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r>g で格差が拡大すると言うけど、それの何が問題なの?

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ビジネス界や経済界、出版業界などで最近かなり話題に上っているので、“ピケティ” という名前を聞いたことはあるだろう。では、何をした人なのか。それを答えられる人はそう多くないはずだ。ただし、ご安心を。『一番やさしい ピケティ「超」入門』さえ読めば、彼の主張がよくわかる。

学校で、先生は言いました。「すべての人は平等!」
本当にそうだろうか…。
現実の世界を見れば富める者はますます富んで、
貧しいものはやっぱり貧しい!

ある人が膨大な歴史的データを基に「富の不平等」を検証し、
その解決を目指して問題提起をしました。
トマ・ピケティ氏です。

「経済格差は、なぜ起こるのか?」
「富の不平等は解消できるのか?」
みんなで考え、話し合うための最強・最適のツール。
それが『21世紀の資本』という本、
そして「 r > g 」という数式なのです。

(『一番やさしい ピケティ「超」入門』より引用)

『21世紀の資本』でピケティが導き出した公式は「 r > g 」。これは、資本主義社会においては、資本収益率 (= r ) が、経済成長率 (= g ) を上回っていることを表している。噛み砕いて言えば、金利や地代を生み出す “資本 (株式、預金、不動産など)” を持つお金持ちはどんどんお金持ちになり、それを持たない労働者はいつまでも貧乏のまま…という公式だ。

現在の先進国では、資本の優位性が復活。このままだと21世紀の社会は、経済格差が著しかった18〜19世紀のヨーロッパ社会に逆戻りする可能性があるという警鐘も鳴らしている。社会の資本が不平等に分配され、格差が拡大するというのだ。

ピケティは実証的な経済学者

そんな主張をするピケティはどういう人物なのかというと、当然ながら経済学者。フランスの社会科学高等研究院 (EHESS) やパリ経済学校で、経済学教授を務めている。専門は、歴史的データに基づいた実証的な経済学。『21世紀の資本』では、税収などの国民経済統計から所得と富に関する膨大なデータを収集し、それを独自の視点で分析している。

1971年にノーベル経済学賞を受賞したアメリカの経済学者、サイモン・クズネッツが分析した所得税の申告データは1913年〜1948年のアメリカ。それに対してピケティは、3世紀以上、20カ国に拡大。大量のデータを分析することで、貧富の差が拡大を続けるのは歴史的な事実であると証明したわけだ。

経済学的立場では歴史学的すぎ、歴史学的立場では経済学的すぎるために誰も行おうとしなかった分野に手を出して成し遂げたと言える。肌感覚としては誰もが感じていた “富める者こそさらに富む” 資本主義というシステムの実態を科学的手法で実証したのだ。

それを経済学の初心者でもわかりやすいよう、経済理論や数式を最小限に留めながらまとめたのが『21世紀の資本』。その上で、専門家向けの詳細なデータはウェブ上で閲覧できるように開放した。さらに、アメリカの経済格差が急激に拡大している社会的な背景や、オバマ大統領がピケティの論文を引用したことなども重なり、6000円近くする本格的な経済書がアメリカで50万部以上も売れるという事態を引き起こした。今では、日本を含めた15カ国に翻訳されている。

“経済格差” について考えてみるべき

700ページを越える内容には、経済格差の拡大を回避する方法も示されている。それは、国家が積極的に是正に取り組むこと。具体的な手法としては「累進課税をベースにした所得税および世界的な資本税」の導入を提唱している。

ここまで話を進めてくると、経済格差という諸悪の根源をどう正していくか…という視点になりがちだが、そもそも格差があることは悪いことなのか。『ピケティにもの申す!』の中で堀江貴文は持論を展開している。

多くの意見は、「なんで俺は持ってないんだ」という感情論ではないかと思う。たとえ現実に富が1%と99%に分かれている状況だとしても、多くの人は現に生活できてている。格差があることそれ自体によって自分の生活が苦しくなるようなことは考えられない。

それに1%の資本家は、確実に賢いお金の使い方をするはずだ。行政が税金で集めたお金を再分配する結果、使われないホールが地方で作られるより、グーグルのラリー・ページCEOが面白い技術を開発する方がよい。彼のような人に任せて世界中に無料のインターネットが提供される方がどれだけ社会の役に立つことか。余剰資金の運用にしても、投資銀行の方が行政より上手だろう。

格差を声高に叫ぶ人は、金銭と所有することに捉われ過ぎだと思う。その古い考え方をやめればいい。サービスや製品を大多数の顧客に無料で提供し、ごく一部で有料化する「フリーミアム」がウェブを中心に進んでおり、これからもさまざまなものが低価格になるだろう。

(『ピケティにもの申す!』より引用)

確かに、シェアという考え方も進んでいる状況で、富むことに執着するのが良いことなのかどうか…。ただし、格差が善だろうと悪だろうと、ピケティの主張を理解しておいて損はない。今後の経済はもちろん、自分自身の稼ぎ方やライフスタイルについて考える前提条件として知っておくべきだ。700ページ以上ある『21世紀の資本』を読むかどうかは別として、『一番やさしい ピケティ「超」入門』で全体像を掴むことが先決だと思う。

(文:平 格彦)

 

一番やさしい ピケティ「超」入門  〜『21世紀の資本』と「格差社会」を今日から語れる本〜

著者:中野明
出版社名:学研パブリッシング
資本と格差の問題に正面から切り込み、全世界に影響を与えた大著『21世紀の資本』。その著者ピケティの理論と重厚な著作の概要を「超図解」でわかりやすくスピード解説するのが本書である。これからの格差社会を生き抜く指針が短時間でラクにつかめる本。

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