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いじめにあったら『小公女』を読もう~~!

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「子どもの頃、好きだった本を3冊挙げてください」と聞かれ、迷うことなく『小公女』『秘密の花園』『小公子』と、答えました。
他にも好きな本はありますが、ベスト・スリーと言われると、まずはこの3冊が思い浮かびます。
すると、相手の方は「へぇ~!バーネットの本ばかりですね。趣味がはっきりとしたお子さんだったのですね」と、驚くではありませんか。
今度は私が驚く番でした。
恥ずかしながら、同じ作者の作品だと、気づいていなかったからです。

珠玉の3作品に共通するものは?

『小公女』、『秘密の花園』、『小公子』の3作品を生み出したのは、フランシス・ホジソン・バーネット。
1849年、イギリスのマンチェスターで生まれた作家ですが、父を早くに亡くし、一家でアメリカに渡りました。
そして、苦しい家計を助けるために小説家になり、たくさんの通俗小説を書きます。
そう、彼女は「食うために書いた」のです。
もっとも、少女の頃から妖精物語に憧れており、夢見がちな性格だったと言いますから、作家としての素養に恵まれていたのは確かでしょう。
彼女の作品は、舞台や映画の原作としても好評でした。
主人公のキャラクターがしっかりしているため、映像にしやすいのかもしれません。

小公女、その名はセーラ・クルー

『小公女』の主人公・セーラは、まだほんの7歳の女の子です。
けれども、小さな体にはかかえきれないほどの運命の変転に耐えなければなりませんでした。

インドで生まれたセーラですが、幼い頃にお母さんを亡くします。
それだけに、お父さんは彼女を宝物のように大切に育て、7歳のとき、イギリスの寄宿学校「ミンチン女学院」に入学させます。 インドでは十分な英国人としての教育ができないと考えたからです。
当時、多くの植民地生まれの英国人の子供たちは、親元を離れ、英国で教育を受けることがほとんどでした。
セーラのお父さんは裕福でしたから、大事な一人娘を有名な私立の学校にいれます。 良かれと思ってしたことです。
それでもお父さんは幼いセーラをおいていくのがしのびなかったのでしょう。
ドレスやペチコート、従や帽子、靴や手袋をロンドンのデパートで買いそろえます。それもすべてオーダーで。
何よりセーラが喜んだのは、望み通りの人形を買ってもらったことです。
ふわふわした金髪で、閉じたり開いたりする青い目をした人形でした。
セーラはエミリーと名付け、妹のようにかわいがります。

一変するセーラの毎日

お父さんは娘を校長のミンチン先生に託すと、インドに後ろ髪をひかれる思いで帰っていきます。 これが永遠の別れになるとも知らずに・・・。
彼はほどなくインドで亡くなってしまうのです。
それも、全財産を失って・・・。

ダイヤモンドの鉱山の仕事が失敗し、全財産を共同経営者の友人に持ち逃げされて、一文なしになった挙句、熱病にかかったのでした。
小さなお姫さまだったセーラは、突如として、女学院の住み込みのメイドとして働くことになりました。
寄宿舎の一番、豪華な部屋もドレスも取り上げられ、屋根裏部屋に移るよう命じられました。 エミリーだけは手放さずにすんだのが、せめてもの幸福でした。

小公女セーラに過酷な毎日が始まりまます。
面と向かって意地悪を言うものもいました。
けれども、何よりつらいのは、今まで「セーラさん、セーラさん」と慕ってくれた仲の良い友達までが、よそよそしくなったことでした。 自分には友達など、いなかったのだ。 そう思うと、さすがのセーラの心も閉ざされていきます。
ほんの少しの間に、多くのことが変転しました。
インドからロンドンに、小公女のような生活から下働きのメイドに、そして、何よりも大好きな父を失って天涯孤独の身となったのです。
転落といっていいでしょう。

けれども、そんなセーラを支えたのは、想像力です。
みすぼらしい部屋にいても、暖炉やじゅたんやケーキがあると考えだけで、心が安まります。
過酷な労働の後、エミリーに話しかけながら、空想の世界に遊ぶ。
これがセーラを支えていました。 だからこそ、ぼろぼろの服を着ていても、誇りは失わずにいられたのです。

いじめられたらセーラを思え

私は子供の頃、白昼夢にふける癖がありました。
とくに、芝居の脚本を考えるのが好きで、小学校の帰り道、バスの中で想像が止まらなくなり、終点まで乗り越してしまったことがあります。
「気持ち悪いヤツ」と、思ったクラスメートもいるでしょう。
ある日、学校に行くと、クラスメートがよそよしくなり、椅子に給食のバターがおいてあったりもしました。
気づかずにそのまま座ってしまい、スカートがべたべたになり、翌日、学校を休みました。単なるいたずらだったのかもしれませんが、しばらくは椅子に座るのがこわくてたまりませんでした。
そんなとき、私はセーラのことを思いました。 「セーラだって周囲にいじめられたけれど、結局はそれをのりこえた」と考えるようにしたのです。
環境が変わっても、貧乏のどん底に落ち込んでも、以前と変わらない気高さを保ちつづけたセーラを思うと、元気が出てくるのです。
以来、逆境では小公女・セーラを思え!が私のモットーとなりました。
著者であるフランシス・ホジソン・バーネットも、父親を早くに亡くし、生活のために働きながらも、医師と結婚して、子供にも恵まれたといいます。
『小公女』は、バーネットが自分を励ます秘密の方法を披露した物語だったのかもしれません。

(文・三浦暁子)

小公女セーラ

著者:フランシス・H・バーネット、岡田好惠(編・訳)、横山洋子(監修)
出版社:学研プラス
優しく気高い心をもったセーラは、お父様と離れ、ロンドンの女学院で、たくさんの友達に囲まれて「王女」のように幸せな毎日を送っていました。でも、突然お父様が亡くなり、セーラの生活は一変してしまいます……。さくさく読める世界名作シリーズ第7弾。

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