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事故物件の基準。孤独死ではなく、看取られて病死したときは?

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引っ越しを考えているため、インターネットで賃貸物件を探しています。
家賃1.4万円という激安アパートを見つけたのですが、備考欄に「訳あり」と記載されていました。

不動産管理会社に問い合わせたところ、「前の住人が病死した」そうです。
いわゆる事故物件(心理的瑕疵物件)であり、家賃が安い理由がわかりました。

賃貸物件における「病死」には2種類あります。
「孤独死」と「在宅ケアによる病死」です。
同じ「病死」ですが、受ける印象が異なると思いませんか?

賃貸住宅で在宅ケアをするのはOK?

よく賃貸住宅で死亡者が出ると、次の借り主に説明する必要があり、借り手がなかなか見つからなくなるため、不動産の資産価値が落ちてしまうと言われます。

しかし、在宅ケアが必要となる病気や老衰による死は、前記には当てはまりません。在宅ケアをして亡くなっても、それを報告する義務もありません。

(『家族で看取る おくりびとの心得10』から引用)

誰かに看取られて亡くなったのであれば、同じ「病死」であっても、腐乱状態で発見されることもある「孤独死」にくらべて心理的抵抗が少ないです。

家族で看取る おくりびとの心得10』(髙丸 慶・著/学研プラス・刊)によれば、アパートや公営団地やマンションなどの賃貸住宅であっても、大家さん(貸主)に気兼ねすることなく、在宅ケアによって最期を看取ることができるそうです。

「終の棲家」の選択肢

末期性の病気によって「もうやれる治療がない」となった場合、あとは、どれだけ長く生きられるかということになります

病気そのものの根治は目指さず、痛みを取り除いたり、現状を維持したりするための治療を受けながら療養するには、3つの選択肢があります。

1.緩和ケア病棟(ホスピス)でのケア
2.医療法人が経営する高齢者施設でのケア
3.在宅でのケア

(『家族で看取る おくりびとの心得10』から引用)

痛みがひどくなく、医療設備があまり必要ないのであれば、住みなれた自宅で最期を迎えたいという人が多いのではないでしょうか。

金銭的・労力的な問題はありますが、なるべく患者さん(ご家族の方)の意思は尊重されるべきです。
しかしながら、病気の高齢者というのは本音を打ち明けてくれないものです。介護や看病などで「家族に迷惑をかけたくない」という遠慮があるからです。

自宅は「忘れていた日常」を取りもどす場所

病気で体が弱っていると、心身ともに無気力になってしまいます。
『家族で看取る おくりびとの心得10』には、末期がんによって余命宣告された80代男性のエピソードが紹介されています。

その患者さんは、病室でテレビばかり眺めて、無気力で無表情な毎日を過ごしていました。
帰宅したい気持ちはあるけれど、あまり積極的には動こうとしなかったそうです。

しかし、久しぶりに自宅へ帰ったところ、大きな変化が見られました。

玄関を入った瞬間、男性の表情が一変しました。頬に赤みがさし、目を見開き、口角が上がり、表情が生まれました。
(中略)
饒舌になり、孫たちといっしょに歌を歌ったり、机にたまっていた書類の整理をはじめたり、次々とやりたいことが湧いてくるようでした。

(『家族で看取る おくりびとの心得10』から引用)

病院や施設に長く入院していると、本人が意識しなくても「病人という役割を演じてしまう」という現象が発生します。
つまり、この患者さんはいつのまにか「80代男性末期がん患者」という仮面をかぶっていたのです。

グリーフワークの重要性

看取りに関しては、見送られる人(末期の病人)ばかりが重視されがちですが、見送る人(家族の死を看取る人)のケアも忘れてはなりません。

介護や看取りや葬儀を終えたあと、残された家族にはグリーフワークが必要です。

「グリーフ」というのは喪失体験による「悲嘆」、つまり嘆き悲しむという意味です。
(中略)
「グリーフワーク」とは、大切な家族を失った現実を受け入れて、喪失に適応し、日常生活に戻っていくプロセスを指します。

(『家族で看取る おくりびとの心得10』から引用』から引用)

アメリカ人の精神科医、J・W・ウォーデンによる「グリーフワークの4段階」は、次のとおりです。

1.喪失の現実を受け入れる
2.悲嘆の痛みを消化する
3.その人のいない世界に適応する
4.新たな人生を歩みはじめる途上で、故人との永遠のつながりを見出す

(『家族で看取る おくりびとの心得10』から引用)

グリーフ(悲嘆)は、1年以上かけてゆっくりと癒やします。
1~4は順番通りではなく、人によってかかる時間も異なるそうです。

今回ご紹介した『家族で看取る おくりびとの心得10』の著者は、近親者の死を看取ったあとのグリーフ(悲嘆)によって豹変してしまった母親を見て育っています。

当時は理解できなかったようですが、母親を理解するために看護学科に進み、たくさんの「看取り」を経験しました。
著者の髙丸慶さんは、いまでは多くの人々のグリーフワークを手助けする活動をおこなっています。

(文:忌川タツヤ)

家族で看取る おくりびとの心得10

著者:髙丸 慶
出版社:学研プラス
最後の時間をどう過ごすかは、残される家族の心身に大きな影響を与える。やり残しのない満足いく看取りは、家族のその後の人生を左右する。本書では、余命を告げられた日からどうその本人の医療や介護、看取りに向き合うのかを紹介。

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