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「高校生よりひどい」と評された安倍首相の歴史的演説とアップトーキング

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日本の総理大臣として初めてアメリカの上下両院合同会議で演説を行った安倍首相。その演説にかみついた野党所属の某先生のツイッターが大炎上するという出来事があった。この先生の真意は安倍首相の演説の内容を批判することにあったらしいが、先生ご自身のつぶやきを読んだ一般人のほとんどは“安倍首相の英語のひどさ”をあげつらって批判する態度にカチンときたようだ。
安倍首相の英語は、それほどひどかったのか。先生ご指摘の一部に「ひどい棒読みで、単語を読み上げているだけ。日本の高校生よりひどい」というくだりがある。そんなにひどいのなら、どの程度までうまくなるべきなのか。そもそも、誰もが納得するレベルまでうまくなる必要があるのだろうか。

アップトーキング

筆者が注目したのは、先生がイントネーションについて指摘していらっしゃることだ。高校生という言葉もひっかかる。何より、“話し方”そのものについてのつぶやきなら、ちょっと触れておきたいトレンドがある。
1994年、かつてCNNで一世を風靡した中国系アメリカ人の女性キャスター、コニー・チャンが“アップトーキング”というタイトルのレポートを行ったことがある。“アップトーキング”というのは、その名が示す通り、文章の一部を上げて話すことだ。上げるのは、語尾である。
今から約20年前のアメリカでは、女子高生からスーパーモデル、そしてクリントン政権における医療改革特命チームのメンバーだった医師も語尾を上げて話していた。
こうしたトレンドはアメリカのみならず英語圏全体に広がっていて、イギリスでは、ベルン大学やエセックス大学で教鞭を執っていた言語学者デビッド・ブリテン博士がアップトーキングを「話し手と聞き手の間に強固な共通認識を構築する話し方」と性格づけた。
コニー・チャンのレポートにも登場したテキサス大学オースティン校のシンシア・マクレモア博士は、アップトーキングを「聞き手が話の内容に着いてきているか確認するため無意識のうちに行うもの」と定義している。マクレモア博士は、女子同士の比較的長い噂話、あるいは女性だけのグループ内で決めごとを作る時などにアップトーキングが多用される事実を突き止めた。こうした傾向は年齢に関係ないことも明らかになっている。
マクレモア博士の実験によれば、アップトーキングが男性に対しても伝染することが確認された。話し手(女性)が男性に対してアップトーキングをしていると、時間の経過と共に相手の男性の語尾も上がりがちになる。どうやら、こうした即効の伝染性が“話し手と聞き手の間の強固な共通認識”に深く関わるようだ。

半クエと半疑問型トーク

日本では1990年初頭あたりからギャル文化に勢いがつき、“超~”というものの言い方が定着し始めたこの頃から語尾上げトークも普通になった。 語尾を上げるので、“半クエ”(半分クエスチョン)とか“半疑問”という呼び方がされることもあり、月号は忘れてしまったが、『AERA』も1994年に特集記事を組んでいた記憶がある。日本でもかなりの速度で蔓延し、最初のうちこそいちいち耳障りだと思っていた人が大多数だったようだが、時間の経過と共に日常化したのだろう。94年当時なら間違いなく語尾上げトークと認識された話し方も、今は違和感なく受け容れられている。
また、日本でも英語圏でも、メールやSNSなど文字を媒体としたコミュニケーションにもアップトーク的要素が盛り込まれ、定着しているようだ。もちろんクエスチョンマークや絵文字が多用されるのだが、最も大きな要素は読み手の頭の中にアップトーキングアプリみたいな機能が仕込まれていて、それによって文章の語尾が上がっているように感じられる…らしい。

女子高生の会話を英語と日本語でアップトーキング風に読む

安倍首相の演説をきっかけに、アップトーキングや語尾上げトークについてさまざま思いを巡らせていたところ、『女子高生の日常を英語にしたら』という本を見つけた。さまざまなジャンルの日常会話を4コマ漫画で見せながら解説していくという作りなのだが、セリフをアップトーキング風にしたほうがリアルに感じられるものが多い。
ということは、筆者の頭の中にもアップトーキングアプリが入ってしまっているのだろう。まあ、それはそれでコミュニケーションツールの一部としてしっかり機能しているのだから、間違いではないと思う。
英語でも日本語でも、自分がごく普通に使っているイントネーション、そして自分とはまったく異なるジェネレーションが使っているイントネーションを思い浮かべながら読み進めると、さらに楽しめます。

(文:宇佐和通)

 

女子高生の日常を英語にしたら

著者:竹村和浩(著) ふぁびお(絵)
出版社:PHP研究所
英語は会話で学ぼう!英単語や熟語、文法を単独で覚えようとしてもなぜ覚えることがなかなかできないのだろうか?それは、私たちが日本語を習得する過程は、日常の会話の中で、この場面ならこういう言葉を使うと周囲の言葉から自然と覚えているからである。日常の挨拶から、基本文型、慣用句など、四コママンガを楽しみながら読んでいくうちに自然と英語が頭に入ってくる画期的本である。中学生から大人まで英語を学びたい人は、副読本として是非手元に置いて、読んでいただきたい一冊だ。

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