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ネットショッピングが認知症予防になる?

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アメリカミネソタ州の総合病院・メイヨークリニックで、85歳から89歳の高齢者を4年間追跡調査をしたところ、軽度認知障害の発症リスクが下がる行動が見受けられた。絵や彫刻といったアート活動や友人との社交や旅行などがそれである。そしてインターネット検索やオンラインゲームやネットショッピングもリスクを53%も下げることがわかった。

脳に刺激を与える

『医者はどうしてたくさん薬を出すのか』(米山公啓・著/アドレナライズ・刊)によると、リスクを下げるためには受け身ではなく、積極的な創作活動が重要だという。絵を描くことが積極的な創作だということは理解できるが、ネットでの検索やゲームやショッピングは創作だろうかと考えた時、そういえばネットショッピングをするとえらく疲れる時がある、と思い至った。

ネットショッピングでは大量の思考を必要とする。

1円でも安い店を調べたり、類似商品との比較をしてどちらがいいのか検討したり、新品がいいか中古のほうがいいのか迷ったり、オークションで安い出物がないかチェックしたり、本気で探すとあちこちのサイトを見比べなくてはならず、時間があっという間に経ってしまうのだ。高齢者がこうした作業をすると、確かに脳のあちこちを刺激されそうである。同様に検索やゲームも考えながらパソコンを使う作業なので、脳には良いのかもしれない。

徘徊のない国

警察庁の発表によると、日本では、認知症が原因による行方不明届けが年間約1万件あるという。本書には日本の介護施設が徘徊させるための回遊式廊下を作ったエピソードがあった。ぐるぐるとそこを巡っていれば、外に徘徊に出ることもなくなるだろうという思惑があったようだけれど、入居者たちは反対側に歩き出したり、途中で歩かなくなったりと施設が決めたルールには従わなかったそうだ。

しかし北欧の施設では、認知症患者の徘徊問題は起きていないという。施設は入居者とコミュニケーションを取り「何をしたいのか」「どこに行きたいのか」などを聞き出しているという。話を聞いてもらうことで入居者は安心して落ち着き、徘徊しなくなるという。日本の施設はただ「徘徊はいけません」と入居者の行動だけを封じ、心のケアがおざなりになってしまったのだろうか。

相手の立場になること

その話を聞いて、中高生の徘徊を思い出した。とある中学ではいくら禁止しても、生徒たちが放課後に、禁止されているファストフード店に立ち寄ったり繁華街を徘徊するという行為が止まなかった。その学校は日頃から生徒の管理が厳しく、叱ってばかりの教師が多く、生徒たちは学校で消耗してしまうため、帰りに街でリフレッシュせざるをえなかったのだという。高齢者にも、徘徊するには何らかの理由がある。それを突き止めることで介護側も納得してお世話できるようになるのではないだろうか。
なかなか相手の立場になってものを考えることは難しい。特に相手が問題行動を起こしている場合はなおさらかもしれない。けれど、そこに向き合い、時には腹を割って話し合うことで、見えてくるものもあるのだろう。

この本ではもうひとつ、興味深い情報を載せていた。東京都健康長寿医療センター研究所が行った歩行の調査だ。普通に歩いた時、歩幅が狭い人は、広い人に比べて認知機能低下のリスクが3.4倍、女性だけに限ると5.8倍にもなるという。アメリカのイェシバ大学の調査結果では歩く速度が時速3.5キロ以下だと認知症リスクが2倍になるという。なるべく大きな幅(男性なら70.6センチ以上、女性なら65.1センチ以上)で速度を上げて歩くことが、体だけでなく脳の健康にもつながるというのだから、早速自分の歩幅を測り、試してみたいものである。

(文・内藤みか)

医者はどうしてたくさん薬を出すのか

著者:米山公啓
出版社:アドレナライズ
私の外来に、他の医療機関で大量に薬を処方された患者がやって来る。中には、一度に10錠以上飲まなければならない患者もいる。「薬が多いですね。お医者さんに文句を言わないの」と聞いても、「そんなこと言えません」と困った顔をする。どうしてこんなことになってしまったのか…。
 ジェネリック医薬品は得か損か、特定健診(健康診断)に意味はあるのか、なぜ大学病院の外来は患者であふれるのか、雑誌やテレビで紹介される「日本の名医」は本当か、トクホ食品とは一体何なのか、認知症患者の徘徊は抑制できるのか、インフルエンザ予防接種は受けるべきか…etc。開業医の立場から、日本の医療・健康の問題点をズバリ指摘する。電子オリジナル作品。

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