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あなたの武器は何ですか? 声なんてどうでしょう?

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2014年7月26日。日本最大級のキャパシティを誇る日産スタジアムを埋め尽くしたモノノフ(ももいろクローバーZのファンの通称)たちのコール(“凍る”を読むときと同じイントネーション)が響き渡り、キャパシティ×2本の5色のサイリウムが作るうねりがいくつも生まれた。ももクロの毎年恒例の夏のコンサートは、いつものとおりオーバーチュア(開演時にかかる曲)が、何万種類もの声にかき消されながら始まった。

日産スタジアムと歌舞伎町と大阪の劇場をつなぐエネルギー

2013年12月24日、23時45分。新宿、歌舞伎町の一角に店を構えるホストクラブのフロア中央に据えられた大きなテーブルの上にシャンパンタワーが完成した。客たちがうっとりとした視線を向ける中、高級シャンパンがなみなみと注がれ、泡を含んだ黄金色の液体が流れ落ちる。流れが落ち着いたところで、スタッフ全員参加のシャンパンコールが始まった。
2011年9月2日、大阪新歌舞伎座の九月松竹大歌舞伎公演夜の部。『お祭り』という演目で9か月ぶりに舞台に復帰した中村勘三郎さんに、いわゆる“大向こう”から声がかかる。「待ってました!」という客の声に勘三郎さんが「待っていたとはありがてえ」と返し、劇場全体が笑いと歓声に包まれた。

新横浜、新宿、大阪。時間も地理的な位置も違うが、三つのスペースを満たしていたのはまったく同じ種類のエネルギーだ。源となったのは、声である。

声は体を表す?

『サイコロジカル・サイエンス』誌の2015年1月号に、『権力の響き:声を通じて行われる社会的ランクの伝達および検知』という論文が掲載された。この論文の共同執筆者、サンディエゴ州立大学心理学部教授セイ・ジン・コー氏は、声質と社会的地位の関連性について独自の検証を続けている。
コー氏の研究グループが構築した検証モデルでは、声質と社会的ランクの因果関係が視覚化される。その結果、社会的ランクが高い人ほど声も高いことが明らかになった。聞き手を主軸にした検証では、ほとんどの被験者が高く大きい声を持つ人に対して社会的ランクあるいはステータスの高さを感じ取ったという。

オペラ歌手が声だけでグラスを砕く話は本当か

舞台上に立つ恰幅のよい女性オペラ歌手が深く息を吸い込み、最初の一音を力いっぱい出す。ハイトーンの歌声が響き渡り、シャンデリアが細かく揺れ始め、やがて一部が砕け散る。 どこかで目にした気がするこういうシーンにも、物理学的な説明を付けられるようだ。
シャンデリアには、共鳴を起こしやすいワイングラスによく似た形をした部分がある。ワイングラスは、乾杯の時に合わせるとキレイな音が出る。これとまったく同じ周波数の声を出すことができれば、グラスを包む空気中を漂う分子を振動させ、それをグラスに伝えることができる。つまり、シャンデリアのガラスの共鳴周波数が歌手の声の周波数と合致すれば振動が起き、それが強ければ表面にひびが入り、その部分にさらに振動が集中して一部あるいは全体が割れることもありえる。

整数次倍音と非整数次倍音

2015年4月19日に放送された『ヨルタモリ』にゲスト出演した黒柳徹子さんのエピソード。黒柳さんはかつて音楽学校に通ってソプラノ歌手を目指していた時期があったという。そしてご自分の声が“日本を代表する整数次倍音”であることを明らかにした。特徴は、声の通りのよさである。その黒柳さんによれば、タモリさんの声もまた整数次倍音だ。
非整数次倍音というのもあって、こちらは聞いた人が感じる親しみやすさが第一の特徴となる。このタイプの声の代表格として、堺正章さんやビートたけしさんが挙げられる。
タモリさんは、ふたつのタイプの違いについて次のように語っている。「私や黒柳さんが悪口を言うとすごく嫌味になるが、ビートたけしが毒舌を吐いても、結局は親しみを持たれる」

声を鍛え、使い分けるメソッド

故マーガレット・サッチャーが首相の座に就く前に徹底的なボイストレーニングを受けたという逸話が残されている。力に満ちた女性首相のイメージを確立することを最終目標に、トレーニングは以下の三つの要素に主眼を置きながら行われた。
1.話す時の声を高くすること
2.演説では声の高さを一定に保つこと
3.答弁でも声の高さを変えず、大きさだけ調整すること
さて、イギリス首相ではなくても、自分の声を武器にすることはできる。それを実現させてくれるのが『できる人は声を使い分けている:心を操る発声法』だ。話し方のノウハウについて語られた本は多いが、より基本的なツールである声を軸に据えたアプローチは、ちょっと珍しい。タイプ別、シチュエーション別の見せ方もわかりやすく、最後の章ではしっかりモチベーションも上げてくれる。
たかが声。されど声。ほんの少しの努力でベターな武器を手に入れられるなら、試してみない手はないでしょう。

(文:宇佐和通)

心を操る発声法 できる人は「声」を使い分けている

著者:高山華奈
出版社:CCCメディアハウス
≪声は変えられる!≫ 多くの人は、「声なんて変えられない」と思っているでしょうが、決してそんなことはありません。声は変えられます。なぜなら、発声は持って生まれた「資質」ではなく、単なる「癖」だからです。「癖」は誰でもなおせます。TPOに合わせて自由自在に声を使い分ければ、ビジネスもプライベートも、すべてうまくいきます。 秘訣は……<声で酔わせて、心を操る>

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