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80~90年代のマンガみたいな不良は、絶滅寸前?

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暴走族の構成員数が年々減少傾向にあるという。
警察庁の統計では、2013年の時点で7,000人を割り込んでいる。2004年には18,800人ほどいたらしいが、わずか10年で半数以下になったということだ。そういえば、最近の「警察24時」でも暴走族の登場が激減している。この手の番組の定番になっていた“初日の出暴走”にいたっては、全然放送されなくなった気がする。

不良になりたかったけれど、一歩が踏み出せなかった

何を隠そう、私は子供時代に暴走族やヤンキー、いわゆる“不良”に憧れていた時代があった。私が小~中学生の頃に少年マガジンで連載されていた「疾風伝説特攻の拓」は、現在も私のバイブルだ(実際の不良が嫌いだと言う人にも、なぜかこのマンガのファンは多い。未読の方はぜひご一読いただきたい)。
では、私が不良だったかというと、残念ながらそうではなかった。不良になるだけの勇気がなかった。ちょっと一時期、それっぽいようなことをしてみたこともあるが、早々と脱落。そこそこ真面目に勉強をして世間体のよいクソ真面目な子供を演じていた。
結果、何もかもが中途半端な状態になってしまったのだが……。

 絶滅寸前? 消えゆく不良文化

「特攻の拓」や「湘南爆走族」のように、不良のカッコよさや熱い友情を描いたマンガは80~90年代にはたくさん出版されてばんばんヒット作が出ていたが、現在はかなり減っている。
そんななかでも、日本唯一(たぶん)の不良のバイブル的雑誌「チャンプロード」(笠倉出版社)が奇跡的に存続している。体裁も私が愛読していた中学時代とほとんど変わっていない。何十年にわたってコンセプトがぶれずに出版が続いている稀有な雑誌だ。重要文化財級の価値がある。出版を続けている編集部に敬意を表したい。
しかし、誌面に載るチームの写真は変わった。明らかに年齢が高いのだ。かつては、10代半ば~20代前半の青春真っ只中の少年たちが主役だった。現在は旧車會といわれる暴走族のOB&OGが多い。一般的なツーリングのチームと変わりない風貌の人も多く、特攻服を身に纏うような派手さはない。
そういえば、街を歩いていてもステレオタイプな不良を見かけなくなった。時代の変化なのかもしれないが、いつしか不良もレトロ文化の一つとして語られる日が来るのだろうか。

不良は、学校という社会が作り出した存在

そもそもいつ頃から不良という言葉が使われるようになり、存在が認知されるようになっていったのだろう。
悪さをする少年は、飛鳥時代にも戦国時代にも江戸時代にもいたはずだ。ひょっとすると、現代の不良よりも悪さのレベルでは洒落にならないかもしれない。子供時代から数々の伝説的エピソードを残している織田信長は、現代に置き換えれば相当な不良であろう。しかし、そういう人を不良とは言うことはまずない。
その名もずばりなタイトルの書物「不良少年」にこんな記述がある。不良とは学校という社会の枠から外れた存在なのだという。不良が生まれはじめたのは明治以降に近代的な教育制度が始まってからで、現在我々が連想するステレオタイプな不良文化が広がったのは、モノが溢れ国民が豊かになった戦後ということになる。

芸術家、文化人が不良を擁護する理由とは

不良は学校では教師から目の敵にされ、夜遅くにコンビニや駅でたむろしていると近隣住民から煙たがられる。一方で、芸術家や文化人の間では肯定的に捉える風潮もある。本書でも紹介されているように、小説家の瀬戸内寂聴は「だいたい小説家なんて、不良がなるものですよ」と話していたり、筒井康隆も「ぼくは不良少年だった」と回顧している。これらの言葉のニュアンスには、不良をマイナスイメージとして捉えるのではなく、社会規範から外れて自由奔放にかっこよく生きている人という意味合いが強い。
芸術家と呼ばれる人たちにも、学校という均質なルールを求めるコミュニティからは外れた人が多い。自己表現の方法は違えど、不良の振る舞いには共感を覚える部分が少なくないのだろう。この世界に不良を擁護する人が多いのは、そんな理由なのかもしれない。

(文:元城健)

不良少年

著者:桜井哲夫
出版社名:筑摩書房
不良とは何だろうか。世間から社会的な劣等者ないしは犯罪者予備軍というレッテルを貼られる存在でありながら、一方で息の詰まりそうな管理社会に風穴をあけるトリックスター的存在。かつてこの両義性によって不良精神が輝いてみえる時代もあったが、それもいまはノスタルジーとして語られるのみである。恐るべき若者たちに対する近代国家の管理と保護の動向を鳥瞰しつつ、トリュフォーの映画や戦後日本のマンガ・劇画に登場する不良少年たちの反抗と運命を共感をもって描くもうひとつの若者文化論。

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