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女王陛下、その圧倒的なオーラの源

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イギリス女王としてあまねく知られるエリザベス2世は、世界的な名声を持ち、その圧倒的な存在感といったら、他に比べようもない。27歳の若さで王位についてから60年以上、イギリスのために生きてきた。今や史上最高の在位期間を誇り、国民からの人気も抜群である。まさにトップ中のトップであり、気高いオーラをまとった特別の方だ。
私はそうした女王陛下への憧れからこの本を手に取った。ちょうどウィリアム王子に女の子が誕生したというニュースも飛び込み、浮かれた気分で読み始めたのだ。
しかし、あまりの驚きに、画面を戻して読み直してしまった。
女王は人工授精によってこの世に生を受けたと、書かれていたからだ。
驚いたのはそれだけではない。
女王の人生がこれほど運命に翻弄されたものだったとは……。

女王誕生にまつわる驚きの事実

エリザベス女王の母君であるヨーク公妃はなかなか子供に恵まれなかったという。不妊の原因は、夫であるヨーク公、後のジョージ6世が虚弱体質のためだとされる。
けれども、ヨーク公夫妻はあきらめることなく、「ある種の施術」を選択した。つまり、当時としては最先端の方法、人工授精による妊娠、帝王切開による出産を試み、美しく強く賢いエリザベス王女、後の女王を授かることができたのだそうだ。
大ヒットした映画『英国王のスピーチ』にも、吃音に悩むヨーク公とそれを助ける公妃が必死に努力する様子が描かれていたけれど、出産にまつわるエピソードまでは触れられてはいなかった。
エリザベス女王は、斬新で勇気ある人生を歩むように、その出生の瞬間から運命づけられていたのかもしれない。

少女が女王になるとき

王は生まれながらにして王であり、幼少の頃から、帝王教育を受けて育つ場合がほとんどだ。しかし、エリザベス女王は違う。
伯父であるエドワード8世が既に英国王となっており、国民の人気も高かった。本来なら、王女には王位の継承は行われないはずだった。
ところが……。
エドワード8世は、2度の離婚経験のあるシンプソン夫人と恋に落ち、王冠を捨てる決心を宣言するや、イギリスを後にする。そのため、エドワード8世の弟であり、エリザベス女王の父であるヨーク公が、ジョージ6世として急遽、即位することになった。それは、まだ11歳のエリザベス王女が未来の女王となることを義務づけられた瞬間でもあった。あどけない少女だというのに、残酷な話である。

女王の笑顔に触れて

昨年のこと、私はエリザベス女王のすぐ近くに身を置くことができた。光栄な機会だったと、今も思う。取材のため、イギリスのアスコット競馬場に行った際、すぐ目の前を女王陛下が馬車でお通りになったのだ。アスコットは王室が開催する競馬として知られるレースで、女王のパレードがある。女王は最前列にいた私たちに向かい、手を振りながら、笑顔をみせた。私は驚きのあまり、思わずお辞儀をしそうになった。
ちなみに、アスコット競馬は5日にわたり行われるが、女王は毎日、競馬場にお越しになり、衣装も毎日替わる。クイーンの衣装の色を当てる賭け屋までいるほどだった。
イギリス人の多くは女王を我らの君主として、あがめながらも、親しみをこめて接しているのだろう。

女王としての人生を全うするために

しかし、ここまでの道は平坦ではなかった。
初恋の人フィリップ殿下と自分の意志で結婚を決め、4人の子宝に恵まれたものの、女王の仕事と母親としての役目を両立するのは困難を究めた。さらには、国民からの人気を失って立ち往生したときもあったし、息子夫婦の不和にも悩んだ。嫁であったダイアナ妃の事故死も乗り越えなくてはならなかった。
それでも、女王は威厳を失うことなく新しいものを取り入れ、国民に寄り添おうとした。
そして、今、孫のウィリアム王子は2児の父となり、英国王室に新しい未来が開けつつある。女王は大英帝国の女王をつとめながら、同時に、未来の王の母として、祖母として、さらには曾祖母となって、前進していかねばならない。
この本のタイトルが示すように、女王はこの後も『大英帝国CEO』として生きていかれるのだろう。
今までも、そして、これからも、女王はずっと女王なのだから。

(文:三浦暁子)

大英帝国CEO エリザベス女王の原点

著者:渡邉みどり(著)
出版社:ハースト婦人画報社
英国・エリザベス女王の「原点」をめぐるノンフィクション。イケメンに恋する王女時代、夫の浮気疑惑や、子育てに悩む母親としての顔、サッチャー首相との不和や、嫁との確執……。人生の運も不運も味方にしながら乗り越えてきた女王の生き方は、「大英帝国」のCEOとしてのビジネス手腕にも反映され……。雑誌『婦人画報』の連載時には、常に読者アンケート上位にくいこみ、好評を博していた内容が満を持しての電子書籍化。「生き方上手」を目指すすべての人に読んでいただきたい一冊です。
目次
第1章 帝王切開  ー女王の生涯 誕生から11歳まで
第2章 初恋実る  ー女王の生涯 13歳から21歳の結婚まで
第3章 英国第42代君主  ー女王の生涯 妻から、母、女王へ(21歳~26歳)
第4章 女王の“養女”
第5章 妹の悲劇  ーマーガレット王女の恋
第6章 元祖イクメン
第7章 女王一家の事件簿
第8章 サッチャーと女王
第9章 母親失格
第10章 90年代は“ひどい年”
第11章 未来のキングは誰?
第12章 英王室とサファイア
著者について
渡邉みどり(わたなべ・みどり)
ジャーナリスト。文化学園大学客員教授。東京都出身。早稲田大学卒業後、日本テレビ放送網入社。1980年「三つ子15年の成長記録」で日本民間放送連盟テレビ社会部門最優秀賞。昭和天皇崩御報道の総責任者。1995年『愛新覚羅浩の生涯』で第15回日本文芸大賞。『英国王室の女性学』、『美智子さま「すべては微笑みとともに」』など著書多数。

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