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極道牧師を知っていますか? 元暴力団員でも人生をやり直せる

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あなたは、親孝行(こうこう)ですか?
それとも、親不孝(ふこう)ですか?

日本において、もっとも親不孝とされるのは「極道」になること。
極道(ごくどう)とは、いわゆる「ヤクザ」や「暴力団員」のことです。

「極道牧師」こと、進藤龍也(しんどう・たつや)さんをご存じでしょうか。
進藤さんは、刑務所で罪をつぐない、所属していた暴力団と関係を断ってから、キリスト教の伝道活動をおこなっている人物です。

覚せい剤の売人だった暗黒時代

極道牧師の辻説法』(進藤龍也・著/学研プラス・刊)という本があります。
前科7犯・服役3回という、元暴力団員のキリスト教徒による自伝です。

18才で暴力団にスカウトされた進藤さんは、約15年間にわたって覚せい剤の売買をおこなっていました。合計3回の実刑判決は、すべて覚せい剤使用や所持を罰せられたものです。

ヤクザ時代の進藤さんは、ただの売人ではなく、覚せい剤の仕入れも担当していました。仕入れのたびに品質チェックをおこなっているうちに、進藤さん本人も薬物依存に陥ってしまったのです。

進藤さんにとって、刑務所に収監されたことは、罪のつぐないであると同時に「薬物依存から抜け出すためのリハビリ」の役割も果たしたといいます。
しかしながら、薬物依存は「一生のリハビリ」が必要なものです。

進藤さんは「まだ体がクスリのことを覚えている」と自覚しており、これからは「キリスト依存」──キリスト教の信仰と伝道に身を捧げることによって、一生をかけて薬物依存を克服してみせると宣言しています。

悔い改めるきっかけになった出来事

ヤクザ時代の進藤さんは、自他ともに認めるロクデナシでした。
「だってヤクザなんだもん。しょうがないじゃん」が口ぐせで、いつも自暴自棄だったといいます。

非を認めてやり直すことを、一般的には「改心」と記します。
キリスト教では、自らの罪を認めて神への信仰に目覚めることを「回心」という言葉であらわすそうです。

進藤さんが「回心する」きっかけになったのは、収容されていた東京拘置所での体験でした。
「減刑嘆願書」を書いてもらうため、著名なキリスト教の牧師に依頼したところ、進藤さんがヤクザであるのを十分承知したうえで、減刑嘆願を引き受けてくれたのです。

よほど嬉しかったのか、進藤さんはお礼をしたいと考えました。
相手はキリスト教の牧師ですから、聖典である『旧約聖書』と『新約聖書』を読んで、お愛想のひとつでも書いた礼状を送ろうと考えたのです。

はじめは暇つぶしのつもりでしたが、進藤さんは、旧約聖書に記されている「ことば」に打ちのめされたそうです。

わたしは悪人が死ぬのを喜ばない。
むしろ、悪人がその道から立ち帰って生きることを喜ぶ。

立ち帰れ、立ち帰れ、お前たちの悪しき道から。

(『旧約聖書 エゼキエル書 33章11節』から引用)

まさに、進藤さんのような悪人に救いを与えてくれる言葉でした。
そのあと、進藤さんは3度目の実刑判決(2年4ヶ月)を下されるのですが、更生への一歩を踏み出すことになります。

元ヤクザが牧師に生まれ変わるまで

暴力団員だった人が、キリスト教の牧師になれるのか?
多くの人が疑問に感じることだと思います。しかし、進藤さんはズルいことをしたわけでも裏技を使ったわけでもありません。

3度目の服役期間中には、通信講座で聖書を学んでいます。
その後、2年4ヶ月の満期で出所したあとにも、進藤さんの「回心」は揺らぐことはなく、東京都内にある「JTJ宣教神学校」の神学科に入学しました。
2年制のカリキュラムを修了したあと、4人のキリスト教牧師による按手礼(あんしゅれい)を受けて、進藤龍也さんは牧師に任命されたのです。

「牧師」という肩書きは、けっして飾りではありません。
キリスト教(プロテスタント)の牧師になった進藤さんは、さっそく自分の教会を構えて、救いを求めてやって来る人たちを受け入れているからです。

わたしは正しい人を招くためではなく、
罪人を招いて、悔い改めさせるために来たのです。

(『新約聖書 ルカの福音書 5章32節』から引用)

進藤さんは、自分の教会を『[罪人の友]主イエス・キリスト教会』と命名しました。
一般的には「地名」を掲げるものですが、進藤さんとおなじような境遇の人でも立ち寄りやすいように、という願いが込められています。

神・キリスト・お母さん。三位一体による愛の奇跡

キリスト教の牧師になって更生したとはいえ、進藤さんは親不孝者です。
しかし、進藤さんのお母さんは、親不孝な息子のことを見捨てませんでした。

最後の服役、2年4ヶ月の懲役を終えたあと、進藤さんには帰る場所がありました。お母さんが待っていてくれたからです。
じつは、進藤さんが主宰する『[罪人の友]主イエス・キリスト教会』は、進藤さんのお母さんが経営していたスナック(酒場)の店舗を改装したものです。

ここまで書くと「息子を甘やかす母親」のように思えるかもしれませんが、そうではありません。なぜなら、進藤さんが2度目に逮捕されたとき、覚せい剤による錯乱状態を見かねて110番通報したのは、進藤さんのお母さんだからです。

未来はだれでも変えられる』(進藤龍也・著/学研プラス・刊)には、進藤さんのお母さんによる証言が掲載されています。
覚せい剤によって錯乱していた息子を「たとえ刺されても止めるつもりだった」と、進藤さんのお母さんは告白しています。
心労による脳梗塞やうつ病に苦しみながら、息子が刑務所から帰ってくるまでは「何としても生きていたかった」と、帰る場所を用意していたのです。

暴力団員だった進藤龍也さんが、最後に出所したのは2003年です。
そして、2017年現在。進藤さんのTwitterには、年に何度か、お母さんとの幸せそうな写真がアップロードされています。
どのような人間でも、あきらめなければ立ち直れるということです。

(文:忌川タツヤ)

極道牧師の辻説法

著者:進藤龍也
出版社:学研プラス
前科7犯にして元ヤクザの牧師が、自らの教会やさまざまな活動の場で語った言葉を集めた、悩めるすべての人に贈るメッセージ集。自らの人生経験を踏まえ、「人生だれでもやり直せる」ことを熱く語る。読む人に生きる希望と勇気を与える一冊である。

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