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「長澤です…。芸能界辞めたい…。」というタイトルの迷惑メールを押してみると…

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世に放たれるメールのうち、迷惑メールは約6〜7割。これは総務庁調査による電気通信事業社13社が叩き出した数値だ(2012年)。つまり、世に流れるメールの半数以上が迷惑メールなのだ。どうせゴミ箱フォルダに入ってくるだけだしと高をくくっていると、時折、受信箱に紛れこんでくる迷惑メール。そもそも、あれにハマる人なんているのか。そして、ハマってしまうとそこには何が待ち構えているのか。

「夢の高額当選でゆとりある生活を実現しましょう!」

多田文明『迷惑メール、返事をしたらこうなった。』は、そのタイトルがすべて物語るように、明らかに怪しい迷惑メールに敢えて積極的に応え、先方の悪徳業者にガチンコで立ち向かったドキュメントである。迷惑メールなんて……と一笑に付すだけの人が殆どだろう。それなのに、なぜ業者は送り続けるのか。「1%マーケティング」、つまりは、10万人に送ったとしてそのうち1000人だけが反応してくれるだけで構わないからだ。そのうちの1%が先に進んでくれる人がいれば、商売になる。

普段見向きもしない迷惑メール、その先にはどのような展開が待ち受けているのか。「ロト6」が確実に当たる情報を持っていると謳うメール、その文言に記されているURLをクリックしていく。迂回を重ねてようやく業者のサイトに辿り着くと「夢の高額当選でゆとりある生活を実現しましょう!」とテンション高めに煽り、夫の収入を超えてしまったという主婦の談話などが掲載されている。会員登録を済ませると、30分後に著者の携帯が鳴る。

事前に把握している高額当選番号を教えるから……

「私どもは財団法人日本宝くじ○○から当たり番号を買いつけています」と言う業者。「抽選の際、ボールが攪拌機でまわされてはじき出されるわけですが、どのボールが事前に出てくるのか決まっているのです」とは滑稽な見解だが、それでもワザと言われた番号を買ってみる著者。後日、「ハズレましたね」と申し立てるも「いいえ、何を言っているのですか。当たっていましたよ」としらを切る電話口の男。次の情報を教えるにはID費用として1000円かかるとのこと。

やがて、公益情報(事前に把握している高額当選番号)を教えるので、その当選額の一部を用意しろという展開に。500万円の30%である150万を支払えと言う。「まず申し込みをしてもらい、1対1の面談をして、情報を受け取れるかどうかの審査をします」と、頓珍漢な申し立てをしてくる、という流れ。高額に目が眩んだ一部の人は、思わず支払ってしまうのだろうか。

「撮影の合間ですよ」と親しげにメールを送ってくる芸能人

「長澤まさみ」からのメールには笑ってしまう。「長澤です…。芸能界辞めたい…。」「続き&返信は下記から」とは、まったくリアリティもない。プロフィール欄には「masami.n」とあり、もし摘発されても、あくまでも長澤まさみを名乗って商売していたわけではないと言い逃れできるようにしてある。事実、このような手口で150万円近い利用料金をだまし取ったケースも報告されている。芸能人当人のブログやSNSの情報を拾い集めて、最新の情報を添えて「撮影の合間ですよ」などと親しげに送ってくるという。

振り込め詐欺しかり、規制を強めても何とかしてすり抜けてくるイタチごっこが続く中、著者がこうしてわざわざ騙されに行くのは、とても有り難い取り組みだ。なぜって、この手の業者がいかに陳腐かを晒してくれるから。彼らは、人の欲につけ込むのだけは上手いが、冷静に考えれば、メールの文面は誤字脱字だらけあり、こっちから突っ込みを入れればタジタジ、逆上するか、電話を切るしかない。とっても弱々しい人たちなのだ。

軽薄だからこそ、抜け出せなくなる

彼らは、ある段階になると、法的措置を取りますと凄んだり、社会的身分が危うくなりますよ、と脅しをかけてくる。しかし、あちらはこちらの情報をまだ掴んじゃいない状態、住所も氏名も知らないのにどうやって訴訟を起こそうというのだろう。「裁判を起こします」「逮捕される可能性も出てきます」なんて聞き慣れない言葉を投じられるとどうしてビビるものだが、明らかにイリーガルなことをやっているのはあちら。迷惑メールの奥に広がる世界は、とっても軽薄だ。でも、軽薄だからこそ、相手の手中にはまってしまうと抜け出せなくなる。それを自ら突っ込んで暴き出した著者に感服だ。

(文:武田砂鉄)

迷惑メール、返事をしたらこうなった。 詐欺&悪徳商法「実体験」ルポ

著者:多田文明
出版社:イースト・プレス
「うまい話」の裏側、あえて覗いてきました!キャッチセールス評論家が、あの差出人の「正体」に迫る! パソコンの受信ボックスには毎日、たくさんの迷惑メールが送りつけられる。日々せっせと迷惑メールの削除をしてから仕事を始める人も多いのではないだろうか。2012年度は全メール数の約6~7割が迷惑メールという驚くべき数字になっている。そこで今回は、みんな興味はあるけれども、その見られない先の世界には何が待っているのか、「多くの人が行ってみたいけれども行けない世界」をあえてのぞいてみた。本書はその記録である。

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