ハウツーが満載のコラム
文字サイズを変更する

実は餓死寸前だったオードリー・ヘップバーン

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

中学3年生の娘と映画「マイ・フェア・レディ」を観た。夜の繁華街の花売りの娘が美しい貴婦人に変身するストーリーに娘は夢中になり、オードリー・ヘップバーンのおしゃれさ、しなやかさに酔った。そして私にオードリーってどんな人?と聞いてきた。けれど私も「ローマの休日」で有名になった女優さんで、晩年はユニセフの活動をしていたことくらいしか、実は知らない。なので子ども向け偉人伝『オードリー・ヘップバーン レジェンド・ストーリー』をDLしてみたら、驚くほど過酷な人生がそこにはあった。

ユニセフ大使を引き受けた理由

1989年、女優業を引退後、オードリーはユニセフ親善大使となり、こうコメントした。
「わたしは、ユニセフが子どもにとってどんな存在なのか、はっきり証言できます。なぜって、私自身が第二次世界大戦の直後に、食べ物や医療の援助を受けた子どもの一人だったのですから」

大戦中のオランダに当時16歳のオードリーはいた。食料をドイツ軍に持ち去られ、大勢の餓死者が出る惨状のなか「1日、ベッドで本を読むことにするわ。そうすればおなかがすかないもの」と言うほどに彼女も飢えていた。オードリーは大好きなバレエを踊ることができないほどに弱り、彼女の兄は犬用のビスケットすらも口にしたという。このままでは……と思われた時、大量の食料が届いた。その善意は、ユニセフの前身であるアンラという慈善団体からのものだった。そしてオードリーは何年も食べていなかったチョコレートを口にし、回復したのである。その時の命を救われた恩を返そうと、オードリーは親善大使になったのだった。

度重なる悲しみ

オードリーのほっそりした体つきを、私は今までずっとうらやましく思っていた。くびれたウエストはなんて綺麗なんだろう。そこに太めのベルトをきゅっと縛るとなんてオシャレなんだろう……。映画で魅せたドレス達もあのスリムな体型だからこそのものだった。その憧れのスタイルになる以前に、飢えた少女時代があっただなんて、とてもせつない話だ。

苦しいなか、オードリーが前向きでいられたのは、母親が常に「自分のことよりも、他人のことも考えなさい」と教えていたからだという。自分が人のために何ができるかを考え、精一杯の努力をしてきたのだ。サム・レヴェンソンの詩『時を越えた美しさの秘密』を彼女は好んだというが、その中の「スリムな体であるためには、飢えた人々と食べ物を分かち合いなさい」というフレーズ、彼女はこの言葉をかなりリアルに受け止めていたのではないだろうか。

美しく輝いた命

オードリーの苦しみは飢えだけではなかった。オードリーの両親は離婚している。そしてオードリー自身も離婚を二度も味わった。結婚生活では数回の流産も経験している。妊娠中に乗馬シーンを撮影して馬から落ちて肋骨を骨折した時のエピソードは読むと胸が苦しくなるほどに痛々しい。彼女は流産したくないあまりに、肋骨の治療を麻酔なしで耐え抜いた。それなのに結局赤ちゃんはお腹の中で亡くなってしまった……。

過酷な運命に苛まれていたにも関わらず、写真のオードリーには晴れやかな笑顔が多かったことに、驚かされる。改めてユニセフのビデオを観ると、哺乳瓶を含む力すらない飢えた赤ん坊を彼女が励ます姿が映っている。その時ですら彼女は微笑んでいる。よく見るととても慈愛に満ちた微笑みなのだ。彼女のそばにいる時、子ども達はとてもほっとしたようないい顔を見せていて、心がつながっているのがわかる。たったひと時の励ましであっても、子どもにどんなに大きな支えになるか、彼女はそれをきっとよくわかっていたのだろう。

子ども達に伝えたいこと

可愛いイラストが多めに入った伝記を読み終えて、娘が「もう一度『ローマの休日』を観たくなったから、借りに行こう」と言い出した。本の中には、初めて映画を撮る彼女が、涙を流すことができずに苦しむシーンがある。どんなシーンだったのか、どんな涙だったのか、とても気になるというのだ。

児童向け偉人伝を、私は自分の子どもたちに100冊以上与えてきた。さまざまなドラマがその中にはあったけれど、オードリー・ヘップバーンのそれはかなり壮絶なほうだと思う。でもだからこそ娘も学ぶところが多いはずだ。もしこれから娘がつらい思いをした時には、オードリーの生きるひたむきさを思い出してもらえたら、うれしい。

(文・内藤みか)

時代を切り開いた世界の10人 第3巻 オードリー・ヘップバーン

著者: 高木まさき(監修) 茅野政徳(監修) 粟生こずえ(文) おんぷ(絵)
出版社名: 学研教育出版
極貧の境遇に育ちながら、ハリウッドにすい星のように登場、一躍世界的なヒロインとなる。幾多の映画賞も受賞、独自の魅力で、没後20年を経た現在でも世界の女性から愛され続けている。女子児童にとってもあこがれの主人公の魅力の秘密にせまる。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

関連記事