ハウツーが満載のコラム
文字サイズを変更する

バイプレーヤーに注目すると、物語はもっと面白い。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

いろいろなドラマや映画を見ていると、「あ、この人、ここにも居た!」という俳優がいる。
なかには「同じクールのドラマなのに、あっちでもこっちでも出てる!」というケースも少なくなく、もはや主役より忙しいのではと心配になるほど。いわゆる脇役、バイプレーヤーと言われる人たちだ。

「主役」に人気が集まるのはもちろんだが、その主役を脇で支える、バイプレーヤーをチェックする人は意外に多い。かくいう私も、つい主人公の友達役のイケメンや行きつけの居酒屋のマスターなどに目が行ってしまう。

脇役メインのスピンオフ作品まで登場

たとえば、ドラマ『民王』で第一秘書・貝原を演じた高橋一生は、この役がきっかけで一躍ブレイクしたといってもいいだろう。当時、Twitterには「貝原萌え」した人々のツイートで溢れかえっていた。その人気はとどまることを知らず、ついには『民王スピンオフ~恋する総裁選~』という貝原メインの話が作られ、スピンオフBOOKまで発売されたほど。

ほかにも、遠藤憲一、大杉漣、寺島進らぐっとくるおじさまたちによる『バイプレーヤーズ~もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら~』も、いわば脇役で活躍する俳優をメインとした物語。世は名脇役たちが脚光を浴びる時代だ。

立場が変われば、感情移入の仕方も変わる

脇役たちの演技や存在感が光るからこそ、大多数の人が主役の行く末を案じ応援するなかで、脇役である恋敵が憎めないという人もまた多い。たとえ意地悪な役柄でも、本人の気持ちになってみるといたしかたない事だったり、実は何か大きな理由があったり。つい感情移入してしまうのだ。

少し前のドラマで恐縮だが、『ブザー・ビート~崖っぷちのヒーロー~』では、多くの視聴者が北川景子演じる莉子を応援していたなかで、ライバル役の相武紗季演じる菜月に共感できる!という人も少なくなかったようだ。一見ひどい行動に見える裏には、素直になれない想いが見え隠れして応援したくなる、という声。私自身、リアルタイムで見ていた頃は「菜月ムカつく!! 山P、騙されちゃダメ!」などと友人に実況メールをしていた莉子派だった。それが最近、久々に再放送で見返したところ、あれ、菜月の気持ちもわからなくはない……と思えてきた。主人公目線で見ていたドラマを脇役目線で見直すると、また違った面白さが感じられた。

シンデレラの意地悪な姉は、本当はかわいそうな女だった!?

映像の物語だと、脇役の気持ちをイメージしやすいが、小説などの文字ベースの物語の場合、そこがなかなか難しい。文章にわかりやすく脇役の言動が描かれていないと、イメージしにくいものだ。

そんななか、脇役にスポットを当てた短編集に出会った。『名作転生 脇役ロマンス』(小島水青、小松原宏子、北野勇作、こざきゆう、森奈津子、粟生こずえ・著/学研プラス・刊)は、こんなテーマで物語が作られている。

名作は転生する。
ありとあらゆる物語は、何千、何億回も語られ、記されてきた。その流転の果てに、今再び、新たなページが加えられていく。
名作転生。
誰もが知っている話を、誰も知らない形で。今、そこにしかいない、あなたに。

(『名作転生 脇役ロマンス』より引用)

なかでも、「シンデレラの姉」という話は非常に興味深い。
美しく皆に愛されている妹に対して、勉強はできるが容姿は良くない、意地ばかり張って素直になれない「かわいげのない女」である自分。妹を大切に思っているのに、実際にはキツく当たってしまう。そんな自分を、シンデレラの姉に重ねて想う。意地悪な継母と共に「意地悪役」とされているけれど、本当にみじめでかわいそうだったのはシンデレラの姉では? そんな視点で描かれている物語。

誰にも憎まれてきたシンデレラの姉は、実はさまざまな想いと葛藤を抱え、ツラい気持ちを味わっていたのかもしれない。これまで考えたこともなかったが、「シンデレラの姉目線」で物語を読み返してみると、なかなか奥が深い物語だ。

『名作転生 脇役ロマンス』は、シンデレラのほかにも人魚姫やロミオとジュリエットなどの名作が、脇役目線で描かれている恋愛短編集。ぜひ、脇役に感情移入しながら、名作を読み返してみてほしい。新たなお気に入りのキャラクターが見つかるかもしれない。

(文・水谷 花楓)

名作転生 脇役ロマンス

著者:小島水青/小松原宏子/北野勇作/こざきゆう/森奈津子/粟生こずえ
出版社:学研プラス
だれもが知っている話を、だれも知らないかたちで。 ロミオとジュリエット、竹取物語、シンデレラ、寿限無、人魚姫・・・・・・。有名な物語たちが新しく生まれ変わる、奇想天外二次創作型短編小説集、第二弾。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

関連記事