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悩んで孤立する前に試してみたいこと

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子どもの虐待が増えている。

2016年度に児童相談所が対応した虐待は約12万件を超え、26 年連続で増加している。少子化で子どもの数が減っているというのに虐待の件数が増えているのだからかなり異様な事態だ。

そんななか、我が子の死を願う親たちを描く本が発売になった。

虐待と引きこもり

コミック『「子供を殺してください」という親たち』(押川剛・原作、鈴木マサカズ・漫画/新潮社・刊)に主に描かれるのは、社会にうまく溶け込めず、引きこもり傾向にある成人済みの子どもと老齢に差し掛かった両親との息詰まるような物語で、これらは実話だというから胸が痛い。

読むと虐待とはまた少し違う光景がそこにはある。虐待の場合は保護者が子に暴力をふるうが、このマンガでは、暴力を振るわれているのは保護者のほうなのだ。

そして虐待により死亡に至った場合「殺すつもりはなかった。しつけの一環だった」という親の発言がしばしば見られる。しかしこのマンガの親たちは「子どもが死ねばいいと思っている」と、自らそう口走る。そしてそれが叶わないのであれば、どこかに子どもを引き取ってもらえないかと考えたりと、ひどくこじれた親子関係がそこにはある。

代わってあげたい

先日『今、伝えたい「いのちの言葉」』という本を読んだ。小児科医の細谷亮太さんが書いた本で、そこでは小児がんで死にゆく子どもに対し両親が「できることなら代わってやりたい」という気持ちを抱く様子が描かれていた。自分の命を投げ出してでも子どもを救ってやりたいという肉親ならではの愛情の深さがそこにはあった。

「子どもを殺してください」と「できることなら代わってあげたい」は対極にある言葉かもしれない。

けれど共通しているのはどちらも子どもの命についてギリギリのところで考えている魂の叫びだというところだ。子どもが体の病気の場合、病院を受診するので、医者や看護師らによって保護者のメンタルも支えられることが多い。しかし子どもが心の調子を崩した際は、どこにも助けを求めないままでいると、親子で孤立してしまいかねない。

見て見ぬフリ

『「子供を殺してください」という親たち』には、子どもの奇行を誰にも相談しないまま、見て見ぬフリをしてやり過ごしてきた親たちの姿が浮き彫りになっている。読んでいるこちら側は、どうしてもっと早く手を打たなかったのだろうとジリジリする思いに駆られてしまう。

家の問題を隠したがる人は多い。家庭内で何とかなだめ、世間にご迷惑をおかけしないよう努力しているのだ。けれどそれは親の老齢化や子どもの暴力の激化などで、いつかは限界がくる。初めて相談に訪れる頃には、だいぶ進んだ状態になってしまっていることもある。

ひとりで抱え込まない

漫画では精神保健相談所の所長が「親たちは今の自分たちの姿こそが長年の積み重ねの結果であることを忘れている」と語っていた。隠そうとしたのは家の体面を保つためもあるだろうけれど、子どもの今後を思ってのこともあったのではないだろうか。まだまだ日本では精神疾患への周囲の目が温かくはないこともその背景にあると思う。

アメリカでは心の調子を崩した時、カゼで医者にかかるのと同じくらいの気軽さでカウンセリングにかかるという。日本はまだそこまで敷居が低くない。けれど専門家に相談すると解決の糸口が見つかることもある。無料電話相談を受け付けている自治体やNPOは少なくない。子ども本人ではなく家族からの相談であっても応じる医療機関もある。親だけで抱え込まず、多くの人の力を借りる勇気も、時には必要なのかもしれない。

(文・内藤みか)

「子供を殺してください」という親たち 1

著者:押川剛(原作) 、鈴木マサカズ(漫画)
出版社:新潮社
新潮文庫で話題を呼んだ押川剛氏による衝撃の同書を、鬼才鈴木マサカズ氏が完全漫画化!
実際に現場にも足を運び、その壮絶な有様を見たからこそ描ける描写が随所に!!各メディア掲載の衝撃作、ぜひご覧ください! !

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