかり。前人未到の食域に踏み込みつつ、昆虫食のスタンダードを探る。

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