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ヨーロッパで増え続けるイスラムの人々について

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先日、ドイツのメルケル首相が難民の受け入れの上限を20万人とする方針を明らかにした。当初は難民受け入れを制限することなくウェルカムだったが、先の選挙では右派政党が躍進したこともあり、メルケル首相も方向転換を迫られたようだ。

「ドイツに行けば仕事に就け、豊かに暮らせる」そう希望を抱いてやってくる移民、難民たちだが、言葉の壁、文化の違いが彼らに大きくのしかかり現実は厳しいものとなっているのだ。

映画『サンバ』で描かれた移民問題

ドイツの隣のフランスでも移民問題は深刻だ。

2014年に公開された『サンバ』は、アフリカからフランスへやってきた青年サンバを主人公にした社会派の映画。

書類不備で国外退去となってしまい拘束されるサンバ役を、『最強のふたり』で一躍脚光を集めたオマール・シーが演じ、彼を助ける移民協力ボランティアのアリス役はシャルロット・ゲンズブールが演じた。

ビザなし、住所なしでもフランスに留まりたいサンバは不法就労を繰り返し、ポリスから逃げまくる。そしてラストでは事故死した友人の上着のポケットから滞在許可証を見つけ、彼に成り代わって生きていこうとする。「自分の名前がわからなくなる……」というセリフが余韻に残る。

フランスの現実をよく描いていて、テーマは重いが、オマール・シーの笑顔とコミカルな演技でおもしろく観られるので、欧州の現状を知るのにいい映画だと思う。

フランスでは10人にひとりがイスラム系移民

フランスの人口は約6600万人、で、その10%にあたる600万人以上がイスラム系移民だという。もともと失業率の高いフランスだが、移民の失業率はなんと20%を超えているそうだ。

以前、パリの語学学校でシリア出身の若き医師が隣の席になったことがあり、よく話をした。彼女は真面目で頭がよく、とても温厚な性格だった。でも、彼女はときどきため息をつきながら呟いていた。「私がアラブじゃなければ、ムスリム(イスラム教徒)じゃなければ差別を受けることもないのに……」と。

彼女は晴れてフランスで医師として働けるようになったのか、その後は知らないがイスラム系というだけで損をしていなければいいなと願う。

昨今は、欧州各地でテロが頻発し、ムスリムは怖いと思ってしまいがちだが、過激派はほんの一部で、ほとんどのイスラム教徒は善良な人たちなのだということを私たちは知っておくべきだろう。

まんがで知るイスラムの歴史

学研まんが NEW世界の歴史4 イスラーム世界とヨーロッパと世界の成立』(近藤二郎・監修、まんが・鳴海涼、原作・南房秀久/学研プラス・刊)を読めば、一般書では難しすぎる預言者ムハンマドとイスラーム帝国の歴史が、スイスイと頭に入り、そうだったのかと理解できる。

歴史的事実で構成され、また文中の漢字すべてにふりがながふってあり、子どもでも読みやすいので、親子で歴史を学ぶのにおすすめの一冊だ。

イスラームの教えは、7世紀のはじめ、西アジアとインドを結ぶアラビア半島の通商都市・メッカで始まり、やがて急速に拡大し、強大なイスラーム帝国が出現する。

預言者ムハンマドはもともとは商人だったそうだ。
メッカで布教活動をはじめたのがイスラームの始まりで、最初の信者は妻と友人と奴隷だけだった。教えはすぐさまは受け入れられなかったばかりかムハンマドは迫害され、メッカからメディナ(マディーナ)に移ることになった。

そして預言者ムハンマドはメディナで教団と国がひとつになったムスリム(イスラーム教徒)の共同体(ウンマ)を作った。やがて預言者ムハンマドがこの世を去ると、ウンマはムハンマドの3番目の妻の父、アブー=バクルをカリフ(後継者)の地位にすえた。その後、4代目のカリフの時代までは問題なく続き、その間にイスラームのウンマはとても大きくなっていった。

しかし4代目のカリフ、アリーの時代に、シリアの総督だったムアーウィヤが反乱を起こした。両者は決戦となり、アリーの勝利は確実かと思われたが、敵がコーランをかかげたため、アリーはコーランに矢は放てぬと撤退。アリーは混乱の中、暗殺されてしまう。

そして戦いに勝利したムアーウィヤがカリフとなり、ウマイヤ朝を起こす。ウマイヤ朝はウンマを無視し、カリフをウマイヤ家の世襲制とした。これによって、以後のカリフの系統が正統とするスンナ派と、アリーの血統のみが正しいカリフの後継者だとするシーア派とに、ムスリム(イスラーム教徒)は分裂することとなった。

ウマイヤ朝からアッバース朝へ

ウマイヤ朝は首都をシリアのダマスクスに移し、豪華絢爛なモスクを建設する。そして、東はインダス川、西はイベリア半島まで領土を拡大していった。しかし内乱は相次ぎ、第14代カリフのマルワーン2世は都をダマスクスからハランに移すが、これが身内からも抵抗を受けることになった。

そしてこの機に立ち上がったのが、かつてウマイヤ家がカリフの地位につくことに反対したアッバース家だった。シーア派の力を借りたアッバース家がウマイヤ家を打ち破り、アッバース朝の時代が幕を開ける。

アッバース朝の2代目カリフとなったマンスールは都をバグダートにおき、その最盛期には人口150万人の大都市となったそうだ。

『千夜一夜物語』の名君とふたりの供

本書の表紙を飾っている人物がハールーン=アッラーシード。アッバース朝の第5代のカリフで、『千夜一夜物語』にしばしば登場し、のちに名君と呼ばれることになる人物だ。

ハールーンはいつも、ふたりの供を連れて歩いていた。七つの海を渡り、めずらしい品々をカリフに届けている船乗りのシンドバッド、そしてもうひとりがハールーンの親友のジャアファル。ジャアファルは宰相ヤフヤーの二男で首都の女性の憧れの的となるほどいい男だったようだ。

ジャアファルは、ディズニー作品の『アラジン』では悪役ジャファーとして登場しているが、実際は気さくで頭がよく国民からとても人気があったそうだ。しかし、のちに突然の粛清にあい首をはねられた悲劇の貴公子として語り継がれることとなった。

友よりも国を選び、孤独になってしまったカリフのハールーン。ではもう一人の供のシンドバッドは? シンドバッドはハールーンの悩める心が生み出したまぼろしだったのかも知れない、とのことだ。

本書では、この他に、

*ローマ帝国の分裂とゲルマン人の大移動

*フランク王国とカール大帝

*ビザンツ帝国の繁栄

*ローマ=カトリック教会の発展

それぞれが、まんがとなって収録されている。

イスラームとヨーロッパとのかかわり学べ、とてもためになるまんが本だ。

(文:沼口祐子)

学研まんが NEW世界の歴史4 イスラーム世界とヨーロッパと世界の成立

著者:近藤二郎(監修)、鳴海 涼(漫画)、南房秀久(原作)
出版社:学研プラス
新しい現代風の漫画家による最新の世界の歴史の学習マンガ。中心となる人物を軸に、イスラーム帝国やフランク王国などの歴史を描く。

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