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ディズニーのおもてなしから学ぶマニュアル学

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マニュアル、と聞くと、どうしても否定的なイメージを持ってしまうのは、おそらく私だけではないだろう。

1人でファーストフード店に行き、10人分のランチセットを注文したら、「店内でお召し上がりになりますか?」と店員に聞かれた、なんて話をよく聞く。
いや、もしかしたら、店の中にあと9人テーブルで待っているかもしれないけど。もしかしたら、注文した人がものすごい大食いという可能性もあるけど。でも、普通に考えたら、テイクアウトじゃない? 「お持ち帰りでよろしいでしょうか?」ってはじめに聞いてもいいよね。ほんの些細なことだけど。でも、きっと接客マニュアルにはまず「店内でお召し上がりですか?」と尋ねることになっているのだろう。

他にも、マニュアルがあると、そのマニュアル通りにしか対応できない人が出てきて、特に接客業においてはマイナスイメージに繋がることが少なくない。機転を利かせた受け応えが出来くなってしまうのだ。

ところが、そのマニュアルがあるからこそ、素晴らしいサービスを提供している場所がある。言わずと知れたディズニーランドだ。

ディズニーランドで不快な想いをした人っている?

ディズニーランドといえば、夢の国。大人も子どもも笑顔になれる魔法の場所だ。そんなキラキラした夢の国で働いている人たち(以下、キャスト)は、みな完璧なサービスを客(以下、ゲスト)に提供してくれる。ディズニーランドに行って、不快な想いをした……なんて話、そうそう聞かないもの。さぞかし徹底された社員教育が成されているのだろう、と思いきや、2万人以上のキャストのうち、9割はアルバイト従業員だという。

そういえば、私の友人の中にも、ディズニーが大好きで、幼い頃からディズニーランドで働きたくて、地元から東京に出て行った子を何人か知っている。アルバイトとして働くこともかなり狭き門らしく、まだ合格通知も受け取っていないうちから、「絶対にディズニーランドで働くんだ!」という強い意志を持って上京していった子もいた。それほどの魅力を持つディズニー。

では、一体なぜ、ディズニーランドは常に人を惹きつけるサービスを提供することができるのだろうか? 業績も右肩上がりのまま、躍進し続けられるのだろうか?

ディズニーの最強マニュアルとは

その理由について、ディズニーには最強のマニュアルや仕組みが整っているからだと、大住力氏は著書『ディズニーの最強マニュアル』にて述べている。

ディズニーのマニュアルに対する考え方はこうです。
・個人の能力に左右されずに「誰がやっても同じ結果になる」仕事のやり方
・組織にぶら下がる従業員をなくし、すべての人に、会社の求めるレベル以上の力を発揮させるためのもの
・従業員がいきいき働き、自発的に動けるよう準備するための道具
・社会経験のないアルバイト従業員にも「仕事の本質」を理解させるためのもの
・すべての従業員に「理念」を浸透させ、それを実現させるためのもの
(『ディズニーの最強マニュアル』より引用)

これらマニュアルの考え方は、ディズニーランドの創業者であるウォルト・ディズニーの思想、仕事観から生まれたものであると大住氏。綿密に考え尽くされたマニュアルがあるからこそ、そのとおりに実行するだけで、経験や能力にかかわらずどのキャストも同じ結果が出せる。また、ウォルトは仕事を「Duty(作業)」と「Mission(役割)」の2種類に分けて考えており、マニュアルによってDutyがスムーズに行えるからこそ、本来の仕事の核となるMissionの実現に注力できる、という主張である。

パーク内の清掃員は、実は清掃目的ではなかった!

たとえば、ひとつ例を挙げてみよう。ディズニーランドで働くキャストは、皆いきいきしている。その理由は、自分が仕事を全うする中で、たくさんの「ありがとう」という言葉をかけてもらえるからだ、というのだ。「自分は人の役に立っている」、「他人から認められている」という「自己有用感」こそが、全キャストが楽しくいきいきと仕事ができる所以なのだ。そして、その「ありがとう」にたくさん出会えるような仕組み、マニュアルがディズニーランドには作られている。

3つのGive
1.ゴミを拾いましょう (Give your a step for picking up trash ahead.)
2.写真を撮ってあげましょう (Give your 1 finger for taking pictures.)
3.案内をしてあげましょう (Give your a call for your happiness.)
(『ディズニーの最強マニュアル』より引用)

さらには、このマニュアル「3つのGive」を実行するための工夫も。ディズニーランド内には、たくさんのカストーディアルと呼ばれる清掃員がいる。彼らは、実は掃除を目的として配置されているわけではなく、広いパーク内で迷ってしまったゲストが、気軽に道などを質問できるための、いわば案内人になること、それが真の役割なのだそうだ。そのために、パーク内にはわざと案内板を少なくしており、ゲストとキャストのコミュニケーションの機会を自ずと増やせる仕組み作りが成されている、というからくり。
マニュアルに従ってDutyを行い、ゲストと接することでMissionを実現でき、結果的に自己有用感が高まり、キャスト全体、会社全体の雰囲気も向上する、というわけである。

ディズニー流マニュアルの導入は、どの職場でも可能

これはほんの一例で、本書にはディズニーの最強マニュアルの秘訣があますところなく記されている。もちろん、どんな職場でも同様の仕組みは実現可能だとのこと。

来る2020年、東京五輪が開催される。その際、海外からやってくる多くの人々に対して、ディズニー級のおもてなしが出来るか否か。はたまた、家庭内でもうまく応用すれば、このマニュアル論は生かせるかも。公私共にHappyになるための、あらゆる層に必読の書である。

(文・水谷 花楓)

 

ディズニーの最強マニュアル

著者:大住力
出版社:かんき出版
「奇跡の接客」「感動のサービス」などと言われるディズニーのおもてなしですが、これを実現しているのは「個」の力ではありません。ディズニーランドで働く人の9割はどこにでもいる普通の学生や主婦、フリーターです。しかも1年でその半分近くが入れ替わります。 そんな状況にも関わらず、顧客を満足させるサービスを実現しているのは、「マニュアル」や「しくみ」の力なのです。さらに、このディズニーのしくみは理念浸透や組織活性など、一見マニュアルと対極にあることにも威力を発揮しています。マニュアル、しくみと聞くと「紋切型のサービス」「融通の利かない接客」というイメージを持ってしまいますが、じつは真逆。顧客を感動させるサービスを提供するためになくてはならないことなのです。そしてそれは、サービス業に限らず、どんな組織にも取り入れることができます。 本書はそんなディズニーのしくみを自分の組織に導入するための方法をエピソードを交え解説します。

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