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貴族の館で起こったことは

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1997年に大ヒットした映画「タイタニック」。
目もくらむような豪華客船で、上流階級の娘と画家志望の貧しい青年が出会い、恋に落ち、遭難に巻き込まれながらも、必死で生き残ろうとする姿を描いたものだ。
主演のジャックを演じるレオナルド・ディカプリオがはまり役で、私も夢中になって観てはため息をついた。
身分違いの恋は時に人をうっとりさせ、白昼夢を観ているような甘美な思いを私たちに与えてくれる。
それから、数年が経った今、再び、私を虜にするドラマが現れた。
その名は「ダウントン・アビ-」
イギリスで製作されたテレビドラマで、本国、イギリスはもちろんのこと、アメリカでも大ヒットを記録し、日本でも昨年から放送が始まっている。

私、ダウントン・アビーに夢中です

自分でも説明がつかないほど、私は「ダウントン・アビー」が好きだ。
私だけではない。周囲にも「ダウントン・アビー中毒患者」と呼ぶべき人々がいる。
番組はもちろん録画し、加えて、英語版を観るためにDVDをレンタルして、何度でも繰り返し観る。
それだけでは終わらずに、さらに理解を深めようと公式ガイドブックを熟読する。
理由はそれぞれだ。
ある人は、イギリスのマナーハウスに憧れると言い、ある人は、20世紀初頭のファッションに魅了されると語る。
豪華な調度品に目を見張るという人もいるが、それもそのはず、このドラマは実際に、カーナボン伯爵の大邸宅、ハイクレア城で撮影されているのだから、本物が持つ輝きに圧倒されても不思議はない。

掟破りの物語

映画「タイタニック」で、とくに印象深いのは、ジャックが本来なら入ることを許されない一等船室にお招きを受けるシーンだ。
普段着のまま上の階に入ろうとするジャックを大金持ちの乗客モリー(キャシー・ベイツが演じていた)が制し、正装に身を包まなくてはいけないと諭す。ジャックは彼女のアドバイスに従い、用意してくれた服を身にまとって颯爽と現れる。
その笑顔といったら、それはもう、豪華客船顔負けのピカピカの輝きだ。
しかし、三等船室の客であるジャックが一等船室にあがるのは、特別中の特別、本来はあってはならない「掟やぶり」の行いだ。
もし、この「掟破り」が、大邸宅とはいえ、一軒の家で、それも何世代にもわたって、行われていたら、いったい何が起こるのか?
それが「ダウントン・アビー」の面白さだ。

面白いけど、ちょっと不気味

「タイタニック」は客船の上で交差する人間関係を描いたものだ。しかし、それはあくまでも航海中に限られる。船をおりたら、人々はそれぞれの目的地へ向かい、それぞれの暮らしを始める。
けれども、「ダウントン・アビー」では、大きな邸から逃げ出すことは原則としてできない。
伯爵家に生まれついたがゆえに、人々は貴族という家柄に縛られ、否が応でもそれを守り抜かねばならない。
人間としての悲しみや誇りは、時として無視されたまま、ドラマは進んで行く。
一方、使用人達は、貴族に雇われ、厳しい労働に耐えつつも、そこに自分なりの喜びを見出そうとする。
目に見えない細かな決まり、守らなければならないしきたり、血で血を争う憎しみや激しい恋。それらが、一軒の家の中で、何代にもわたって続いていくのだ。ワクワクすると同時に、オカルト映画を観ているような不気味さも伴う。

優雅な邸宅でのサバイバル

タイタニック号は氷山にぶつかり転覆した。
その最期はむごいものだった。
しかし、転覆することも許されない存在「ダウントン・アビー」も、それはそれで、人々にそれ以上のむごさを強いるものだろう。
目には見えない階級という垣根を人々がどう守り、どう飛び越えるか、そこにこのドラマの魅力がある。
「ダウントン・アビー」で繰り広げられる複雑な相続争いの発端となったのが、他でもないタイタニック号の遭難であったことにも、計算されつくした脚本家の心を感じないではいられない。

人生は生き残りを賭けた戦いであるということをこの壮大な物語は教えてくれる。

(文:三浦暁子)

ダウントン・アビー 華麗なる英国貴族の館 シーズン1・2公式ガイド

著者:ジェシカ・フェローズ(著) 五十嵐加奈子(著) 力丸祥子(著) 吉嶺英美(著) 久保美代子(著)
出版社:早川書房
【カラー/固定型】カラー・大画面での閲覧に最適化されたコンテンツです 世界じゅうで話題の人気ドラマ『ダウントン・アビー』。20世紀初頭の大邸宅ダウントン・アビーを舞台に、伯爵一家とそれを支える執事やメイドたちが繰り広げる華麗でドラマチックな歴史群像劇だ。イギリスのカーニバル・フィルムが制作しITVで放送され、以来、エミー賞やゴールデン・グローブ賞、英国アカデミーテレビ賞など英米の主要なテレビドラマの賞を受賞している。日本ではNHKやスターチャンネルで放送されたこのドラマの、シーズン1と2をさらに楽しむのに役に立つ歴史的事実や撮影の舞台裏のあれこれを、美しい写真の数々とキャストやスタッフへのインタビューで紹介する。ドラマのクリエーターで、アカデミー賞受賞の脚本家ジュリアン・フェローズによる序文つき。

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