ハウツーが満載のコラム
文字サイズを変更する

人はどうして疲れるのか。疲労がカラダに良い理由

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

よく働いたあとや、スポーツで汗を流したあとに、なぜ「気持ちいい」と感じることがあるのだろうか。体力を消耗したはずなのに、まるでカラダが喜んでいるかのようだ。

金属疲労や制度疲労、過労死など「疲れる」ことにまつわる言葉には良いイメージがない。しかし、医学では「疲労」が生命活動にとって必要不可欠なものであるという。

疲労のメリットとデメリットを紹介しよう。

疲労の正体はよくわかっていない

医学博士が書いた『人はどうして疲れるのか』(渡辺俊男/著)によれば、私たちが「疲れた」と感じるのは、脳みその一部である大脳皮質が休息を求めるシグナルを発したときだという。

疲労に関して、テレビなどでよく言われることがある。ヒトが疲れたとき「乳酸」という物質が体内に溜まる。けっして間違いではないが、疲労の原因物質はそれだけではない。

渡辺先生いわく「医学的検査によって得られる疲労時の物質は、労働による老廃物質だが、その量の多少によってただちに疲労の軽重を論ずることはできない」という。つまり、たとえ乳酸が多く溜まっているからといって必ずしも「疲れている」とは限らない。疲労は、つかみどころのない現象なのだ。

たちの悪い疲労の見分け方とは

ヒトは疲れすぎると死ぬ。いわゆる過労死だ。

慢性的な疲労は「その人の持っている弱点をまず襲ってくる」から、疲れたまま働きつづけると発病しやすくなる。過労は、とくに循環器系(血管)に悪影響をおよぼす。心不全やクモ膜下出血などは、過労死によく見られる症状だ。

疲労の度合いを把握して、なるべく健康を保つためにはどうすればいいのだろうか。まさか毎日のように血液検査をおこなうわけにもいかない。

渡辺博士は、手軽な疲労チェック方法を提案している。それは、毎日顔をあわせるような親しい人に「顔色悪いね」「いつもより元気ないね」と言われたら素直に耳を貸すべき、というものだ。なるほど、いちばん手軽で確実な診断方法なのかもしれない。

今日からできるよく効く疲労回復の方法

疲労には休息が欠かせない。渡辺博士は「使っていた筋肉を休ませ、使っていなかった筋肉を使うこと。立っていたヒトは座り、座っていたヒトは立って歩く」ことを心掛けるべきだという。

過労死によくある突然死は、ほとんどが循環器系(血管や心臓)の重大な疾患によるものだ。血や体液のめぐりが悪くなると「疲れた」とか「だるい」と感じる。顔色をながめて体調を測ることができるのは、先に述べたとおりだ。

疲れをとるためには、血のめぐりを良くしたほうがいい。まずは、つま先や指先などの末端の筋肉からほぐしていく。マッサージでも良いが、いちばん効果的なのは風呂に入ることだ。シャワーだけで済まさずに、せめて半身浴をしてカラダに血液をめぐらせたほうがいい。

じつは疲労にはメリットがある

ここまで、疲労をさんざん悪者扱いしてきたが、かならずしも「疲れる」ことは健康の敵ではない。

疲れることを避けていればずっと健康のままでいられるかといったら……答えは「ノー」だ。私たちの経験からもわかるとおり、同じ姿勢のままじっとしていると余計に疲れる。体がなまってしまう。すこしくらいは動いたほうがいい、疲れたほうがいい。

生きているものには「ゆらぎ」が必要だ。
むかしから「船の飲料水はなぜか長期間の航海中でも腐りにくい」と言われてきた。科学的にも、液体は揺らし続けたほうが腐りにくいのだ。ヒトの場合には、寝たきりでじっとしていれば「床ずれ」という症状があらわれる。血液や体液が循環しないために生体組織が異常をきたす。疲れなさすぎると、かえって発病しやすくなる。

上手に疲れて、元気に生きよう!

毎日働いたり、勉強したり、家事をしたり、スポーツを楽しんだり。ほどよく疲れるからこそ血のめぐりが良くなって、ヒトは健康をたもつことができる。「空腹は最高のスパイス」と言うように、働いたあとの食事や酒がうまいのには「疲労」が一役買っているのかもしれない。

小人閑居して不善を為す(しょうじんかんきょしてふぜんをなす)
古くからの格言で、要するに「閉じこもってばかりいると、ろくなことを考えない」という意味だ。閉じこもったり、ふてくされて寝てばかりいる人間は、しだいに病的な顔つきになっていく。血のめぐりが良くない不健康な肉体は心にも影響をおよぼすから、先人たちは運動や疲労の効用を理解していたのかもしれない。

スポーツやジョギングをいきなり趣味にするのはむずかしいなら、せめて散歩やストレッチの習慣を身につけたい。上手に疲れて、血液のめぐりを良くして、昨日よりも今日が楽しいと思える毎日を過ごせるようになりたいものだ。

(文:忌川タツヤ)

人はどうして疲れるのか

著者:渡辺俊男(著)
出版社:筑摩書房
生きているものは必ず疲れる。疲労することによって自らの休息の必要を知り、休息の結果、体力・気力が回復して、次なる活動が可能になる。半世紀以上を生理学の研究に捧げてきた著者が、人間が疲労する生化学的システム、回復方法などをわかりやすく説きながら、疲労というもの、さらには人間の労働や生命までを語る。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

関連記事