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いつの時代も「努力・友情・勝利」だということをわからせてくれる『南総里見八犬伝』

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江戸時代、曲亭馬琴が28年間の歳月をかけ完成させた長編小説『南総里見八犬伝』。全98巻106冊に及ぶ、長編も長編、大長編小説だ。

僕はそのタイトルは知っていたし、内容もなんとなくは知っている。しかし、実際に読んだことはない。そこで手軽に読めるものをと思い、『里見八犬伝』(曲亭馬琴・原作/横山充男・文/佐々木メエ・絵/加藤康子・監修/学研プラス・刊)を手に取ってみた。

これは、小学校中学年から楽しめるよう、オールカラーのイラストを交えてわかりやすい文章に書き直されたもの。これなら、手軽に読めるだろう。

現在のマンガにも南総里見八犬伝のエッセンスが散りばめられている

『南総里見八犬伝』をとても大雑把にまとめると、約600年前の戦国時代、武家の里見一族を中心に、数珠の玉と牡丹の痣を持つ8人の犬士たちが、徐々に仲間になっていき、敵を倒し、里見家を大きくしていくというもの。「勧善懲悪」と「因果応報」の王道活劇といってもいいだろう。

この『南総里見八犬伝』に影響を受けたマンガなども多い。たとえば『ドラゴンボール』などもそうだ。7つのドラゴンボールを集めるという点がかぶる。

また、『アストロ球団』という野球マンガ(というにはあまりにもぶっ飛んだ作品だが)は、身体に野球のボールの痣がある9人の野球超人を集めることがテーマとなっているのだから、まさに『南総里見八犬伝』だ。

このように、現代の作品にもいろいろな影響を与えている本作。実際に読んでみると、それはそれは大スペクタクルSF小説なのだ。

個性あふれる魅力的なキャラクターに激しいアクション

舞台となる里見家などは実在した武家だが、ストーリー自体はフィクションとなっており、ドキドキワクワクのオンパレードだ。

まず、登場する犬士たちのキャラクターがよい。女性のような容姿を持つ犬塚信乃、その信乃の監視役としてそばに付き添う犬川宗助、大きな体で力持ちの犬田小文吾、最年少ながら文武両道の犬江新兵衛などなど、どれもキャラクターがしっかり確立されており、感情移入しやすい。

そして、屋根の上で剣と剣を交えて戦うというようなバトルシーンあり、妖術が登場したり、関東だけではなく関西や九州地方までを舞台とするなど、グローバルな展開もワクワクさせてくれる要因だ。

何歳になっても「友情・努力・勝利」に惹かれてしまう

『里見八犬伝』は、長い原作の一部分を小学生向けにしたものなのだが、おもしろさは十分伝わってくる。

よくよく考えてみたら、運命に導かれるように次々と犬士たちが仲間になっていくのは、「ドラゴンクエスト」のようなRPG(ロールプレイングゲーム)を想起させる。

そして、それぞれが得意分野があり、その持ち味でさまざまな敵と戦っていくのもRPGのようだ。

もちろん、前述した『ドラゴンボール』をはじめとしたマンガにもその要素は見受けられる。つまり、『南総里見八犬伝』は現在のファンタジー作品の礎となった作品と言えるのではないだろうか。

全盛期の週刊少年ジャンプは「友情・努力・勝利」という三大原則のマンガを大量生産し、少年たちのハートをわしづかみにしていた。

『南総里見八犬伝』も、いわば「友情・努力・勝利」を根底にしたファンタジーな作品。そう考えると、江戸時代の頃から少年の心というものはあまり変わってないのかもしれない。

今回小学生向けの『里見八犬伝』を読んだわけだが、ぜひともちゃんと原作を読みたいと思った。「友情・努力・勝利」には無条件にワクワクしてしまうのは、何歳になっても変わらないのかもしれない。

(文:三浦一紀)

里見八犬伝

著者:曲亭馬琴(原作)・横山充男(文)・佐々木メエ(絵)・加藤康子(監修)
出版社:学研プラス
小学低中学年から楽しめる!オールカラーイラストで、さくさく読める「日本名作」シリーズ第4弾。犬士の一人、信乃は、悪と戦いながら、運命の仲間を探す。いつか八犬士は出会い、里見家の呪いを解けるのか―。一度は読んでおきたい名作を、読みやすく収録。

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