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あなたは宇宙の色を知っていますか?

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6月終わりまで、金星の観察良好期。7月25日、水星食。8月8日、部分月食。8月13日頃、ペルセウス座流星群極大。9月、明け方に金星・火星・水星・レグルス(しし座の1等星)が集合。12月14日頃、ふたご座流星群極大。

今年の下半期、夜空を見上げる時間を作る理由はこれだけある。

生理的? アプローチの宇宙論

昔から夜景が好きで、キレイなスポットの情報を集めては車で行っていた。その過程で好きになったものがある。星だ。夜景スポットはたいてい高い場所にあるので、見上げれば星々の存在を日常生活よりもはるかに近く感じることができる。

実は、ちょっと後悔していることがある。高校の頃、もう少し真面目に地学を勉強しておけばよかった。そうすれば、星を見ることもさらに楽しめたはずだ。こう言えるかもしれない。あの頃、宇宙に関する知識を人並みに、そして必要最低限得る努力をしなかった気がしてならない。いまだにモヤモヤした感じが残っているのだ。

そんな筆者の後悔を救って余りある一冊を紹介したい。『ムラムラする宇宙』(吉田直紀・著/学研プラス・刊)は、“ムラムラ”という言葉をキーワードに素朴な疑問を通じて宇宙をさまざまな角度から見ていく。まえがきの文章を見てみよう。

印象としては、宇宙は静かで落ち着いていて、個々の天体はともかく宇宙自体がまさかムラムラしたりするわけがありません。それに宇宙は生物ではないので、気分が変わったりもしないはずです。それでも宇宙はムラムラしています。

『ムラムラする宇宙』より引用

興味があったにもかかわらず、宇宙に関する知識を必要最低限得るための努力をしなかったことを自覚している筆者も、かなりムラムラしている。

宇宙の最初の星

Q:宇宙で一番最初の星はいつ生まれたの?
A:137億年前です

『ムラムラする宇宙』より引用

著者の吉田直紀さんの専門分野は、宇宙物理学と観測的宇宙論だ。この本の第1章はQ&Aに説明が付けられる形でまとめられているのだが、こういう具合にストレートに答えを返してくれる。溜めもなく答えを返しておいて、詳しく説明してくれるという進め方だ。この質問に関して言えば、天体望遠鏡の進化から観測活動の現状と未来がわかりやすい言葉で語られる。

宇宙の広さ

Q:宇宙の大きさはどれくらい?
A:8800垓キロメートルです。見える範囲の話ですが。

『ムラムラする宇宙』より引用

宇宙には、端がないらしい。始まりの部分も終わりの部分もなくひたすら広がっている空間なので、端から端という計り方をすることができないのだ。ただ、“見える範囲”での端から端の距離なら計測することができる。観測可能な範囲という意味では果てがあって、それは“宇宙の地平線”と呼ばれている。現時点では、宇宙というのは無限に広がる、はっきりとした形のない空間としか形容のしようがないようだ。
(ちなみに「垓」は「10の20乗」、1兆の1億倍)

とても意外な宇宙の色

Q:宇宙は何色なの?
A:ベージュ色です

『ムラムラする宇宙』より引用

とあっさり答えられてしまうと、これまで何十年かかかって、ささやかながらも築き上げた筆者なりの宇宙のイメージが壊れる。黒に近い群青とか、ものすごく深い紫とか、そんな色を想像していた。ただ、あまりの意外さは清々しさをもたらす。この件については、アメリカの天文学者が計算を行って、最終的にベージュと結論されたらしい。ベージュというのはきわめて微妙な色だ。多くの星が放つ色をすべて合わせると、ベージュになるらしい。

次から次へと繰り出される、大小のムラムラ

この本には、大小さまざまな“ムラムラ”がちりばめられている。最大級のムラムラを挙げるとすれば、次のようになるだろう。

わたしたちの宇宙はそもそも、138億年前にある種のムラムラから突然発生したようです。最近では、その証拠とされる原始重力波の痕跡が発見されたとして大きなニュースになりました。どうやら誕生して以来、宇宙全体はゆらゆらしていて、きちんとピシッとしていたためしがないようです。

『ムラムラする宇宙』より引用

宇宙というとらえどころのない、具体的にイメージしにくいものを研究したいという吉田さんの情熱も、そもそもはムラムラから始まったのだろう。ただ、今は違う。

わたしは宇宙論を勉強してこういうことを学んで、ムラムラどころかずいぶんとすっきりした気持ちになりました。

『ムラムラする宇宙』より引用

今の筆者にできるのは、手ごろな天体望遠鏡を買って、まず金星や水星を観測することだ。そこから始めて、長年溜めこんで来てしまった宇宙に関するモヤモヤを少しずつ消していきたいと思う。

(文:宇佐和通)

ムラムラする宇宙

著者:吉田直紀
出版社:学研プラス
宇宙は何でできているか、宇宙はどうやって始まったのか、宇宙の行き着く先は、宇宙はどんな法則に支配されているのか、我々はなぜ存在するのか。宇宙の基本的な5つの謎に、いま最も期待される若き天文学者が答える。ムラムラするほどおもしろい宇宙論入門!

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