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天才児のための特別支援学級が実在する。

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私の息子は、小学1年生の頃、しばしば教室から脱出した。
担任の先生は授業をしていて抜けられないので、教頭先生らが探すと、校庭にある池で、飽かずに魚を眺めていたという。息子の言い分はこうだった。
「どうして知っていることをもう一度教わらなきゃならないの? 授業より魚と話をしていたほうが勉強になるんだよ」

突出を嫌う日本の学校

息子のことを担任は「集団行動ができない問題児」と決めつけ、国立病院での検査を促してきた(結果は治療の必要なしだった)。しかし息子は本当に問題児だったのだろうか。

息子は数学が好きで、小学3年の時には公文式で中学教材を終了していた。しかし複雑な式で答を書くと、担任は容赦なく×にした。「まだ学校で習っていない方法で答えてはいけません」と言うのだ。私は息子をとても気の毒に思った。けれど他に行かせるところもなかったので、とにかく辛抱して椅子に座っているのよ。いたずら書きならこっそりしてもいい時もあるから、と言い聞かせた。息子はえらい桁の帯分数を紙に書き連ね、1桁の足し算の授業の退屈さを凌いだという。

他の先進国にはある天才児支援

海外にはずば抜けた子のための特別支援教室がある。支援を必要としているのは勉強ができない子どもたちだけではない。勉強ができすぎて退屈な子にも何らかの支援が必要なのだ。『ギフテッド 天才の育て方』はそのことについて専門家達が論じた珍しいタイプの教育書である。

読んでみて驚いた。退屈で教室から逃げ出すようなお子さん達の実例が出ていたから。息子と同じく先生にうとまれたお子さんもいた。そんな彼らのその後を読み、淋しい気持ちになった。なぜなら何人ものお子さんが海外の特別支援学級へと旅立ち、目覚ましい成果を上げていたからだ。つまり留学である。例えば数学が飛び抜けているが国語能力や社会性には努力が必要というような子ども達を支援する特別な学級がたくさんあるからだ。

特別な子どもはお金がかかる

日本の学校が合わないから海外に行くしかない。それはわからなくもない。海外だと飛び級もあり、意欲すらあればどんどん先に進むこともできる。けれどそれでは親も大変だし、留学費用を出せない家庭の子は、日本で、途方もなく長く退屈な授業時間を過ごすという苦痛に耐えなければならないのだ。何かが突出した子を海外では「ギフテッド(神様からの贈り物)」というが、贈り物にしては随分と日本では迫害されている気がしてならない。

実際、特別な教育というものはお金がかかる。私も息子が満足するような難しい数学の塾や教材を求めてあちこちに問い合わせをした。時には普通のものよりお金がかかったり遠方に出向くこともあった。私の場合、息子がのめりこんだのは数学だったけれど、これが芸術やスポーツだったらどれだけ親の負担がかかったことだろう。

止めたい天才児の海外流出

私の息子も多くの人に留学を薦められたけれど、結局うちは留学しない道を選んだ。しかし「日本の学校が合わない特殊なお子さんは、海外にでも行けばいい」と丸投げする社会のままで、いいのだろうか。留学したまま日本に戻らない生徒もいる。本書でも、「我々日本人は独創性が低いと言われて久しい。だが実情は(略)独創性がつぶされてきただけなのではないか。ビル・ゲイツがアメリカの経済と文化にどれだけの富をもたらしたか考えてみるとよい」(杉山登志郎氏)と憂えている。

それほどに海外のプログラムは魅力的だ。たとえば1教科だけをどんどん先に進んで学ぶことができる。小学校に通いながら数学だけを大学レベルまで学ぶことも可能なのだ。アメリカでは天才児教育法が制定され、200万人もの子ども達が天才児支援を受けているというから驚きである。何かに突出した子どもが日本では放置され、アメリカでは大切にされている。この差は大きすぎるのではないだろうか。

日本で始まった特別支援

もし息子が小学生だった時に、一部分が先に進みすぎている子のための支援学級があったら、どんなに良かっただろう。先に学びたがる息子を「みんなと同じにしなさい!」と、制さず、子どもに適した教材を与えてくれる教師がいたら、どんなにありがたかっただろう。

でも日本でも少しずつだけれど、動きはある。2015年、東京藝術大学は小学生を早期教育することを発表した。音楽の才能がある小学生を夏休みなどに大学に招待し、短期集中指導をするという。飛び入学できる大学の数もじりじりと増えつつある。この本にあるような特別支援学級が導入される日が来ることを願うばかりだ。

(文・内藤みか)

ギフテッド 天才の育て方

著者:杉山登志郎(著) 小倉正義(著) 岡 南(著)
出版社:学研教育出版
ギフテッドといわれる発達に偏りがあるが、天才的な才能を持つ人たちがいる。彼らの紹介や子どもの頃からの教育の仕方、才能の伸ばし方などを解説。障害児教育の場から天才児を育てる可能性に言及し、彼らの価値や能力、独特の世界を一般の方に啓蒙する。

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