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ジェネレーションミックスと呼びたい「多世代交流」

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近所のスーパーに行くと、ひとりで買い物をしているお年寄りを見ることが多い。ついこの間自宅のすぐ近くにオープンしたコンビニでも、さまざまな種類のお惣菜をかごいっぱいに入れて並んでいるお年寄りをよく見る。

こういう光景を見慣れたものに感じるようになったのは、いつ頃からだったろうか?

独居老人の爆発的増加

内閣府が平成28年に発表した『高齢社会白書』に、次のような記述がある。

 

65歳以上の高齢者について子どもとの同居率をみると、昭和55年にはほぼ7割であったものが、平成11年に50%を割り、26年には40.6%となっており、子どもとの同居の割合は大幅に減少している。一人暮らしまたは夫婦のみの世帯については、ともに大幅に増加しており、昭和55年には合わせて3割弱であったものが、平成16年には過半数を超え、26年には55.4%にまで増加している。

 

さらに、以下のような文章が続く。

 

65歳以上の一人暮らし高齢者の増加はともに顕著であり、昭和55年には男性約19万人、女性約69万人、高齢者人口に占める割合は男性4.3%、女性11.2%であったが、平成22年には男性約139万人、女性約341万人、高齢者人口に占める割合は男性11.1%、女性20.3%となっている。

 

本当にその程度なのだろうか。実感としては、はるかに多い気がする。

もうひとつの孤立グループ

言葉の響きは決して好きではないのだが、いわゆる独居老人が生まれる原因はいろいろあるだろう。昭和の時代から言われている核家族化。2004年に過去最低の1.28(人口を維持できる水準とされるのは2.08)という数値を記録した少子化。

 

前出の『高齢社会白書』の文言についてもう一度考えてみる。筆者自身も、結婚する際に親との同居という選択肢はまったく考えなかった。無責任かつ身勝手に聞こえるのを覚悟で言うなら、自分とパートナーという関係性と親子という関係性をひとつの枠の中で実現させることは想像できなかった。

 

視野を少し広げ、地域社会を軸にして考えると、筆者が小学生だった頃のようなタイプの、さまざまな世代の人たちがうるさいくらいにかかわりあう近所付き合いを今もしている人たちはどれくらいいるのだろうか?  特に都市部の人間関係が希薄になったのは事実だが、それをことさら嘆くつもりはない。受け容れるべき事実としてあるだけだ。

 

こうした状況の中、孤独な時間を多く過ごす人たちは高齢者だけではない。話し相手がいなかったり、毎食一人で食べていたり、外出したりすることがほとんどないという人たちは、意外にも子育て世代のママたちに多いという。

 

とある調査によれば、1日10時間以上母子ふたりきりで過ごす産後3ヵ月までの女性は60%に上る。さらには、そのうち30%が16時間以上もふたりで過ごしている。この事実は政府も把握しているようで、官民一体となって現状を見直そうという動きが目立ってきている。

 

そして、キーワードとして浮上したのが「多世代交流」だ。首相官邸および厚生労働省のホームページにも、異なる世代同士を結び付ける試み=多世代交流に関する多くの資料がアップされている。

多世代交流とは

『多世代交流のヒント』(吉津明子、溝邊和成・編著/学研ココファンホールディングス・刊)は、多世代交流というコミュニケーション形態が生まれた背景と、その実例について解説してくれる一冊だ。立脚点となるのは、「地域共生社会」という概念である。

地域共生社会は、“高齢者・障害者・子どもなど全ての人々が、一人ひとりの暮らしと生きがいを、ともに創り、高め合う社会”と定義され、幅広い年齢、対象者を「縦割り」ではなく、「丸ごと」地域で支えていこうとする考え方です。

『多世代交流のヒント』より引用

次に、地域共生社会という仕組みの中における多世代交流の意味が示される。

また本書では、多世代交流によって子どもと高齢者が、それぞれどのようなベネフィットを得られるのかということについて「互恵性」と「まなび」という視点から説明をしています。このことは、なぜ多世代交流を行うのか? 多世代交流にはどのような意味があるのか? といった根本的な問いかけに対しての答えにもなるのではないでしょうか。

『多世代交流のヒント』より引用

異なる世代同士を結び付けるというフレームワークからは、思いがけないメリットが生まれる。

多世代交流のメリット

本書では、異なる世代が共にメリットを受けるためのツールとして、音楽や造形を盛り込んだプログラムが紹介されている。そこから生まれるのは、それぞれの世代の人たちが感じるだろう「ずっと学び続ける」姿勢だ。

 

現場における方法論の検証やケーススタディーが豊富に盛り込まれた専門書なのだが、コミュニケーション論や児童心理学、人間関係論、そして教育論など多くの種類の知識がコンパクトにまとまった読み物という感じがする。

 

多世代交流というものに、自分はどんな立場からどんなかかわり方ができるのか。ちょっと考えてみようかな、という気になった。

(文:宇佐和通)

多世代交流のヒント

著者:吉津晶子、溝邊和成
出版社:学研ココファンホールディングス
多世代交流の実践研究をもとに、現場で応用しやすい事例やヒント、理論が分かりやすくまとまっています。すぐに実践できる交流プログラムや計画書フォーマットも付いた、使える1冊です!

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