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伝説のピアノ教師が教えるお客様が離れないコツ

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今はお客様離れに悩む事業主が多いという。
ネットで商品を買う人が増えたので、なかなか実店舗に来てくれないと嘆く人もいる。ピアノ教室も例外ではない。少子化で子どもが減っているだけでなく、近所から騒音などと言われ、なかなか思い切りピアノを弾くこともできない。勉強に忙しい子どもたちはピアノに向かう時間が取れなくなり、高学年になると辞めていく。そんな中、入会希望の生徒が後を絶たない伝説の教室があるという。

仲間づくりをする

江﨑光世さんのピアノ教室は、開室から50年、1度も生徒募集の広告を出したことがない。20ほどのレッスン枠は、すべて口コミで埋まるという人気なのだ。生徒さんがコンクールで優秀な成績を取るから支持されているのだろうけれど、決してそれだけではない。生徒さんは母親のように江﨑さんを慕っているのだ。

教室の様子は『あなたの想いがとどく 愛のピアノレッスン』(江崎光世、バジル・クリッツァー、岩井俊憲・著/学研プラス・刊) に詳しい。ピアノレッスンというものは通常、レッスンルームで先生と生徒2人きりの世界でされるものだ。けれど江﨑さんは子どもを送迎する母親たちのお茶会や、年上の生徒が年下の生徒に教えるなど、人と人とをつなげる工夫をしている。

ビジネスでも、イベントなどで利用客同士の絆を深めようとしているところは、地域で長く愛されやすい。縦や横のつながりは、想像以上の広がりを起こす。江﨑さんは適齢期になった生徒の結婚相手を紹介したこともあったという。

新しい挑戦をさせる

また、レッスンも、決して1対1ばかりのものではない。
メニューに連弾を取り入れたのだ。連弾は先生と生徒だけでも弾けるけれど、江﨑さんは連弾コンクールを提案し、主催者側がそれを採用した。そのため、生徒同士が連弾コンクールを目指して練習し、江﨑さんがそれを指導するという形がとられるようにもなった。

また、バイオリンやフルートなど、他の楽器を演奏する人を音楽大学などから呼び、合奏する形も取ったという。すると、教室をやめる生徒が減ったのだそうだ。一緒にレッスンをする相手に悪いという気持ちはもちろんのこと、息を合わせてハーモニーを作っていくレッスンが楽しいのでやめたくなくなったのである。

利用客は、ここに来れば何か新しい経験ができると感じた場合、リピーターになる。例えばドンキホーテは、店舗内がまるで迷路のようになっていて、いろいろな安い品を眺めること自体を楽しめるような仕掛けがされている。こうしたワクワクは、商品そのものに付加価値を付けることができる。江﨑さんの教室でしかやっていないユニークなメニューは、生徒が離れたがらない大きな魅力であるに違いない。

無理に引き止めない

とはいえ、誰もがいつかは教室を去る時が来る。
その時も、江﨑さんは無理に引き止めないという。生徒が減ると経済面では困るかもしれない。ある時は5人の生徒が一度に去ることもあったが、その時は「勉強しなさいというメッセージだな」とポジティブに受け止めたのだという。時間が空けば、ピアノ講師のためのセミナーや勉強会にも顔を出すことができるからだ。そして気付いたらまた生徒数は満員になっていたそうだ。

ピアノ以外のことで才能を発揮できることもあるので、気乗りしない生徒は江﨑さんは引き止めない。その代わり「いつでも戻ってきていいのよ」という声かけをする。今までも何人も戻ってくる生徒がいたというが、戻りやすい環境を用意しておくことが愛情なのだろう。

ビジネスにも同様のことが言える気がする。
お客様が気がすすまないものを無理に売りつけようとする人がいるけれど、それは果たして本当に相手のためになっているだろうか。本当に相手に合っているものだけを勧めることができる人こそが、利用客の満足度を高め信用を得ることができ、最終的にはより高い利益を得られるはずだ。

(文・内藤みか)

あなたの想いがとどく 愛のピアノレッスン

著者:江崎光世、バジル・クリッツァー、岩井俊憲
出版社:学研プラス
生徒離れに困るピアノ教室指導者に向けて、レッスンの新アイデアから生徒とのコミュニケーション法の数々を紹介。ピアン指導のカリスマ江崎光世氏、吹奏楽指導の新星バジル・クリッツァー氏、アドラー心理学カウンセラー岩井俊憲氏との対談形式。事例解説付き

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